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中国における特許出願の新規性喪失の例外について

2024年11月26日

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■概要
中国では、先願主義を採用しており、特許出願に係る発明の新規性の判断は出願日(または優先日)を基準とする。出願日(優先日)前に開示された発明は、たとえ出願人自身による開示であっても、原則として新規性は喪失する。しかし、この原則は科学技術の促進にマイナスの影響があるため、国際慣例に鑑み、一定の猶予期間に限って、定められた行為についてのみ、新規性喪失の例外が認められている。
■詳細及び留意点

1. 新規性喪失の例外適用の猶予期間および適用対象
 出願日(優先権主張の場合、優先日を指す。)から遡って6か月以内の下記行為の何れかに該当する場合には、新規性を喪失しないとされる(中国専利法(以下「専利法」という。)第24条、専利法実施細則(以下「実施細則」という。)第33条)。

(1) 国家において緊急事態または非常事態が発生し、公共の利益のために初めて公開した場合。
(2) 中国政府が主催または認める国際展覧会で初めて展示された場合。
(3) 規定の学術会議、または技術会議上で初めて発表された場合。
(4) 他人が出願人の同意を得ずに、その内容を漏洩した場合。

 上記(2)に定める、中国政府が主催する国際展覧会とは、国務院・各部委員会が主催するか、または国務院が許可し、その他の機構もしくは地方政府が開催する国際展覧会も含む(中国専利審査指南(以下「審査指南」という。)第1部第1章6.3.2)。また、中国政府が認める国際展覧会とは、国際博覧会条約に定められた、博覧会国際事務局に登録された、またはそれに認められた国際展覧会を指す(実施細則第33条第1項)。国際展覧会とは、出展される展示品が、主催国の製品以外に、外国からの展示品もなければならない(審査指南第1章第1部6.3.2)。

 上記(3)に定める、規定の学術会議または技術会議とは、国務院の関連主管部門または全国的な学術団体組織が開催する学術会議または技術会議、および国務院関連主管部門が認可した国際組織によって開催される学術会議または技術会議を指す(実施細則第33条第2項)※1。省以下もしくは国務院の各部委員会または全国的な学術団体から委任を受けて、もしくはその名義により開催する学術会議または技術会議は含まれない(審査指南第1章第1部6.3.3)。

※1 実施細則第33条第2項後段の、「国務院関連主管部門が認可した国際組織によって開催される学術会議又は技術会議」は、2023年の実施細則の改正によって追加されたもので、これにより学術会議または技術会議の範囲が拡張された。

2. 関連手続
2-1. 国家に緊急事態または非常状況が発生した時に、公共利益を目的として初めて公開された場合
 出願する発明について、出願日の6か月前までに、国家に緊急事態または非常状況が発生した時に、公共利益を目的として初めて公開されたことを、出願人が出願日よりも前に知っていれば、出願時に願書で声明を行い、出願日から2か月以内に証明資料を提出しなければならない。出願人が出願日以降に状況を自ら知った場合、状況を知ってから2か月以内に新規性喪失の例外に関する猶予期間を要求する声明を提出し、かつ証明資料を付さなければならない(審査指南第1部第1章6.3.1)。
 国家に緊急事態または非常状況が発生した時に、公共利益を目的として公開される証明資料は、省級以上の人民政府の関連部門が発行しなければならない。また、証明資料中に、公共利益を目的として公開する事由、日付および当該発明の公開の日付、形式および内容を明記し、かつ公印を押捺しなければならない(審査指南第1部第1章6.3.1)。

 国家に緊急事態または非常状況が発生した時に、公共利益を目的として初めて公開される発明は、他者が知ってからそれを再度公開した場合、専利法第24条第1項第1号に記載の状況とみなされる(審査指南第2部第3章5.)※2

※2 この規定は、2023年の審査指南の改正によって追加された。インターネットおよび情報技術の発展に伴い、他者が発明の内容を知った後に再び公開される可能性が大幅に増加したことに対応し、再度の公開が新規性喪失例外の猶予期間を獲得できるか否かを明確にしたものである。

