欧州 / 出願実務
ロシアにおける多意匠一出願
2014年05月30日
■概要
ロシアでは、多意匠であっても単一性の要件を具備する場合には、一出願に多意匠を含めることができる。しかし、EUのようにロカルノ分類において同じサブクラスの製品に係る意匠を全て一出願とできるわけではない。■詳細及び留意点
【詳細】
ロシアでは、多意匠であっても単一性の要件を具備する場合には、多意匠を一出願に含めることができる。
部品が完成品の使用時に視認可能であり、かつ、完成品と部品がロカルノ分類において同じサブクラスに属する場合には、完成品と部品の意匠は単一性の要件を具備する(意匠行政規則9.6)。
例えば、ペンとそのペンキャップ及びそのペンのクリップはロカルノ分類の同じサブクラス(19-06)に属し、ペンの使用時にキャップ及びクリップは視認可能なため、一出願することが可能である
また、組物とその構成物品であってもロカルノ分類の同じサブクラスに属し、かつ、組物の使用時にその構成物品が視認可能なものは、一出願とすることができる。
一方、部品が完成品の使用時に視認できない場合は、たとえ両者がロカルノ分類の同じサブクラスに属する製品であっても、単一性の要件を具備しない。例えば、プリンターとプリンターの内部に取り付けて使用するインクカートリッジは、ロカルノ分類の同じサブクラスに属する製品であるが、プリンターの使用時にインクカートリッジは視認できないので、両者は単一性の要件を具備しない。
また、完成品の使用時に部品を視認できる場合であっても、両者がロカルノ分類の同じサブクラスに属さない場合には、単一性の要件を具備しない。例えば、自動車と自動車用ヘッドライトは、自動車の使用時にヘッドライトは視認可能であるが、ロカルノ分類において異なるサブクラスに属するので、単一性の要件を具備しない。
同一の製品に係る多意匠の場合、当該多意匠の本質的特徴が共通し、単一の創作的概念を形成しているものと認められる場合には、変形意匠として一つの意匠出願をすることができる(意匠行政規則9.6)。登録例としては、以下のものがある。
【留意事項】
(1) 組物とその構成物品も、完成品とその部品と同様に、単一性の要件を具備すれば、一出願することができる。なお、組物は、日本とは異なり特別に定められていない点に留意する必要がある。
(2) 変形意匠は、日本の関連意匠に近いものであるが、変形意匠として認められる範囲は、日本において関連意匠として認められる範囲とは異なる点に留意する必要がある。変形意匠は、基本の意匠と本質的特徴を共通することを条件に認められるものである。したがって、日本で関連意匠として認められないものであっても、ロシアでは変形意匠として認められることもあり得る。
■ソース
【ソース】・ロシア民法第4部
・ロシア意匠行政規則
・模倣対策マニュアル ロシア編(2012年3月、日本貿易振興機構)76頁
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/jpowp/wp-content/uploads/2013/09/b91f7f3b65c81f32e4c8610ed549ee17.pdf ・黒瀬雅志編著、伊藤武泰・谷口登・木本大介著『ロシア 知的財産制度と実務』(一般財団法人経済産業調査会、2013年)
■本文書の作成者
協和特許法律事務所 弁理士 谷口登■協力
一般財団法人比較法研究センター 不藤真麻■本文書の作成時期
2014.01.17