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中国における意匠出願制度概要

2024年11月21日

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■概要
中国における意匠の出願手続は、主に、(1)出願、(2)方式審査、(3)登録・公告の手順で進められる。方式審査において、明らかに創作非容易性の要件に反する等の一定の実体的な登録要件の審査が行われるが、その他の要件については登録後の無効請求により対応する。意匠権の存続期間は、出願日から15年である。
■詳細及び留意点
図1 意匠の出願手続フローチャート(意匠の国際出願は除く)

1. 出願手続
(1) 出願
 出願書類は、願書、意匠の図面または写真、意匠の簡単な説明等が必要である(中国専利法(以下「専利法」という。)第27条第1項、専利法実施細則(以下「実施細則」という。)第30条第1項、同第31条第1項)。

 すべての書類は、中国語で提出する必要があり、中国語でない場合は不受理となる(実施細則第3条第1項、第44条第1項第2号)。外国語書面出願制度はない。

 パリ条約を利用した優先権主張は、外国で初めて出願した日から6か月以内にしなければならない(専利法第29条第1項)。また、国内優先権の主張を伴った出願も可能である(専利法第29条第2項)。この場合は、中国に最初に専利出願を提出した日から6か月以内に出願しなければならない。なお、2023年の実施細則の改正で、基礎出願が意匠の場合だけでなく、特許または実用新案の出願である場合も、図面に示された意匠と同一の主題について、国内優先権を主張して意匠出願できることが規定された(実施細則第35条第2項)。また、意匠出願を基礎として国内優先権を主張して意匠出願をしたときは、先の意匠出願は取下げられたとみなされるが、特許・実用新案出願を基礎にした場合は、先の特許・実用新案出願は取り下げられたものとはみなされない(実施細則第35条第2項)。

※ 意匠の国内優先権についての改正で、パリ優先権については、従来から、外国特許・実用新案・意匠出願を基礎に、パリ優先権を主張して中国に意匠出願をすることができたが(審査指南第1部第1章5.2.1.1)、国内優先権についても、意匠出願だけでなく、特許・実用新案出願を基礎にすることができることを明確にしたものである。

 部分意匠の出願が可能である(専利法第2条第4項)。2023年の実施細則、中国専利審査指南(以下「審査指南」という。)の改正により、部分意匠の図面、簡単な説明、物品名等の記載要件が規定された(実施細則第30条第2項、第31条第3項、審査指南第1部第3章4.4.1から4.4.3)。
 
 なお、日本と異なり秘密意匠制度はないが、遅延審査制度が存在する(実施細則第56条第2項)。出願と同時に遅延審査を請求することで、月単位で最大36か月審査を遅延させることができる(審査指南第5部第7章8.3)。

(2) 方式審査(中国語「初步审查(初歩審査)」)
 願書や添付書類などが所定の方式に適合しているか否か、および明らかに不登録事由に該当するか否かの審査が行われ、必要に応じ、指定期限内に意見の陳述または補正をするよう通知される(専利法第40条、実施細則第50条第1項第3号、第4号)。

 従来、方式審査において、明らかに新規性の規定に違反していないかの審査が行われていたが、2023年の実施細則の改正により、創作非容易性の規定(専利法第23条第2項)に関しても明らかに違反していないかの審査が行われることになった(実施細則第50条第1項第3号)。

 出願公開制度および審査請求制度はない。

 意匠出願が拒絶された場合には、出願人は、拒絶査定の通知受領日から3か月以内に国務院専利行政部門(中国語「国务院专利行政部门」)に対して、不服審判(中国語「复审(復審)」)を請求することができる(専利法第41条第1項)。

 国務院専利行政部門の不服審判の決定について不服がある場合、通知受領日から3か月以内に人民法院に提訴することができる(専利法第41条第2項)。

(3) 登録・公告
 審査の結果、出願を拒絶する理由が存在しない場合には、権利付与決定の後、意匠権(中国語「外观设计专利权(外観設計専利権)」)が付与され、その旨が公告される。意匠権は、公告日から有効となる(専利法第40条)。

