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マレーシアにおける商標登録出願の早期審査

2014年08月05日

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■概要
マレーシアでは、侵害のおそれを示す証拠がある場合等、一定の要件を満たす場合には、申請により商標登録出願の早期審査(Expedited examination)が認められ、実体審査に入るまでの期間を通常よりも短縮することができる。
■詳細及び留意点

【詳細】

 マレーシアでは、通常、出願から約6ヶ月で実体審査に入るとされているが、実体審査に入るまでの期間を短縮することができる早期審査(Expedited examination)制度が設けられている(マレーシア商標規則18A)。

 

(1) 早期審査の承認申請

 出願日から4ヶ月以内に登録官に対して早期審査の承認を申請する必要がある。早期審査の承認申請は、早期審査を請求する理由を述べた宣誓供述書又は宣誓書を添えて、早期審査の承認申請書(様式TM5A)を提出することにより行う。宣誓供述書及び宣誓書は、公証を受ける必要がある。

 また、早期審査の承認申請に係る手数料は、電子申請の場合は200マレーシア・リンギッド、書面申請の場合は250マレーシア・リンギッドである。

 

 早期審査承認の申請がなされた場合、登録官により、以下のうち1つ以上に該当すると判断されれば、早期審査を行う旨の決定が下され、出願人に通知される。実務においては、主に下記の内(ii)、(iv)を理由に早期審査が認められるケースが多い。

 

(i) 国又は公の利益があると認められる場合(例えば、ASEAN SEA GAME等の国家的・地域的大会のための商標である場合や、出願された商標が証明商標や団体商標であってそれらへの迅速な権利付与が公益に関わる場合)

(ii) 侵害訴訟手続が係属中であるか、侵害のおそれがあることを示す証拠がある場合

(iii) 商標の登録が、政府或いは登録官が認知している機関から金銭的便益を得る条件となっている場合

(iv) 早期審査請求を支持する合理的な根拠があると認めた場合(例えば、ライセンス契約、フランチャイズ契約、新ブランドを緊急に立上げる等のビジネスチャンス)

 

 なお、申請書及び宣誓供述書又は宣誓書と併せて、上記(i)~(iv)に該当することを証する書類を追加資料として提出することで、早期審査が認められる可能性が高まることが期待できる。

 

(i)の場合:外国で登録された商標のコピー又はマレーシア国内若しくは海外で署名されたライセンス契約書等を任意で提出することで、早期審査が認められる可能性が高くなると考えられる。

(ii)の場合:侵害訴訟手続が係属中であることが確認されれば早期審査が認められるので、宣誓書等において当該訴訟の事件番号等を記載しておくことが望ましい。また、侵害訴訟が係属中であることを示す証拠を提出することも考えられる。一方、「侵害のおそれがあることを示す証拠がある場合」には、証拠資料として、例えばマレーシア市場にコピー商品があることを示した調査会社による調査報告書等を提出する。

(iii)の場合:証拠となる資料がある場合には提出することが勧められる。

(iv)の場合:合理的な根拠があることを示す資料として、例えばライセンス契約書、フランチャイズ契約書等を提出することで、早期審査が認められる可能性が高くなる。

 

 調査報告書等の提出資料は英語又はマレー語で作成する必要があり、これら以外の言語によるものである場合には英語又はマレー語の翻訳文を提出する。

 

(2) 早期審査の請求

 出願人は、登録官の決定を受領した日から5営業日以内に、所定のフォーマット(様式TM5B)により、早期審査申請を行わなければならない(同(5))。

 早期審査請求に要する手数料は、電子申請の場合は1060マレーシア・リンギッド、書面申請の場合は1200マレーシア・リンギッドである。

 

(3) 早期審査の効果

 実体審査以降の手続は、早期審査の決定をした場合としなかった場合で異なるところはなく、実体審査から受理通知までは約1ヶ月半要し、受理通知の日から1ヶ月以内に出願人は所定の手数料(電子申請の場合600マレーシア・リンギッド、書面申請の場合650マレーシア・リンギッド)を添えて公告申請(TM31)する。その後約1ヶ月で公告され、2ヶ月間の異議申立て期間を経た後、異議申立てがなければ再審査を経て、約2週間後に登録が認められる。

 出願から1ヵ月以内に早期審査の承認申請を行った場合で、権利化までの期間が最大で6ヵ月早まり、出願から7ヵ月程度で登録されることになる

 

【留意事項】

  • マレーシアにおける早期審査の承認申請においては、侵害のおそれを示す証拠等の証拠書類を追加資料として提出することが勧められる。これにより、早期審査が認められる可能性が高くなると考えられるためである。
  • 出願日から4ヵ月以内であれば早期審査の承認申請を行うことができるが、商標出願時に早期審査の請求を併せて行うことも可能である。早期権利化を望んでおり、早期審査承認の要件に該当している場合には、あらかじめ出願書類と併せて早期審査の承認申請を行うための準備をしておくと良い。
■ソース
・マレーシア商標規則
・マレーシア知的財産公社(MyIPO)ウェブサイト
・早期審査の承認申請書フォーマット(様式TM5A)
http://www.myipo.gov.my/documents/10192/834283/TM5Anew.pdf ・早期審査請求フォーマット(様式TM5B)
http://www.myipo.gov.my/documents/10192/834283/TM5Bnew.pdf ・公告申請フォーマット(様式TM31)
http://www.myipo.gov.my/documents/10192/834283/TM31new.pdf ・模倣対策マニュアル マレーシア編(2013年3月、日本貿易振興機構)152頁
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/jpowp/wp-content/uploads/2013/09/77fdc37d8ef122e0cfbe833538551e68.pdf
■本文書の作成者
辻本法律特許事務所
Fabrice Mattei, Rouse
■協力
一般財団法人比較法研究センター 不藤真麻
■本文書の作成時期

2014.01.31

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