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中国における進歩性欠如の証拠について

2012年08月09日

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■概要
発明の進歩性の判断については、相違点を認定し、その相違点に係る構成が引用文献で開示され、目的・作用も同一で、かつ予想外の技術効果もなければ、進歩性は否定されるのが一般的である。本件は、相違点に係る構成が引用文献で開示されておらず、技術効果も異なっていたにも関わらず、当業者の慣用手段であると認定し、進歩性を否定した特許庁審判部(中国語「専利復審委員会」)の審決とそれを支持した第一審判決を、事実的根拠に欠けるとして取り消した。
■詳細及び留意点

 放熱器に関する本件特許に対し、無効が請求され、中国特許庁審判部(中国語「专利复审委员会」)が特許の全部無効を決定し、審決取消訴訟でも北京市第一中級人民法院はこの審判部の決定を維持した。

 

 本件特許クレーム1及びクレーム2は、以下のようなものである。

「1.発熱源から発生する熱量を吸収する放熱器であって、発熱源と接触して吸収した熱を空気中に放熱するものであり:

それぞれが、発熱源の上表面に接触して垂直とされ発熱源から発生する熱を吸収する吸熱部分と、吸熱部分から伸びた先に吸収した熱を空気中に放熱する放熱部分とを有し、積層配列されて放熱フィン層を形成するとともに、吸熱部分が放熱フィン層の中心となっている複数の薄シート状の放熱フィンと、1対の押さえブロックであって、放熱フィン層の吸熱部分がその間に置かれ、吸熱部分を押圧するように配置された押さえブロックとを備え、各放熱フィンの放熱部分が中心から放射状に伸長展開され、放熱器は楕円柱形状を有するようにされている放熱器。

2.各放熱フィンが少なくとも1つのスペーサーを有し、前記1対の押さえブロックにより各放熱フィンがしっかりと係合されていると同時に、前記スペーサーは、スペーサーに加えられる力により各放熱フィンの放熱部分が放射状に伸長展開することを可能としたクレーム1に記載の放熱器。」

中国特許第02800004.8号明細書の図2

中国特許第02800004.8号明細書の図2


中国特許第02800004.8号明細書の図6及び図7

中国特許第02800004.8号明細書の図6及び図7

 審判部は、凹凸と折り曲げ部を有する放熱フィンを有する放熱器を開示している引用文献2の構成に慣用手段を適用したものとして特許クレーム2の特許性を否定し、中級人民法院もこの判断を維持していた。

引用文献2(国際公開第WO00/27177号)の図16及び図17

引用文献2(国際公開第WO00/27177号)の図16及び図17

 しかし、上級審の北京市高級人民法院において、クレーム2及び引用文献2は構成要素が異なり、それにより実現される技術的効果も異なり、この技術的相違が慣用手段に該当するとの判断は誤りであるとして、審決及び第一審判決の判断が覆された。

 

参考(北京市高級人民法院民事判決2011年12月15日(2011)高民終字第784号より抜粋):

将本专利权利要求2与对比文件2相比较,其区别特征在于:1、本专利权利要求2不需要对散热器片折叠至预定角度;2、本专利权利要求2中的垫片向一个方向折叠,不侵占邻接折叠部的空间,而对比文件2中的凹部22与突部23对应存在,在各散热器片紧密接触时,突部23会陷入到邻接散热器片的凹部22中。由此可见,本专利权利要求2所限定的结构技术特征并没有被对比文件2所公开,其所实现的技术效果也完全不同于对比文件2的技术效果,本领域技术人员在现有技术条件下只有付出创造性劳动,才能实现本专利权利要求2的技术方案,即本专利权利要求2具备《专利法》第二十二条第三款规定的创造性。第14134号决定和原审判决关于对比文件2中通过冲压方式形成突起,与本专利权利要求2中通过折叠形成叠层,其目的均在于通过在挤压位置形成增厚的部分,使该部分受挤压变形小于其他部分,从而使得散热器片伸展开,这属于本领域的常规技术手段,同时亦没有产生意料之外的技术效果的相关认定,缺乏事实依据,本院依法予以纠正。扎尔曼株式会社关于本专利权利要求2具备创造性的上诉主张成立,本院对此予以支持。

(日本語訳:本件特許クレーム2と引用文献2を比較すれば、その相違点は、(i)本件特許クレーム2では、放熱フィンについて所定の角度まで折り曲げる必要がない点と、(ii)本件特許クレーム2のスペーサーは一つの方向に折り畳まれ、折り畳み部に隣接する空間に及ぶことはないのに対して、引用文献の凹部22と突部23は対応して存在するものであり、各放熱フィンが密接に接触している時、突部23が隣接する放熱フィンの凹部22の中に入る点とにある。このように、本件特許クレーム2に規定されている要素は引用文献2に開示されておらず、それにより実現される技術的効果は引用文献2の技術効果と全く異なり、当業者は従来技術のもとで創作活動をせずに本件特許クレーム2の発明をすることはできない。つまり、本件特許クレーム2は専利法(特許・実用新案・意匠法)第22条第3項に規定する進歩性を具備する。第14134号審決及び原審判決の、引用文献2のプレス加工により突起を形成する構成と本件特許クレーム2の折り畳み部により積層を形成する構成について、その目的は同じく、プレス位置において厚みを増す部分を形成することで、同部分をプレス変形させてその他の部分よりも小さくすることにより放熱フィンを伸長展開させることにあり、これらは当業界の慣用手段に属し、予想外の技術的効果を生じていないとの認定は、事実の根拠に欠けるものであり、本院は法に基づいて是正する。扎尔曼株式会社の、本件特許クレーム2が進歩性を具備するとの上訴の主張は成立し、本院はこれを支持する。)

 

【留意事項】

一般に、中国において特許庁審判部の審決を人民法院で覆すことは難しいという認識があるが、上級審で判断が覆されることもあり得る。中国における進歩性について否定された場合は、(i)特許発明の構成要件が引用文献に開示されているか、(ii)引用発明と技術的効果が同一といえるかについて確認し、事実に基づかない認定と反論できる余地を探すようにすべきである。

■ソース
中国特許第02800004.8号(公告番号CN1215751C、対応PCT出願番号PCT/KR02/00346号)
国際公開第WO00/27177号
中国特許庁審判部無効審決2009年月3日付第14134号
北京市高級人民法院民事判決2011年12月15日(2011)高民終字第784号
URL:
http://bjgy.chinacourt.org/public/paperview.php?id=829910 北京市第一中級人民法院(簡称北京市第一中級人民法院)(2010)一中知行初字第1283号
URL:
http://bjgy.chinacourt.org/public/paperview.php?id=488677
■本文書の作成者
特許庁総務部企画調査課 根本雅成
特許庁総務部企画調査課 古田敦浩
■協力
北京信慧永光知識産権代理有限公司 日本事務所 呉 毅
北京林達劉知識産権代理事務所
■本文書の作成時期
2012.06.27
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