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中国における特許・実用新案・意匠年金制度の概要
2024年09月26日
■概要
中国における専利権(特許権、実用新案権、意匠権)のうち、特許権の権利期間は、出願日(PCT条約に基づく特許出願の場合は国際出願日)から20年である。特許権が付与された初年度の年金は、登録手続を行うと同時に納付しなければならない。次年度以降の各年の年金は、前年度の満了前に納付しなければならず、納付期限は各年の出願日に対応する日となる。実用新案権および意匠権の年金制度は、いずれも権利期間を除き特許権とほぼ同様である。実用新案権の権利期間は、出願日(PCT条約に基づく特許出願の場合は国際出願日)から10年であり、意匠権の権利期間は、出願日から15年である。■詳細及び留意点
1. 特許権
1-1. 存続期間
中国における特許権の権利期間は、出願日(PCT条約に基づく特許出願の場合は国際特許出願日)から20年(専利法第42条第1項、専利審査指南(以下「審査指南」という。)第5部第9章4.1)である。
1-2. 年金の納付期限
最初の年金の支払い義務は、特許権の設定登録時に発生し、特許が付与された年度の年金を納付する(専利法実施細則(以下「実施細則」)という。)第114条)。ここで、年度とは、出願日を基準とした年度をいう(審査指南第5部第9章4.2.1.1)。従って、例えば、4年度に特許が付与されたとした場合、登録時に第4年度の金額の年金を納付すれば、第1年度から第3年度は出願後、審査係属中であったので、この期間の維持年金の支払いは必要ない。
最初の年金は、国家知識産権局が設定する期限内(専利権付与通知書および登録手続実行通知書の受領日から2か月以内)(審査指南第5部第2章1.(6))に登録手続において納付しなければならず、登録手続を行う時に登録手続通知書の要求に従って権利付与年の年金を納付しなければならない。期限までに登録手続が行われた場合、特許証書が発行されると同時に登録、公告が行われ、公告日から特許権の効力が生じる(審査指南第5部第9章1.1.2から1.1.4)。
2回目以降の年金は、前年度の満了前に納付しなければならず(実施細則第115条、審査指南第5部第9章4.2.1)、納付期限は各年の出願日に対応する日となる(審査指南第5部第9章4.2.1、4.2.1.1、4.2.1.2)※1。
※1 納付期限については、前年度の最終日ではなく、その翌日(各年の出願日に対応する日・各年度の初日)となる旨が、審査指南において、以下のように説明されている。
「出願日から起算される専利年度は、優先日や権利付与日に関係なく、暦年とも必然的な関連性はない。例えば、ある専利出願の出願日が1999年6月1日である場合、当該専利出願の第1年度は 1999年6月1日から 2000年5月31日であり、第2年度は2000年6月1 日から 2001年5月31日になる(審査指南第5部第9章4.2.1.1)。
(中略)例えば、 ある専利出願の出願日が1997年6月3日である場合、当該専利出願が2001年8月1日に専利権付与され(専利権の権利付与公告日)、そして出願人が登録手続を行う際に、すでに第5年度(2001年6月3日から2002年6月2日)の年金を納付していれば、当該専利権者は遅くとも2002年6月3日までに第6年度(2002年6月3日から2003年6月2日)の年金を納付しなければならない(審査指南第5部第9章4.2.1.2、一部追記)。」
年金の金額は、年度が上がるに従って増額する(専利および集積回路設計に関する支払手続ガイド 付録2)※2。中国に常駐住所または営業場所を持たない外国人、外国企業、またはその他外国組織が年金納付する場合、法に基づき設立された専利代理機関に委託して処理する必要がある(専利法第18条第1項)。
※2 各年度の年金額は、下記の関連記事を参照されたい。
【関連記事】「中国における専利(特許、実用新案、意匠)出願関連の料金表」(2022.11.17)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/27104/
1-3. 納付期限を徒過した場合(追納制度)
登録後、年金納付期限日までに年金納付がされない場合や納付金額に不足がある場合、国家知識産権局より、その旨を知らせる通知が発行される。どちらの場合でも、納付期限日から6か月以内であれば追納が可能である(実施細則第115条)。追納期間中は、所定の年金金額や不足分の金額に加えて、追徴金も同時に納付する必要がある。追徴金は、納付期限日から時間が経過するに従って増額する(審査指南第5部第9章4.2.1.3)。6か月の追納期間を超えて年金納付がされない場合や、追徴金の納付漏れがあった場合、権利は納付すべき期間の最終日から失効とされ、国家知識産権局から権利喪失確認通知が発行される(審査指南第5部第9章4.2.2)。
1-4. 権利回復制度
追納期間内に年金納付がなされず権利失効となった場合でも、権利喪失確認通知書の受領日から2か月以内であれば、権利の回復が可能である。権利回復の際には、当初の年金と追徴金に加え、回復費用も納付する必要がある(実施細則第6条、審査指南第5部第2章1.(4)、第9章4.2.1.3)。
上記のとおり、追納期間を超えて年金納付がされなかった場合、特許権は年金を納付すべき期限の満了日に終了する(審査指南第5部第9章4.2.2)が、権利を放棄したい旨を記した宣誓書を国家知識産権局に提出することにより積極的に放棄する手続もある(専利審査指南第5部第9章4.3)。
1-5. 年金の誤納
意図しない特許権に対して誤って年金を納付した場合、または所定の納付金額を超えて納付した場合などは、国家知識産権局に返還請求をすることができる(実施細則第111条)。
1-6. その他
1-1.「存続期間」に関連して、中国には日本の「特許権の存続期間の延長」に相当する制度として「特許期間の補償」がある。
発明専利(特許)の出願日から4年、かつ実体審査請求日から3年経過後に発明専利が付与された場合、国家知識産権局は、専利権者の請求に応じて、発明専利の権利付与過程における不合理な遅延について特許権の期間に補償を与える。ただし、出願人に起因する不合理な遅延は除外する(専利法第42条第2項)。
