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シンガポールにおける優先権主張を伴う特許出願

2014年05月20日

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■概要
シンガポールもパリ条約締結国であるため、優先権主張に伴う特許出願が認められる。優先権主張期間は基礎出願日から12ヶ月以内であり、部分優先や複数優先も認められる。
■詳細及び留意点

【詳細】

(1) 優先権主張を伴う特許出願

(i) 優先権主張の宣誓

 シンガポールにおいては、パリ条約に基づく優先権を主張することが可能であり(シンガポール特許法第17条(1))、優先権を主張したい場合は、出願時に願書において、その旨を宣誓する必要がある。出願日後であっても、(i)宣誓された優先日を有さない当該出願が優先日を有することになる場合は宣誓された優先日から16ヵ月以内、(ii)当該出願の宣言された優先日がそれより早い日に繰り上げられることになる場合は繰り上げられた日から16ヵ月以内であれば、所定のフォーマット(様式57)により、パリ条約に基づく優先権主張を行うことができる(シンガポール特許規則9(2))。

 

(ii) 願書フォーマットへの記載

 パリ条約に基づく優先権主張を行うには、願書のフォーマット(様式1)段落4に設けられている優先権主張の基礎出願の情報を記載する欄に、基礎出願の出願国、出願番号、出願日を記載する。また、段落10において、出願にかかる発明の説明が、基礎出願を引用することにより出願内容に組み入れられており、かつ、出願時において基礎出願に完全に含まれている旨を陳述しなければならない。

 優先権主張の宣誓に錯誤があった場合で、当該錯誤の登録官に対する訂正請求(様式57)を認めることによって宣誓された優先日が別の日に変更される場合には、変更されたとする場合の宣言された優先日から16月以内に、訂正の請求を行う必要がある(同規則9(3))。

 

(iii) 優先権証明書

 優先権主張を伴う特許出願において、優先権証明書は、登録官からの要求があった場合に提出すれば良い。登録官の要求を受けて優先権証明書を提出する場合において、基礎出願が英語以外の言語で作成されている場合には、英語の翻訳文も提出する必要がある。

 

(2) 優先権主張の期間

 優先権主張は、基礎出願の日から12ヶ月以内に行う必要がある(同法第17条(2C))。所定のフォーマット(様式57)により申請することで2ヶ月の延長が認められることがあるが(同規則9A)、「事情に応じて必要とされる当然の注意を払ったにもかかわらず遅延が生じたこと」及び「故意によるものではなかったこと」(いずれの要件も充足する例:Docket Clerk(記録管理の担当者)のミスによって期限について記録上誤記が発生し、期限を経過したような場合)を登録官に説明し、納得させなければならない。

 優先権主張を伴う特許出願を行う場合について出願費用と別に優先権主張の費用を納付する必要はないが、優先権主張期間の延長を申請する場合には、延長申請の手数料として260シンガポールドルを納付する必要がある。

 

(3) 部分優先と複数優先

 シンガポールにおいては、部分優先や複数優先が認められる(同法第17条)。

 部分優先とは、基礎出願に新たな内容を追加して出願することであり、基礎出願に含まれる部分については基礎出願の出願日が優先日となるが、追加した内容について優先権主張の効果は認められない。

 複数優先とは、複数の出願を基礎出願として優先権を主張することである。特定の基礎出願に含まれる部分の優先日はその基礎出願の出願日になり、複数の基礎出願に含まれる部分の優先日は、最先の基礎出願の出願日となる。

 

【留意事項】

 優先権主張の期限は厳守しなければならない。2ヶ月の延長申請制度があるが、延長の要件として当然の注意を払ったことが求められるため、延長申請制度の利用は安易に考えない方が良い。

■ソース
・シンガポール特許法
・シンガポール特許規則
・特許出願願書のフォーマット(様式1)
http://www.ipos.gov.sg/Portals/0/PF12005.pdf ・特許規則9(2)に基づく宣誓又は同規則9(3)、9A(2)に基づく申請のフォーマット(様式57)
http://www.ipos.gov.sg/Portals/0/Forms%20and%20fees/patents/PF57A3.pdf
■本文書の作成者
辻本法律特許事務所
Donaldson & Burkinshaw LLP
■協力
一般財団法人比較法研究センター 不藤真麻
■本文書の作成時期

2014.01.21

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