2-2. 中国政府が主催したまたは認める国際展覧会における初めての展示、または規定の学術会議または技術会議での初めての発表の場合
 出願される発明について、新規性喪失の例外を受けたい場合は、出願人は、出願時にその旨を声明し、かつ出願日から2か月以内に、発明が既に展示されたまたは発表された事実、および展示または発表の期日を証明する証明資料を提出しなければならない(実施細則第33条第3項、審査指南第1部第1章6.3.2、6.3.3)。

 国際展覧会の証明資料は、展覧会の主催機関または展覧会組織委員会が発行するものでなければならず(審査指南第1部第1章6.3.2)、また学術会議および技術会議の証明資料は、国務院の関連主管部門または会議を組織する全国的な学術団体が発行するものでなければならない(審査指南第1部第1章6.3.3) ※3

※3 2023年の実施細則の改正によって、第33条第3項では旧第30条における「国際博覧会または学術会議、技術会議の主催者が発行した」という証明資料についての要件が削除されたが、審査指南第1部第1章6.3.2、6.3.3において発行者が特定されているので注意が必要である。

2-3. 他人が出願人の同意を得ずに、その内容を漏洩した場合
 出願する発明について、出願日以前の6か月以内に、第三者が出願人の同意を得ずにその内容を漏らし、それを出願日前に出願人が知っていた場合で新規性喪失の例外適用を望む場合は、出願人は専利出願時に願書で声明し、出願日から2か月以内に証明資料を提出しなければならない。出願人が、第三者による漏洩の事実を出願日以降に知った場合は、事情を知ってから2か月以内に、新規性を喪失しない猶予期間を要求する声明を提出し、証明資料を添付しなければならない(審査指南第1部第1章6.3.4)。
 審査官は、必要であると判断した場合に、指定する期間内に証明資料を提出するよう、出願人に要求することができる(審査指南第1部第1章6.3.4)。
 出願人が専利局からの通知書を受け取って状況を知った場合、通知書で指定された応答期限内に、新規性喪失の例外に関する猶予期間の適用を受ける旨の意見書を提出し、かつ証明書類を付さなければならない(審査指南第1部第1章6.3.4)※4

※4 この規定は、2023年の審査指南の改正によって追加された。新規性喪失の例外適用を受けることができる時期が増え、出願人の合法的な権益をよりよく保護するための改正である。

 他者が出願人の同意なく発明の内容を漏洩し、第三者が当該方式で公開された発明を知ってからそれを再度公開した場合、専利法第24条第1項第4号に記載の状況とみなされる(審査指南第2部第3章5.)※5

※5 この規定は、2023年の審査指南の改正によって追加された。インターネットおよび情報技術の発展に伴い、他者が発明の内容を知った後に再び公開される可能性が大幅に増加したことに対応し、再度の公開が新規性喪失例外の猶予期間を獲得できるか否かを明確にしたものである。

3. 留意事項
 中国では、新規性喪失の例外に該当するケースは、日本と比べてかなり制限されている。日本出願を基礎とする優先権主張を伴って中国へ出願する場合、日本法では新規性喪失の例外に該当するにしても、必ずしも中国法で新規性喪失の例外に該当するとは限らない。中国で出願することを考えているが、出願前にどうしても発表等しなくてはならない事情がある場合は、そのような発表が中国において新規性喪失の例外に該当するか否かについて、まず、現地代理人等に確かめた方が良いと考えられる。しかし、中国では新規性喪失の例外に該当する学術会議または技術会議のリストが公表されていないため、現地代理人に確かめても、結論が出ない場合がある。このような状況に鑑み、将来中国出願の予定のある発明については、できるだけ新規性喪失の例外適用を考えず、開示は極力控えるべきである。

■ソース
・中国専利法(2020年改正)
(中国語)https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/cn/ip/law/pdf/regulation/regulation20210601.pdf
(日本語)https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/cn/ip/law/pdf/regulation/20210601_jp.pdf
・中国専利法実施細則(2023年12月11日改正)
(中国語)https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/cn/ip/law/pdf/origin/admin20240120_1.pdf
(日本語)https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/cn/ip/law/pdf/admin/20240120_1.pdf
・中国専利審査指南(2023年改正)
(中国語)https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/cn/ip/law/pdf/section/20240120_2.pdf
(日本語)https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/cn/ip/law/pdf/section/20240120_1.pdf
■本文書の作成者
日本国際知的財産保護協会
■本文書の作成時期

2024.07.22

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