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ロシアにおけるコンピュータプログラムの保護

2014年05月02日

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  • 出願実務
  • 特許・実用新案
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■概要
ロシアでは、コンピュータプログラムそのものは、著作権の保護対象であるが、特許の保護対象ではない。従って、コンピュータプログラムに関する発明に係る特許出願をする場合は、プログラムクレームではなく、装置クレーム、方法クレーム、又は記録媒体(コンピュータプログラムを格納した記録媒体)クレームを作成する必要がある。
■詳細及び留意点

【詳細】

(1) 特許の保護対象

 ロシアにおける特許の保護対象は物及び方法であり(民法第1350条第1項)、「物」には、装置、物質、微生物株及び動植物の細胞培養物が含まれる。民法には更に、コンピュータプログラムは不特許事由に該当する旨の規定(民法第1350条第5項第5号)がある。従って、ロシアでは、コンピュータプログラムそのものは特許の保護対象ではない。つまり、プログラムクレームを含む特許出願は、民法第1350条第5項第5号の規定を満たさないものとして、新規性及び進歩性等の特許要件について判断されることなく実体審査で拒絶される。

 

(2) コンピュータプログラムを保護する方法

(i) 特許権として保護する方法

 コンピュータプログラムを特許権として保護する方法として、装置クレーム、方法クレーム、又は記録媒体クレームにコンピュータプログラムの処理の特徴を記載する方法がある。例えば、プログラムクレームを含む日本特許出願を基礎とする優先権を主張してロシア特許出願を行う場合には、プログラムクレームを記録媒体クレームに置き換えることが、実務上一般的である。

 具体的には次のとおりである。

 パリルートを利用する場合には、外国語書面(基礎出願(日本語)の明細書、特許請求の範囲、図面及び要約書)を提出し、外国語書面の提出日から2ヶ月以内に当該外国語書面のロシア語の翻訳文を提出し、その後にプログラムクレームを記録媒体クレームに変更する補正を行うとよい。

 一方、PCTルートを利用する場合には、国内移行後に、プログラムクレームを記録媒体クレームに変更する補正を行うとよい。

 何れのルートにおいても、ロシア弁理士にロシア語の翻訳文の作成を依頼する場合には、翻訳用として、以下の文例のような記録媒体クレームを用意することが望ましい。

 

(基礎出願のプログラムクレームの文例(日本語))

コンピュータに、

 メモリから暗号化されたデータを読み出す機能と、

 前記暗号化されたデータを復号して、画像データを生成する機能と、

 前記画像データに基づく画像をディスプレイに表示する機能と、

を実現させるコンピュータプログラム。

 

(ロシア語への翻訳用の記録媒体クレーム文例(英語))

A computer recording medium storing program codes making a computer to perform the steps of:

 reading coded data from a memory;

 encoding the coded data to generate image data; and

 displaying image based on the image data on a display.

 

 プログラムクレームを含む日本特許出願を基礎とするロシア特許出願について、記憶媒体クレームとして特許が認められた事例としては、特許RU2454020(対応日本特許出願:特願2010-4902号)がある。

 また、プログラムクレームを含む特許出願の拒絶査定不服審判の審決として、出願2009127483/08号がある。当該審判では、数学的計算方法の特徴を記載したプログラムクレームを含む特許出願について、民法第1350条第5項第5号(不特許事由)に該当するという理由に基づく拒絶査定に対して争われたが、特許紛争評議会は、出願人の申し立てを棄却し、ロシア特許庁の処分(拒絶査定)を維持する審決を下した。

 

(ii) 著作権で保護する方法

 コンピュータプログラムは、著作権の保護対象である(民法第1259条第1項)。著作物としてのコンピュータプログラムには、オペレーティングシステム、ソースコード、プログラム内のオブジェクト、及びユーザインタフェース等が含まれる。著作権の保護を受けるために、著作物の登録は不要である。但し、コンピュータプログラムに関しては、ロシア特許庁への登録が認められている。コンピュータプログラムをロシア特許庁へ登録すると、登録証が発行される。この登録証は、訴訟において、著作権で保護を求める対象物(コンピュータプログラム)の特定やコンピュータプログラムの著作権者であることを示す証拠として使用できる。コンピュータプログラムをロシア特許庁へ登録するためには、コンピュータプログラムを特定できる書面をロシア特許庁に提出する必要がある(民法第1262条第2項)。

 

【留意事項】

 プログラムクレームを含むロシア特許出願をした場合には、審査請求時までに、プログラムクレームを記録媒体クレームに変更することにより、無駄なオフィスアクションを減らすことができる。

■ソース
・ロシア民法典第四部
・行政規則
・模倣対策マニュアル ロシア編(2012年3月、日本貿易振興機構)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/jpowp/wp-content/uploads/2013/09/b91f7f3b65c81f32e4c8610ed549ee17.pdf ・黒瀬雅志編著、伊藤武泰・谷口登・木本大介著『ロシア 知的財産制度と実務』(一般財団法人経済産業調査会、2013年)
■本文書の作成者
グローバル・アイピー特許業務法人 弁理士 木本大介
■協力
Patentica LLP ロシア特許弁理士・ユーラシア特許弁理士 Mr. Evgeny Enbert
一般財団法人比較法研究センター 不藤真麻
■本文書の作成時期
2014.01.04
■関連キーワード
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