 意匠の登録手続を行う際には、登録料、および専利権付与年の年金を、専利権付与通知と登録手続実行通知書に基づき、遅滞なく納付期限日までに納付しなければならない(実施細則第114条、審査指南第5部第8章1.2.3.1)。納付期限は、国務院専利行政部門が発行した専利権付与通知書と登記手続実行通知書を、出願人が受け取った日から起算して2か月以内である(審査指南第5部第2章1.(6))。

 意匠権の存続期間は、出願日から15年である(専利法第42条第1項)。なお、出願日は初日として算入する(審査指南第5部第7章2.1)。

2. 類似意匠(中国語「相似外观设计」)・組物(中国語「成套产品的外观设计」)の意匠
 原則として一意匠一出願であるが、同一製品における二つ以上の類似意匠、あるいは同一種類でかつセットで販売または使用する製品の二つ以上の意匠は、一件の出願として提出することができる(専利法第31条第2項、実施細則第40条)。なお、一件の意匠出願で最大10の類似意匠を出願できる(実施細則第40条第1項)。

3. グラフィカルユーザーインターフェースに係る物品の意匠
 出願人は、物品の全体意匠の方式または部分意匠の方式で、グラフィカルユーザーインターフェース(以下「GUI」という。)に係る物品の意匠出願を提出することができる(審査指南第1部第3章4.5)。また、GUIが適用される物品を含む方式による出願や、GUIが適用される物品を含まない方式による出願のいずれでも出願が可能である(審査指南第1部第3章4.5.2.1、4.5.2.2)。
 2023年の審査指南の改正により、GUIに係る物品の意匠出願についての図面、簡単な説明、物品名等の記載要件が規定された(審査指南第1部第3章4.5)。

4. 自発補正
 出願人は、出願日より2か月以内に、意匠出願を自発的に補正(中国語「修改」)することができる。出願書類の補正は、元の図面または写真で表示した範囲を超えてはならない(専利法第33条、実施細則第57条第2項)。

5. 評価報告書
 意匠権に関する侵害紛争において、人民法院または専利業務管理部門は、意匠権者、または利害関係者に対し、意匠権侵害紛争を審理し、処理するための証拠として、国務院専利行政部門が関連する意匠について検索、分析、評価を行ったうえで作成した専利権評価報告書を提出するよう要求することができる(専利法第66条第2項)。ここで、利害関係者とは、人民法院に侵害訴訟を提起する権利を有する原告、例えば、意匠権者、専用実施権者、および意匠権者から契約等により訴権を取得した通常実施権者をいう。
 2023年の実施細則の改正により、評価報告書の申請適格者、申請時期および国務院専利行政部門による発行期間について規定された(実施細則第62条第1項、第63条第1項)。

6. 意匠の国際出願
 国務院専利行政部門は、専利法第19条第2項および第3項の規定に基づき意匠の国際登録に関するハーグ協定(以下「ハーグ協定」という。)に基づく国際意匠出願を取り扱う。
 ハーグ協定にしたがって既に国際登録日が確定され、かつ中国を指定した国際意匠出願は、国務院専利行政部門に提出された意匠出願とみなされ、国際登録日が出願日とみなされる(実施細則第137条)。
 2023年の実施細則の改正により、中国を指定した国際意匠出願の手続の根拠、出願日の決定、審査の時期および通知、優先権の主張、新規性喪失の例外、分割出願の時期、簡単な説明のみなし提出、保護の付与および発効、権利変更の手続等が新たに規定された(実施細則第136条から第144条)。また、2023年の審査指南の改正により、新たに第6部が設けられ、意匠の国際出願の事務処理および審査が詳細に規定された(審査指南第6部)。

■ソース
・中国専利法(2020年改正)
(中国語)https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/cn/ip/law/pdf/regulation/regulation20210601.pdf
(日本語)https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/cn/ip/law/pdf/regulation/20210601_jp.pdf
・中国専利法実施細則(2023年12月11日改正)
(中国語)https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/cn/ip/law/pdf/origin/admin20240120_1.pdf
(日本語)https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/cn/ip/law/pdf/admin/20240120_1.pdf
・中国専利審査指南(2023年改正)
(中国語)https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/cn/ip/law/pdf/section/20240120_2.pdf
(日本語)https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/cn/ip/law/pdf/section/20240120_1.pdf
■本文書の作成者
日本国際知的財産保護協会
■本文書の作成時期

2024.07.02

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