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ベトナムにおける意匠出願の公開

2014年05月30日

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■概要
ベトナムでは、日本とは異なり、意匠にも出願公開制度がある。そのため、方式要件を満たしていれば、実体審査前であっても、出願から2ヵ月後に公開される。この制度があることに伴って、出願公開後の意見の提示や仮保護の制度も存在する。
■詳細及び留意点

【詳細】

(1) 意匠登録出願公開制度と仮保護

 ベトナムでは、日本とは異なり、意匠登録出願につき方式要件を満たしていれば、国家工業所有権庁によって受理され、受理された日から2か月以内に出願内容が公開される(ベトナム知的財産法第110条(3))。そのため、出願すれば公開されることを前提に管理する必要がある。

 そして、出願人は、意匠登録出願が公開された後、先使用権なしに当該意匠を使用する者に対し、使用を継続するか中止するかを判断させるため、出願日及び公開日を明記した通知書を送付することができる(ベトナム知的財産法第131条(1))。

 当該意匠を使用する者が当該意匠の使用を継続している場合、出願人は、当該意匠を使用する者に対し、通知書を送付し、その意匠が公開されてから登録されるまでの使用に対してライセンス料相当額を支払うよう、意匠特許証交付後に請求することができる(同(3))。

 なお、ベトナムには秘密意匠制度や公開を遅らせる制度は存在しない。

 

(2) 意匠の出願公開後の意見の提示

 第三者は、意匠登録出願が公開された後、意匠特許付与の決定がなされる前日までであれば、ベトナム知財庁に対し、当該意匠の登録性について書面により意見を提示することができる。

 出願公開後の意見の提示に関して、所定のフォームはないが、登録が認められるべきではない理由を具体的に記載する必要がある(例:いつ、どこで、どのように出願に係る意匠が販売されていた)。

 また、その際、資料を添付するか、立証に使用する情報の出所を明示しなければならない(ベトナム知的財産法第112条)。

 資料としては、出願にかかる意匠が出願日より前に公開されていたことを示すカタログ、雑誌、ウェブページのURL等が挙げられる。なお、日本語や英語の資料はベトナム語に翻訳する必要がある。

 

 意匠の出願公開後の意見の提示ができる理由としては、概ね以下のようなものが考えられる。

 

・新規性がない

・創作容易である

・工業上の利用可能性がない

・公序良俗に反する

・製品の技術的特徴に起因するか、技術的特徴のみを有している

・製品が意図する態様で使用される場合には視認できない

・登録商標、著作権による保護対象物と抵触している

・出願人が意匠登録出願権を有していない

 

 なお、意匠の出願公開後の意見の提示に関する資料は非公開のため、現在のところ、これに関する具体的事案を取り寄せることはできない。

 

【留意事項】

 ベトナムでは、日本とは異なり、意匠登録出願の内容が方式審査を通過した後2か月以内という比較的短期間に公開され、万一拒絶査定が確定したとしても、日本のように意匠は公開されないままとなるということはないため、出願すれば公開になることを前提に管理する必要がある。

 例えば、日本とベトナムの両国でほぼ同時に出願したような場合、日本より先にベトナムで公開されることがあり得る。日本の出願につき拒絶査定が確定した時点で、出願にかかる意匠を秘匿する方針に転換しようとしても、ベトナムでは公開されているため(かつ公開を遅らせる制度は無いため)、かかる方針転換は不可能となる。

 また、公開制度があることから、出願中に第三者による意匠の登録性に関する意見の提示がなされることもあるので、この点でも注意が必要である。もっとも、ベトナムの意匠は、公開制度があることにより、出願人は、日本特許法における補償金請求権と同様の「仮保護」に関する権利を有することになる。出願中から模倣品が出回っており早期にけん制したい場合等には、この制度の利用を検討することも一案である。

■ソース
・ベトナム知的財産法
■本文書の作成者
辻本法律特許事務所
Banca Intellectual Property Law Firm
■協力
一般財団法人比較法研究センター 不藤真麻
■本文書の作成時期

2013.12.28

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