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中国における特許出願の補正

2024年10月10日

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■概要
中国では、通常出願、パリルート出願、PCT出願において、明細書や図面などの特許出願書類に不備があった場合、以下のとおり、その出願の自発補正を行うことができる。また、補正命令を受けた場合には、その補正命令で指摘を受けた不備についてのみ補正を行うことができる。
■詳細及び留意点

(1)通常出願とパリルート出願の補正時期と補正できる内容
 特許(中国語「发明专利」)の通常出願とパリルート出願の補正時期・内容は、以下のとおりである。

補正時期補正できる内容留意点
(i)審査請求時(実施細則第57条第1項)1全ての出願書類について自発的に補正することができる。補正は、出願当初の明細書および特許請求の範囲に記載した範囲(中国語「原说明书和权利要求书记载的范围」)を超えてはならない(専利法第33条)。
(ii)国務院専利行政部門(中国語「国务院专利行政部门」)が発行した実体審査に入る旨の通知書(中国語「进入实质审查阶段通知书」)を受領してから3か月以内(実施細則第57条第1項)
(iii)国務院専利行政部門が発行した拒絶理由通知書(中国語「审查意见通知书」)に対して応答する時(実施細則第57条第3項)拒絶理由通知書で指摘された不備についてのみ補正することができる。
(iv)拒絶査定不服審判(中国語「专利复审」)を請求する時、または国務院専利行政部門の復審通知書(中国語「复审通知书」)2に回答する時(実施細則第66条)拒絶査定、または復審通知書で指摘された不備についてのみ補正することができる。
※1 出願と同時に審査請求をすると、(i)の自発補正の機会を失うことになる。
※2 復審請求(拒絶査定不服審判請求)が専利法および実施細則の関連規定に合致していない、または特許出願にその他の専利法および実施細則の関連規定に明らかに違反する状況が存在すると考えられる場合に、国務院専利行政部門が請求人に通知する書面(実施細則第67条第1項)。

(2) 特許協力条約(PCT)に基づく国際出願(以下「PCT出願」という。)の補正時期と補正できる内容
 PCT出願については、以下の時期・内容で補正することができる。

補正時期補正できる内容留意点
(i)中国国内段階移行手続を行う時(PCT第28条、第41条、実施細則第130条、審査指南第3部第1章5.7)全ての出願書類について自発的に補正することができる。補正は、PCT出願時明細書(図面を含む)および特許請求の範囲に記載した範囲を越えてはならない(専利法第33条)。 また、請求項の数が10項を超えた場合、出願手数料は国際公開公報に基づき計算されるので、中国国内移行手続きを行う際に請求項を削除しても、出願料を減らすことはできない。
(ii)審査請求時(実施細則第130条第2項による実施細則第57条第1項の適用)3
(iii)国務院専利行政部門が発行した実体審査に入る旨の通知書を受領してから3か月以内(実施細則第130条第2項による実施細則第57条第1項の適用)
(iv)拒絶理由通知書に応答する時(実施細則第57条第3項、審査指南第2部第8章1、5.2)4拒絶理由通知書で指摘された不備についてのみ補正を行うことができる。
(v)拒絶査定不服審判を請求する時、または国務院専利行政部門の復審通知書に回答する時(実施細則第66条)拒絶査定、または復審通知書で指摘された不備についてのみ補正することができる。
※3 国内移行と同時に審査請求を行う場合、(ii)の自発補正の機会を失うことになるので注意が必要である。
※4 審査指南第2部第8章1に「中国国家段階に移行した国際出願の実体審査について、本指南第三部分第二章『国家段階に移行した国際出願の実体審査』に具体的な規定がある場合、この章の規定を適用する。具体的な規定がない場合は、本章の規定を適用する。」と規定されているが、審査指南第3部第2章には移行したPCT出願の拒絶理由通知書応答時の補正についての規定がないので、審査指南第2部第8章の規定が適用される。審査指南第2部第8章5.2では、実施細則第57条第3項に基づき補拒絶理由通知書応答時の補正ができるとされている。

