アジア / 出願実務
マレーシアにおける特許事由・不特許事由
2014年06月06日
■概要
マレーシア特許法においては、特許事由と不特許事由が定められている。特許事由としては、新規性、進歩性、産業上利用可能性が定められており、発明が特許を受けるためには、これらの要件を満たす必要がある。一方、不特許事由としては、化学理論、植物・動物の品種、人間の治療術による処置の方法等が定められており、これらに該当する場合、特許を受けることはできない。■詳細及び留意点
【詳細】
(1) 特許事由
マレーシアにおいては、発明者の思想であって当該技術分野における一定の課題についての解決を実際に可能にするものが「発明」であるとされる(マレーシア特許法第12条)。その発明がマレーシアで特許されるためには、新規性、進歩性、産業上の利用可能性の要件を満たしていることが必要である(同法第11条)。
(2) 不特許事由
マレーシアにおいて、以下の発明については特許を受けることができない(同法第13条(1))。
・発見、科学理論及び数学的方法
・植物、動物の品種、又は植物若しくは動物を生産するための本質的に生物学的な生産方法(ただし、人工の生存微生物、微生物学的方法及び当該微生物学的方法による製品を除く)
・事業、純粋な精神活動又はゲームを行うための計画、規則又は方法
・人間、動物の身体についての外科術又は治療術による処置の方法及び人間、動物の身体に施される診断方法(ただし、この方法において使用される製品には適用されない)
(3) 登録が認められ得る例
マレーシアにおいては、次のものについては、登録要件を満たしている限り、特許を受けることができる。
・化合物
(登録が認められた例)出願番号:PI2011005801、発明の名称:A PROCESS AND CHEMICAL COMPOUND TO CAPTURE CARBON DIOXIDE FROM NATURAL GAS(天然ガスから二酸化炭素を回収するためのプロセスと化学化合物)
・医薬品:人、動物の体について行う治療方法や診断方法自体は特許を受けることができないが、医薬製品については特許を受けることができる。
(登録が認められた例)出願番号:PI2010002278、発明の名称:IMMUNOPOTENTIATING COMPOSITION FROM LABISIA PUMILA EXTRACT(LABISIA PUMILAの抽出物による免疫増強組成物)
・生物材料:植物及び動物の生産のための本質的に生物学的性質の方法は特許を受けることができないが、微生物学的方法については特許を受けることができる。
(登録が認められた例1)出願番号:PI2010004544、発明の名称:ARTIFICIAL SEEDS OF CACTUS (ECHINOCEREUS SP)(サボテンの人工種子)
(登録が認められた例2)出願番号:PI2010004546、発明の名称:MINIATURE OF IN VITRO PLANTLETS DERIVED FROM SOMATIC EMBRYOS OF ORNAMENTAL PLANTS(観賞植物の体細胞胚に由来する体外小植物)
・ソフトウエア:実務上、ソフトウエア関連発明がフローチャートやダイアグラムで記述されたものについては登録が認められてきた。
(登録が認められた例1)出願番号:PI20061381、発明の名称:A DIAGNOSTIC PROGRAM, A SWITCHING PROGRAM, A TESTING APPARATUS, AND A DIAGNOSTIC METHOD(診断プログラム、切替プログラム、テスト装置及び診断方法)
(登録が認められた例2)出願番号:PI20071944、発明の名称:SECURE SOFTWARE LICENSING CONTROL MECHANISM(安全なソフトウェアのライセンス制御メカニズム)
また、仮に外国(米国、EU、日本等)でソフトウエア関連発明が登録されている場合、修正実体審査(Modified Examination)ルートで出願することで、マレーシアにおいても登録が認められることもあり得る。
【留意事項】
- マレーシア特許法は、ソフトウエア関連発明についての規定を設けていないため、ソフトウエア自体が特許の保護対象にならないとは言い切れず、上記の通り登録が認められた例もある。しかし、数学的方法は特許を受けられないと規定されているので、ソースコードは特許登録が認められず、もっぱら著作権法による保護対象となる。
- なお、半導体については、マレーシアでは、その配置デザインが独創的であり、所有権者が有資格者(マレーシア又はWTO加盟国の国民、法人等)である場合には、2000年集積回路の配置デザイン法により保護を受ける。
■ソース
・マレーシア特許法■本文書の作成者
辻本法律特許事務所■協力
Fabrice Mattei, Rouse一般財団法人比較法研究センター 不藤真麻
■本文書の作成時期
2014.01.30