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中国における早期審査のための「特許審査ハイウェイ(PPH)」活用

2015年03月18日

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■概要
(本記事は、2018/7/24に更新しています。)
 URL:https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/15548/

中国における特許出願の早期審査を請求する方法として、「特許審査ハイウェイ(Patent Prosecution Highway: PPH)」の活用が挙げられる。出願に含まれる少なくとも一以上のクレームが第一出願庁(Office of First Filing: OFF)により登録可能であると判断された場合、一定の申請条件を満たしていれば、中国知識産権局を第二出願庁(Office of Second Filing: OSF)として、必要書類とともに「特許審査ハイウェイ」に基づく早期審査を請求することができる。
■詳細及び留意点

【詳細】

特許審査ハイウェイ(Patent Prosecution Highway:PPH)は、出願に含まれる少なくとも一つ以上のクレームが第一出願庁(Office of First Filing: OFF)により登録可能であると判断された場合に、関連する第二の出願が一定の条件を満たせば、出願人がOFFの審査結果に基づき、第二出願庁(Office of Second Filing: OSF)に早期審査を請求できる制度のことである。

 

通常、PPHは、通常型PPHまたは特許協力条約型PPH(PCT-PPH)のいずれかの形態を取る。通常型PPHは、OFFの審査結果、すなわち審査意見通知書や認可決定に基づくOSFに対しての請求である。PCT-PPHは、PCT国際段階の調査結果、すなわち国際調査機関の見解書、国際予備審査機関の見解書、または国際予備審査報告書に基づくOSFに対しての請求である。

 

PPHは、二国間または多国間協定に基づき実施される。現在、中国国家知識産権局(SIPO)は、日本およびその他数か国とPPH試行プログラムを実施している。欧州特許庁、日本特許庁、韓国特許庁、SIPOおよび米国特許商標庁の5大特許庁は、2014年1月6日より、3年間のPPH試行プログラムを開始している。

 

日本、米国、韓国、ロシア、フィンランド、オーストリア及びスペインとは、通常型PPHまたはPCT-PPHのいずれかを中国において申請することができる。しかし、ドイツ、デンマーク、メキシコ、ポーランド、シンガポール、カナダ、ポルトガル及びイギリスとは、通常型PPHしか中国において申請することができない。1月に開始された上記5大特許庁のPPH試行プログラムにおいては、中国において通常型PPHまたはPCT-PPHのいずれかを請求することができる。

1) 申請条件

SIPOに対するPPH請求の提出申請は、以下の条件を満たさなければならない。

 

(i)対応出願と当該中国出願とが、優先日あるいは出願日のうち、最先日が同一であるとの対応関係を満たしていること。

 

(ii)対応出願において、特許が付与されていない場合であっても、登録可能であると判断された一つ以上のクレームがあること。

 

(iii)当該中国出願におけるすべてのクレームが、補正されていない原クレームであるか補正されたクレームであるかを問わず、登録可能であると判断された一つ以上のクレームと完全に一致すること。

 

(iv)当該中国出願が公開されていること。

 

(v)当該中国出願が、実体審査段階に入っていること。認められる一つの例外は、出願人が実体審査請求と同時にPPH請求を提出する場合である。ただし、こうした特例が認められる場合であっても、その他の条件を満たさねばならず、実体審査請求を提出する際に、中国出願がまだ公開されていない場合、PPH請求を提出することができない。

 

(vi)PPH請求の提出前及び提出時、SIPOが当該出願の審査を行っていないこと。すなわち、審査部からオフィスアクションを受領していないこと。

 

SIPOへの手続きに従ってPPH請求を提出する場合、PPH試行プログラムへの参加請求とともに、下記書類を提出しなければならない。

 

(i)対応出願に関して発行されたすべての審査意見通知書の写しとその中国語訳または英語訳

 

(ii)登録可能であると判断されたすべての請求項の写しとその中国語訳または英語訳

 

(iii)審査官により引用された文献の写し(翻訳不要)。参考目的のみであって、拒絶理由を構成しない引用文献は提出の必要がない。ただし、SIPOが特許文献を所持しておらず、入手できない場合、出願人は審査官からの要求があった場合には、これら文献を提出しなければならない。非特許文献についても同様である。なお、提出する必要がない文献名はPPH請求時に記載しなければならない

 

(iv)SIPO出願におけるすべてのクレームが対応出願における登録可能/認可可能なクレームと完全に対応することを説明するクレーム対応表。下記3つの状況について完全に対応していることが必要である。

(a)完全に同一、

(b)SIPO出願のクレームと対応出願のクレームとの間の引用関係の補正、

または、

(c)SIPO出願のクレームが、明細書から特定の技術的特徴を対応出願のクレームに組み込むことにより作成されている。

 

2)承認決定

SIPOは、PPH請求及び添付書類を受領した後、当該出願の早期審査を認めるか否かを決定する。SIPOが申請を承認すると、当該出願はPPH手続きに基づき早期審査に付される。

 

PPH請求が上記要件を完全に満たしていない場合、出願人はその結果および結果が不備である理由について通知を受ける。SIPOは、状況に応じて、出願に対して訂正する機会を一度与える。一回目のPPH請求が拒絶された場合、出願人は二回目のPPH請求を提出することができる。さらなる追加請求は認められない。

 

PPH請求に不備があった場合、審査官は一般的には、訂正の機会を与えることなく、早期審査を否定する決定をする。実質的な不備とされるものはわずかで、多くの不備は下記のような方式上の不備である。

(例1)通知の標題の中国語訳が審査官が認識する翻訳標題と一致していない。

(例2)クレームは実質的に対応しているものの、審査官が認識する形式で使用されていない。

(例3)請求が審査意見通知または引用文献を省略している。

(例4)審査意見通知が添付されていない。

■本文書の作成者
中原信達知識産権代理有限責任公司 パートナー・弁理士 陸錦華(Jinhua Lu)
■協力
日本技術貿易株式会社 IP総研
■本文書の作成時期

2014.12.22

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