アジア / 出願実務
シンガポールにおいて意匠出願人となる者
2014年05月07日
■概要
シンガポールでは、原則として、意匠登録を受ける権利は創作者に原始的に帰属するが、雇用期間中に従業者により創作された場合等は、創作者に帰属しない旨が定められている。■詳細及び留意点
【詳細】
(1) 出願人
シンガポールでは、意匠登録を受ける権利は創作者に原始的に帰属するが(シンガポール意匠法第4条(1))、次のような点に注意が必要である。
- 意匠登録を受ける権利を譲り受けた場合は、譲受人が出願人となる。
- 複数人による共同創作による場合、創作者全員が均等の持分で意匠登録を受ける権利を有し、原則として創作者全員で出願する。ただし、当事者全員の間で別段の合意がある場合(例:共同創作者のうちの1人を出願人とする)は、その合意に従う。
- 金銭(金銭的価値を有するものを含む)を得て意匠創作を委託された場合は、意匠登録を受ける権利は委託者に原始的に帰属し、出願人となることができる。ただし、当事者間で別段の合意がある場合は、その合意に従う。
- 雇用期間中に従業者により意匠が創作された場合は、意匠登録を受ける権利は使用者に原始的に帰属し、出願人となることができる。ただし、当事者間で別段の合意がある場合は、その合意に従う。
- コンピュータにより生成された意匠の場合は、意匠登録を受ける権利は意匠の創作に必要な手配を行った者に原始的に帰属し、出願人となることができる。
(2) 創作者と出願人が一致しない場合
シンガポールにおいて、意匠出願は所定のフォーマット(様式D3)により行う必要があり、上記に示したような、創作者と出願人が一致していないケースにおいては、出願願書において、その旨を記す必要がある。
具体的には、Part6において意匠の出願人と創作者が一致するか否かをチェックする欄があり、異なる場合には創作者を記載する必要がある。ただし、出願人が意匠登録を受ける権利を有することを示す証拠資料を提出する必要はない。
(3) 優先権主張を伴う意匠出願
シンガポールの意匠出願が優先権主張を伴うものである場合において、優先権の基礎となる出願とシンガポールにおける出願とで出願人が異なる場合(例えば、基礎出願後に、シンガポールで意匠登録を受ける権利につき譲渡があったような場合)には、願書のPart10において、その詳細を説明しなければならず、譲渡日、譲渡人、譲受人の氏名は必ず記載する。
なお、この場合、証拠資料の提出は不要であるが、審査官の裁量により、譲渡証書等の証拠資料の提出を求められることもある。証拠資料が要求され、提出すべき証拠資料が英語によるものでない場合には、英語の翻訳文を併せて提出しなければならない。
【留意事項】
シンガポールでは、願書において出願人と創作者を区別して記載しなければならないため、出願に際しては両者の区別を意識しておく必要がある。
シンガポールでは、金銭を支払って創作委託した者や使用者に意匠登録を受ける権利が原始的に帰属する点に注意が必要である。なお、別段の合意がない限りは、従業者による創作については、当該創作を行った従業員は当該創作について意匠出願をすることができないが、職務創作について従業員が相当の対価を得られるといった規定はシンガポールには存在しない。
■ソース
・シンガポール意匠法・シンガポール意匠規則
・意匠出願願書フォーマット(様式D3)
http://www.ipos.gov.sg/Portals/0/Forms%20and%20fees%20desgins/Forms-V5-01-13/D3%20-%20V050113.pdf
■本文書の作成者
辻本法律特許事務所Donaldson & Burkinshaw LLP
■協力
一般財団法人比較法研究センター 不藤真麻■本文書の作成時期
2014.01.20