アジア / 出願実務
ベトナムにおける意匠の登録要件・不登録事由
2014年08月15日
■概要
ベトナム知的財産法においては、意匠の登録要件と不登録事由が定められている。登録要件としては、新規性、創作性、産業上の利用可能性が規定されているが、通達(circular)において、創作性の要件を満たさず登録が受けられない場合について比較的具体的に記載されているため、ベトナムにおける意匠の登録可能性を検討するにあたって参考になる。■詳細及び留意点
【詳細】
(1) 不登録事由(ベトナム知的財産法第8条、第64条)
ベトナムにおいて、以下のものは意匠登録を受けることができないと規定されている。
・製品の外観であって、当該製品の技術的特徴により専ら決定されているもの
・公共の又は工業上の建造物の外観
・製品の外観であって、当該製品の使用中に見えないもの
・社会道徳、公共の秩序に反するものや、国家の防衛、安全保障に有害なもの
(2) 登録要件
ベトナムにおける意匠の登録要件は、以下のとおりである(同法第63条)。
・新規であること:出願日(又は優先日)前に、ベトナム国内又は国外において、使用又は書面や口頭での説明その他何らかの形態の手段によって公然と開示されていない場合に新規であるとみなされる(同法第60条(1))。
・創作性があること:出願日(又は優先日)前に、ベトナム国内又は国外において、使用又は、書面や口頭での説明その他何らかの形態の手段によって、既に公知の意匠に基づいて当業者により容易に創作できない場合に、創作性があるとみなされる(同法第66条)。
・産業上の利用可能性があること:工業的又は手工業的方法によって、意匠を具体化した外観を有する製品を大量生産するひな形となり得る場合に、産業上の利用可能性があるとみなされる(同法第67条)。
以下のものについては創作性がないものとされ、登録を受けることができないこととされている(Circular No. 01/2007第35.8条(b))。
・意匠が、既知の設計特徴の単純な組合せである(既に公開または開示されている設計特徴について、単に位置の代替・変更、数量の減少等の方法によって配置・結合されている)場合
・意匠が、木、果実、動物等が有する自然の外観の全て又は一部の複製/再現である場合
・意匠が、広く知られている幾何学的図形(円、楕円、三角形、正方形、長方形、多角形、これらの様々な断面形状等)の外観である場合
・意匠が、ベトナム及び海外において著名又は周知の商品・作品の外観を単に複製したものである場合
・意匠が、他の分野の意匠の模倣であって、当該模倣が広く知られている場合(例えば、おもちゃの車やオートバイ等)
(3) 創作性要件を満たさず登録が拒絶された例
既知の意匠の特徴の単純な組み合わせであること等を理由に登録が認められなかった出願意匠の実例を以下に記す。
(i) ビーコン
既知の意匠の単なる組合せであるとして登録が認められなかった。
(ii) キャビネット
単に既知の機能と置き換えることにより創作されたものであるとして登録が認められなかった。
(iii) ヘルメット
既知の意匠の単なる組合せであるとして登録が認められなかった。
【留意事項】
ベトナムにおいて、拒絶された意匠出願案件は一般には公開されていない。ただし、特に通達(circular)においては、創作性の要件を満たさないため登録が受けられない場合について比較的具体的に記載されているので、ベトナムにおける意匠の登録可能性を検討するにあたって参考になる。
■ソース
・ベトナム知的財産法・Circular No. 01/2007/TT-BKHCN of February 14,2007,Guiding the implementation of the Government's Decree No. 103/2006/ND-CP
http://noip.gov.vn/NOIP/RESOURCE.NSF/vwSelectImageResourceUrl/C9B245B2DB4EA8A64725767F003FAD91/$FILE/TT%2001-2007%20Huong%20dan%20ND%20103%20ve%20SHTT.pdf
■本文書の作成者
辻本法律特許事務所Banca Intellectual Property Law Firm
■協力
一般財団法人比較法研究センター 不藤真麻■本文書の作成時期
2014.01.28