アジア / 出願実務
マレーシアにおける複数意匠の一括出願
2014年05月07日
■概要
マレーシアにおいて、公序良俗に反する意匠や物品の形状若しくは輪郭の特徴であって、物品が果たすべき機能によってのみ決定づけられる意匠は登録が認められないが、同一の出願で複数の意匠を対象にできる点に特徴がある。審査は方式審査のみである。■詳細及び留意点
【詳細】
(1) マレーシアにおいて登録可能な意匠・不登録事由
マレーシアでは、新規性を有する意匠については、所定の手続を経ることによって登録を受けることができる(マレーシア意匠法第12条)。ただし、次のようなものは登録できない(同法第3条)。
・公序良俗に反する意匠
・構成の方法や原理
・物品の形状若しくは輪郭の特徴であって、物品が果たすべき機能によってのみ決定づけられる意匠
・物品の形状若しくは輪郭の特徴であって、物品が果たすべき機能によって決定づけられる意匠のうち、他の物品の必須部品でありその特徴が他の物品の外観に依拠するもの
(2) 複数の意匠
マレーシアの意匠制度は、同一の出願で複数の意匠を対象にできる点に特徴があり、マレーシアでは、複数の意匠であっても、意匠国際分類の同一クラスに係るか、同一の組物や同一の物品構成に係る場合であれば、同一の出願対象にすることができる(同法第15条)。複数の意匠を出願する場合の意匠の数に上限はなく、一括出願する複数の意匠について、意匠ごとに創作者が異なっていても良い。
全く同一の意匠(例えば、図面の作成方法のみ異なるもの、色彩のみ異なるが色彩についての保護を求めないもの)については、一つの出願とすることは認められない。
複数の意匠を一括で出願する場合でも、各意匠が新規性を満たしている必要があり、各意匠とも、上記の不登録事由に該当してはならない。複数の意匠を一括で出願しても権利はそれぞれ個別に発生し、有効・無効(無効審判を提起される場合等)も個別に判断される。
複数の意匠について出願する場合、願書(様式ID1)の「6. Multiple applications」の欄に、登録を求める意匠の数を記入する必要がある。また、所定の追加手数料も支払わなければならない(マレーシア意匠規則5)。追加手数料は、(単一の意匠を対象にする場合は500リンギットであるのに対し)複数の場合は1件につき500リンギットずつ加算される。
本法第15条に基づいて2以上の意匠が同一出願の主題である場合は、登録官により、当該意匠の共通の登録証を発行される。
なお、一部の意匠に拒絶理由があっても、出願全体が拒絶されることにはならない。登録官は、出願が方式要件の何れかを満たさないと判断した場合、出願人に対してその旨を書面で通知し、通知日から3か月以内に意見書を提出する機会が与えられる。出願人が期間内に方式要件を満たしていると登録官を納得させることができないか出願を補正しない場合には、登録官は当該出願を拒絶すること、複数意匠の出願において方式要件が遵守されていない意匠を登録から除外することができる(同規則19)。
(3) 複数の意匠の一括出願の例
実際に、意匠国際分類の同一クラスに係る複数の意匠の一括出願が認められた例として、以下のようなものがある。
【留意事項】
- 同一出願で複数の意匠を出願できることで、登録後もこれらの意匠について一括で管理することができ、またコスト面からも合理的である。ただし、一括管理できる反面、万一、年金の納付を切らしてしまった場合は全ての意匠を失うことになるので、注意を要する。
■ソース
・マレーシア意匠法・意匠出願の願書フォーマット(様式ID1)
http://www.myipo.gov.my/web/guest/reka-borang ・複数の意匠を出願する場合の願書のサンプル
http://www.myipo.gov.my/documents/10180/35314/example2.pdf
■本文書の作成者
辻本法律特許事務所■協力
Fabrice Mattei, Rouse一般財団法人比較法研究センター 不藤真麻
■本文書の作成時期
2014.01.26