アジア / 出願実務
ベトナム特許におけるグレースピリオド
2014年07月29日
■概要
ベトナムにおいては、特許要件として新規性が要求されるが、一定の要件の下、6ヶ月のグレースピリオドも認められている。■詳細及び留意点
【詳細】
(1) 新規性
ベトナムにおいて、新規性は特許を受けるための要件の1つである(ベトナム知的財産法第58条(1)(a))。そして、新規性があると認められるのは、出願前(優先日前)に、ベトナム国内又は国外において、使用により、書面又は口頭での説明、その他何らかの手段により、公然と開示されていないときである(同法第60条(1))。この規定から、ベトナムにおいては、地理的、開示態様の制限なく、公知になった発明は新規性を欠くと解される。新規性の審査において主として用いられる情報源には、次のようなものがある。
・ベトナムにおける特許公開公報
・出願日(優先日)前20年間に国際機関又は他国の特許庁において公開された発明であって、ベトナム国家知的財産庁(NOIP)が入手可能なもの
・NOIPによって収集・保管されている他の情報源
・同一の技術分野における科学報告書、研究プログラム等であって、国家科学技術情報文書センター(National Centre for Scientific and Technological Information and Documentation)において公開・保管されているもの
(2) 新規性喪失の例外規定
以下の場合、出願日(優先日)前に公開されても、新規性を欠くとはみなされない。ただし、出願が公開の日から6月以内に行われることを条件とする(ベトナム知的財産法第60条(3))。
・特許を受ける権利を有する者の許可なしに、他人により公開された場合
・特許を受ける権利を有する者により、科学的プレゼンテーション(in the form of a scientific presentation)の形態で公開された場合(例、学会発表、講演、新聞発表等)
・特許を受ける権利を有する者により、ベトナム国内博覧会又は公式若しくは公認の国際博覧会において展示された場合
(3) 新規性喪失の例外を受けるための申請手続き
発明が発明者により公開になった科学的プレゼンテーションの形態(プレゼンテーション、新聞掲載等)、当該公開が行われた学会や新聞等の名前及び公開の時期等を記載した書面、並びに公開に関する資料を提出する。この書面は出願時のみならず、審査期間中はいつでも提出でき、公開に関する資料はどのようなものでも良い(例:学会の開催案内・配布資料、新聞のコピー等)。
【留意事項】
ベトナムにおいては、地域、開示態様の制限なく、出願日(優先日)前に公知になると新規性を喪失したとみなされ、グレースピリオドの規定も限定的な場合にしか適用されないため、出願前に発明を公知にしないように適切に管理する必要がある。
この点に関連する注目すべき規定として、守秘義務を負う限られた人数の者のみに知られているときは、未だ公然と開示されていないものとみなされる(ベトナム知的財産法第60条(2))という規定がある。この規定の適用を受けるためには、出願前に第三者に開示する場合、当該第三者と守秘義務契約を締結し、契約書を保存しておくように処理しておく必要がある。守秘義務契約を提出することで新規性喪失の例外規定の適用を認められた例は見当たらないが、守秘義務契約の締結は実務ではよく行われている。
■ソース
・ベトナム知的財産法■本文書の作成者
辻本法律特許事務所■協力
Banca Intellectual Property Law Firm一般財団法人比較法研究センター 菊本千秋
■本文書の作成時期
2014.01.27