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マレーシアにおける商標の不登録事由と同一又は類似する2つの商標の並行使用

2014年05月09日

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■概要
マレーシアでは、他人の先登録商標と同一又は類似する商標の登録は認められないが、善意の同時使用や先使用等の事情があれば登録が認められ、同一又は類似する2つの商標の併行使用が認められることがある。
■詳細及び留意点

【詳細】

(1) 他人の登録の存在を理由とする不登録事由

 マレーシアにおいては、次の商標は登録されない(マレーシア商標法第19条)。

 

・同一の商品・同一種類の商品又はその商品と密接に関連するサービスに関し、既に登録されている他人の商標と同一の商品商標

・同一の商品・同一種類の商品又はその商品と密接に関連するサービス、又は同一種類のサービスにつき、既に登録されている他人の商標と、誤認・混同を生じさせる虞がある程度に類似する商標

・同一のサービス・同一種類のサービス又はそのサービスと密接に関連する商品に関し、既に登録されている他人の商標と同一のサービスマーク

・同一のサービス・同一種類のサービス又はそのサービスと密接に関連する商品につき、既に登録されている他人の商標と、誤認・混同を生じさせる虞がある程度に類似する商標

 

(2) 併行使用

(i) 善意の同時使用

 上記(1)の不登録事由に該当する場合でも、善意の同時使用の場合や裁判所又は登録官においてそうすることが適切と判断する特別の事情があれば、裁判所又は登録官は、複数の所有者による商標登録を認めることができる。ただし、適当と判断する条件、補正、修正又は制限が課されることがある(同法第20条(1))。

 ここでいう「特別の事情」とは、「出願の主題につき出願人に対して特別な事情(fact peculiar to the applicant in relation to the subject matter of the application)」と言われ、混同の危険性を極小化させるか、出願人に特別な困難を生じさせるような側面から構成されると考えられる。例えば、以下のような事情は、登録が認められるための1つの要素になり得る。

 

・出願人が抵触する商標より先に使用していたか、登録前から使用していた

・商標が出願人の氏名、名称である

・商標の使用は、出願人の事業からして自然に派生したものである

 

 2つの抵触する商標が善意の同時使用に基づき登録されるのは、両者がそれぞれ使用されたとしても、需要者は両者が別の商標であり識別できるようになる十分な機会があったという想定に基づく。ある者が善意の同時使用を主張し、2つの抵触する商標登録を正当化するにあたっては、以下の点を踏まえるべきである。

 

(a) 商標法第20条(1)の適用を受けるために提出された証拠の審査に際しては、次のような要素が考慮される(Assistant Comptroller Mr. SE Chisholm in John Fitton & Co Ltds vs. Appn (1949) 66 RPC 110.)。

 

・期間、地域、取引量、使用された商品

・抵触する商標が類似することによって生じるであろう混同の程度

・同時使用者の誠実度

・混同が生じた事例が実際に証明されたか否か

・登録が認められた場合に生じるであろう不都合

 

(b) 誠実な同時使用者が登録を受けられるか否かの判断は、大部分が両商標の間に混同が生じるか否かによる。一般論としては、混同の可能性が高いほど、誠実な同時使用に基づき登録を受けることは困難になる。商標、商品、市場が全て同じであれば、一般的に「triple identity」と言われる状態であり、混同は避けられない。そのような「triple identity」の場合、両当事者が地域や使用態様につき何らかの合意に達しない限り、登録が認められる可能性は極めて低い。

 

(ii) 先使用

 また、登録済みの他人の商標と同一又は類似する商標につき出願された場合において、後願の出願人又はその前事業主(当該商標の前の使用者)が、(a)先願商標の商標権者(その前事業主を含む)又は登録使用者による先願商標の使用、又は、(b)先願商標の商標権者(その前事業主を含む)による先願商標の登録よりも前から、後願の商標を継続的に使用しているときは、後願の出願は拒絶されない(同条(2))。

 出願人は、先使用を主張する場合には、出願人又は前事業主が先願商標の使用・登録よりも前から後願の商標を継続して使用していることを証明する必要がある。例えば、実際に商標を使用していることと使用にかかる商品・役務、売上高や販売数等の規模、使用開始時期を示すもの等が証拠資料として考えられる。

 

【留意事項】

  • マレーシアも商標は先願主義が原則となっているが、使用事実を尊重する観点から修正が加えられ、上記のようなケースにおいて、並行使用も認められている。
  • 先使用(同法第20条(2))の適用にあたり,後願商標の周知性は要件となっていない。また、先使用に限らず、善意の並行使用についてまで(一定の条件や制限の下に)併存登録が認められる可能性がある制度設計になっており(同条(1))、日本の商標権における先使用権よりも相当広い範囲で先願主義に修正が加えられる内容になっている。
  • 証拠資料を提出する場合、マレー語又は英語でない場合には翻訳文を提出する必要がある。
■ソース
・マレーシア商標法
■本文書の作成者
辻本法律特許事務所
■協力
Fabrice Mattei, Rouse
一般財団法人比較法研究センター 不藤真麻
■本文書の作成時期
2014.01.26
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