なお、2023年の実施細則と審査指南の改正により、特許権の期間補償の請求期限、補償期間の計算方式、合理的な遅延、および出願人に起因する不合理な遅延に該当する場合などが規定された(実施細則第77条から第79条、第84条、審査指南第5部第9章2.1から2.4)。
また、中国で発売許可を得られた新薬に関連する発明専利(特許)について、新薬の発売承認審査にかかった時間を補償するため、国家知識産権局は、特許権者の請求に応じて、特許権の存続期間について補償を与える。補償の期間は5年を超えず、新薬発売承認後の専利権の合計存続期間が14年を超えないものとする(専利法第42条第3項)。
なお、2023年の実施細則と審査指南の改正により、新薬に関連する発明専利の定義、医薬品専利権期限の補償を請求できる条件と期限、補償期間の計算方式、補償期間における特許権の保護範囲などが規定された(実施細則第80条から第84条、審査指南第5部第9章3.1から3.8)。
2. 実用新案権
2-1. 存続期間
中国における実用新案権の権利期間は、出願日(PCT条約に基づく実用新案登録出願の場合は国際実用新案登録出願日)から10年である(専利法第42条第1項)。
2-2. 年金の納付期限
実用新案の年金制度は、権利期間を除き特許とほぼ同様である。最初の年金の支払い義務は、実用新案権の設定登録時に発生し、実用新案が付与された年度の年金を納付する(実施細則第114条)。出願日を基準とする年度の考え方は特許と同じである。
最初の年金は、国家知識産権局による専利権付与通知と登録手続実行通知書に基づき遅滞なく納付期限日までに納付しなければならない(審査指南第5部第8章1.2.2.1)。
2回目以降の年金は、特許と同様で、前年度の満了前に納付しなければならず(実施細則第115条、審査指南第5部第9章4.2.1)、納付期限は各年の出願日に対応する日となる(審査指南第5部第9章4.2.1、4.2.1.1、4.2.1.2)。
年金は、年度が上がるに従って増額し(専利および集積回路設計に関する支払手続ガイド 付録2)、中国に常駐住所または営業場所を持たない外国人、外国企業、またはその他外国組織が年金納付する場合、法に基づき設立された専利代理機関に委託して処理する必要がある(専利法第18条第1項)。
2-3. 納付期限を徒過した場合(追納制度)
年金の追納制度は、特許と同じである(実施細則第115条、審査指南第5部第9章4.2.1.3)。
2-4. 権利回復制度
追納期間を徒過した場合の権利回復制度は、特許と同じである(実施細則第6条、審査指南第5部第2章1.(4)、第9章4.2.1.3)。
2-5. 年金の誤納
年金の誤納返還に関する制度も特許と同じである(実施細則第111条)。
3. 意匠権
3-1. 存続期間
中国における意匠権の権利期間は、出願日から15年である(専利法第42条第1項)。
3-2. 年金の納付期限
意匠の年金制度は、特許のそれとほぼ同様である。最初の年金の支払い義務は、意匠権の設定登録時に発生し、意匠が付与された年度の年金を納付する(実施細則第114条)。出願日を基準とする年度の考え方は特許と同じである。
最初の年金は、国家知識産権局による専利権付与通知と登録手続実行通知書に基づき遅滞なく納付期限日までに納付しなければならない(審査指南第5部第8章1.2.3.1)。
2回目以降の年金は、特許と同様に、前年度の満了前に納付しなければならず(実施細則第115条、審査指南第5部第9章4.2.1)、納付期限は各年の出願日に対応する日となる(審査指南第5部第9章4.2.1、4.2.1.1、4.2.1.2)。
年金は、年度が上がるに従って増額し(専利および集積回路設計に関する支払手続ガイド 付録2)、中国に常駐住所または営業場所を持たない外国人、外国企業、またはその他外国組織が年金納付する場合、法に基づき設立された専利代理機関に委託して処理する必要がある(専利法第18条第1項)。
3-3. 納付期限を徒過した場合(追納制度)
年金の追納制度は、特許と同じである(実施細則第115条、審査指南第5部第9章4.2.1.3)。
3-4. 権利回復制度
追納期間を徒過した場合の権利回復制度は、特許と同じである(実施細則第6条、審査指南第5部第2章1.(4)、第9章4.2.1.3)。
3-5. 年金の誤納
年金の誤納返還に関する制度も特許と同じである(実施細則第111条)。
■ソース
・中国専利法(2020年改正)(中国語)https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/cn/ip/law/pdf/regulation/regulation20210601.pdf
(日本語)https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/cn/ip/law/pdf/regulation/20210601_jp.pdf
・中国専利法実施細則(2023年12月11日改正)
(中国語)https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/cn/ip/law/pdf/origin/admin20240120_1.pdf
(日本語)https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/cn/ip/law/pdf/admin/20240120_1.pdf
・中国専利審査指南(2023年改正)
(中国語)https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/cn/ip/law/pdf/section/20240120_2.pdf
(日本語)https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/cn/ip/law/pdf/section/20240120_1.pdf
・国務院専利行政部門ウェブサイト 専利および集積回路設計に関する支払手続ガイド(料金表)
(中国語)https://www.cnipa.gov.cn/module/download/down.jsp?i_ID=171803&colID=1518
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■本文書の作成者
日本国際知的財産保護協会■本文書の作成時期
2024.06.17