(3) PCT出願における中国語明細書および特許請求の範囲の誤訳訂正

補正時期補正できる内容留意点
(i)国務院専利行政部門による中国国内公開公報の公開準備作業が完了する前(実施細則第131条第1項第1号)自発的に補正(訂正)することができる。
当該補正にかかる官庁手数料:CNY300/回
(ii)国務院専利行政部門が発行した実体審査に入る旨の通知書を受領してから3か月以内(実施細則第131条第1項第2号)当該補正にかかる官庁手数料:CNY1,200/回
(iii)国務院専利行政部門が発行した翻訳文訂正通知書(中国語「通知书的要求改正译文」)に対して応答する時(実施細則第131条第3項)通知書で指摘された不備についてのみ補正(訂正)することができる。当該補正にかかる官庁手数料:方式審査段階ではCNY300/回、実体審査段階ではCNY1,200/回

(4) 留意事項
 出願が実体審査に入り、拒絶理由通知書が通知された場合、実施細則第57条第3項の規定によると、上記のとおり、出願書類の補正は拒絶理由通知書で指摘された不備についてのみに限定されることになる。ただし、実施細則第57条の運用については、個々の審査官に一定の裁量権が与えられており(専利審査指南第2部分第8章5.2.1.3)、規定を厳格に遵守することを要求されている印象はあまりなく、実務上、拒絶理由通知書を受けてから、再度その発明の特徴を検討し、引用文献および諸外国の審査状況を考慮した上で、特許請求の範囲の補正を行うことはよくある。

 期待どおりの権利取得ができるかどうかは実施細則第57条の運用実態によるため、審査官によってばらつきはあるが、特許請求の範囲の補正によって、審査官が従来技術を再び調査しなければならないような場合でない限り、その補正が拒絶理由通知書に指摘されていない内容であっても認められる可能性はある。したがって、拒絶理由通知書に応答する際、審査官に指摘されていない内容について補正する必要があれば、自発的に補正を行ってみる価値はあると思われる。

 なお、上記表の留意点欄に記載されている、専利法第33条のいわゆる新規事項の追加の禁止について、専利審査指南第2部分第8章5.2.1.1によれば、「明細書および特許請求の範囲に記載された範囲は、明細書および特許請求の範囲の文字どおりに記載された内容と、明細書および特許請求の範囲の文字どおり記載された内容および明細書に添付された図面から直接的に、疑う余地もなく確定できる内容を含む。」とされており、「明示的記載+自明事項」が新たな技術的事項を導入しないものとして認める日本の運用に比べて、かなり厳しいため、注意を要する。

■ソース
・中国専利法(2020年改正)
(中国語)https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/cn/ip/law/pdf/regulation/regulation20210601.pdf
(日本語)https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/cn/ip/law/pdf/regulation/20210601_jp.pdf
・中国専利法実施細則(2023年12月11日改正)
(中国語)https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/cn/ip/law/pdf/origin/admin20240120_1.pdf
(日本語)https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/cn/ip/law/pdf/admin/20240120_1.pdf
・中国専利審査指南(2023年改正)
(中国語)https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/cn/ip/law/pdf/section/20240120_2.pdf
(日本語)https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/cn/ip/law/pdf/section/20240120_1.pdf
・国務院専利行政部門ウェブサイト 専利および集積回路設計に関する支払手続ガイド(料金表)
(中国語)https://www.cnipa.gov.cn/module/download/down.jsp?i_ID=171803&colID=1518
※ 日本からの中国のサイトへのアクセスは、通信状況により接続に時間がかかるか、または接続できない場合があるので注意されたい。
・特許協力条約(PCT)
(日本語)https://www.wipo.int/export/sites/www/pct/ja/docs/texts/pct.pdf
■本文書の作成者
日本国際知的財産保護協会
■協力
北京林達劉知識産権代理事務所
■本文書の作成時期

2024.06.11

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