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タイにおける商標出願に際しての指定商品および役務の書き方

2024年02月13日

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■概要
タイは、2023年3月1日付にてニース協定に基づく国際分類第12版を採用した。タイにおいては、出願申請書類に記載する指定商品・指定役務(サービス)について、日本に比べてより明確かつ具体的な記載が求められる場合も多い。タイの商標登録官から認められる可能性が高まる指定商品・指定役務(サービス)の書き方について解説する。また、2016年7月28日に施行された改正法により、一出願多区分制が導入されている。
■詳細及び留意点

タイは、ニース協定に加盟していないものの、タイの商標審査基準第3部の商標法第13条解説の末尾では、商品・役務を国際分類(ニース分類)にしたがって記載する旨が示されており、2023年3月1日から国際分類第12版を採用している。第12版には、34の商品分類(第1類から第34類)と11の役務(サービス)分類(第35類から第45類)が定められている。商標登録を求める出願人は、一般的にこの分類にしたがい指定商品・指定役務を記載するが、タイにおいては、日本に比べてより明確かつ具体的な記述を求められる場合がある。タイでの商標出願において、商標登録官に認められる可能性を高めるための指定商品・指定役務(サービス)の書き方について解説する。

指定商品・指定役務(サービス)の記載
 タイ商標法第9条に基づき、商標登録出願は、特定の商品を指定して行うことができる。なお、2016年7月28日施行の改正法により、「An application may not cover goods of different classes.」の条項が削除されたため、複数区分の指定商品または役務をまとめて1件の出願にするか(一出願多区分)、または、区分ごとに複数出願するかを選択できるようになった。

 ただし、2023年現在の実務においては、出願後に区分毎に出願を分割することは認められておらず、複数区分を含む出願が一部の区分に対し拒絶を受けた場合、拒絶を受けなかった区分の登録手続を先に進めることができない。このため、出願を選択する際には、注意が必要である。

 タイ商標法第9条では、「商標登録出願は、1分類または異なる分類の何れかにおいて特定の商品に関してできるが、保護を求める各々の商品を明確に特定しなければならない。商品分類は、大臣の告示により、これを定める。」と定められている。

 多くの出願人は、商標出願に際して、広範な表現を用いてその指定商品・指定役務(サービス)を特定することにより、可能な限り広範な保護を受けることを望んでおり、事業および商品の将来的な拡大や展開に備えようとする。しかしながら、タイの商標登録官は、商標分類見出し(クラス・ヘッディング)やサブクラス見出し(サブクラス・ヘッディング)などの広範な記述を認めないため、指定商品・指定役務(サービス)を細かく指定しなければならない。

 一方、過度に詳細な記述は、指定した商品が他の分類に属することがあり、指定商品を削除しなければならなくなる要因ともなり得る。さらに、出願人は、下記のような記載を避ける必要がある。

 例:「を含む(including)」、「特に(especially)」、「それの(thereof)」、「例えば(for example)」、「などの(such as)」

 手数料は、指定商品・役務5区分までの場合は1区分あたり1,000バーツ、6区分以上の場合は1区分あたり9,000バーツを納付する必要があり、実務上、願書に通し番号を付して指定商品・指定役務を記載することが一般的である。

指定商品・役務の数に関する補正
 近年、タイの商標登録官は、補正する指定商品が出願時に記載した広範な記述の範囲内であっても、出願時の指定商品・指定役務の数が増える補正を拒絶している。このことを念頭に置き、出願人は、商標出願を行う際に、指定商品・指定役務を詳細に記載しておく必要がある。

不適切な記載と適切な記載例

 以下に、指定商品・指定役務の記載に関する不適切な例と適切な例を紹介する。

・第1類:「化学品」および「工業用化学品」という記述は不適切であるため、出願人は、例えば、「化粧品産業用化学物質」、「化学産業用化学物質」のように、より詳細に商品を記載しなければならない。この分類には、医療用化学品が含まれないため、「医療用または獣医科用以外の」という記述は使用することができる(例えば、「医療用または獣医科用以外の実験室における分析用の化学薬剤」)。

・第3類:「化粧品」、「メークアップ」、「香水類」という記述は不適切であり、より具体的に記載する必要がある。従来は、「目、唇、頬および頭髪に使用する化粧品」という記述は適切であると見なされていたが、現在では認められない。ただし、「フェイシャルメークアップキット」、「フェイシャルスキンケア用化粧品キット」および「ボディスキンケア用化粧品キット」という記述は認められる。「香水類」に代えて、出願人は、「香水」、「オーデコロン」、「オードトワレ」を使用することができる。

・第5類:出願人は、指定商品の記述が不明確であり、他の分類に属する可能性がある商品を本類にて特定するために「医療用」という記述を使用することができる。例えば、「医療用栄養添加物」、「医療用栄養補助食品」、「医療用食餌療法飲料」等の記載が認められる。

・第7類:出願人は、不明確な指定商品を特定するために「機械」または「機械の部品」という記述を使用することができる。例えば、「ボール盤(機械)」、「電動カッター(機械)」、「コーキングガン(機械の部品)」、「エアスプレーガン(機械の部品)」、「バルブ(機械の部品)」、「クランクケース(機械の部品)」等の記載が認められる。

・第10類:他の分類に属する可能性がある商品を本類にて特定するために、出願人は、「医療用」という記述を加えることができる。例えば、「医療用X線装置」、「医療用X線写真」、「医療用X線チューブ」、「医療用X線保護装置」等の記載が認められる。

・第25類:「ズボン(pants)」および「靴」という語は不適切な記載となる。「ズボン」という語は、「ズボン(スポーツ用ズボンおよびズボン下は除く)」、「スポーツ用ズボン」、「ズボン下」等と明記しなければならない。同様に、「靴」は、「靴(スポーツ靴を除く)」または「スポーツ靴」等に分けなければならない。
・第28類:「玩具」という語は不適切な記載となるが、「プラスチック製玩具」、「ゴム製玩具」、「金属製玩具」および「紙製玩具」という語は認められる。

・第35類:「小売業」という記述は不適切となる。このサービスについて広範な保護を求める出願人に対しては、「小売業向け事業管理支援」等の記述が推奨される。

商標登録官へのアプローチ

 国際分類表に記載されている指定商品・指定役務は、認められる場合が多いが、国際分類表に記載されている指定商品・指定役務でもタイの商標登録官に認められない場合もしばしば見られる。例示されていない指定商品・指定役務については、認められる可能性が低い。
 現地代理人を経由して、タイの商標登録官に出願前に面談するアプローチは有用である。事前面談での商標登録官とのやり取りの経験は、登録官が認める記載要件を理解する上で重要である。しかしながら、明確な運用指針で定められている訳では無く、事前面談に法的拘束力もないことから、事前面談の結果に基づく商品が認められない可能性も理解しておかなければならない。また、過去に登録した商品が後に認められない場合もある。したがって、商標登録官とのやり取りについては、予想できない展開もあるが、現行のプラクティスを十分に理解して、方策を講じることが重要である。

■ソース
・タイ商標法(日本語)
https://www.jpo.go.jp/system/laws/gaikoku/document/mokuji/thailand-shouhyou.pdf ・タイ商標審査基準(2016年版、日本語)
https://www.jpo.go.jp/system/laws/gaikoku/document/mokuji/thailand-shouhyou_kijun.pdf ・商品・役務(サービス)の国際分類第12版
https://www.wipo.int/classifications/nice/nclpub/en/fr/pdf-download.pdf?lang=en&tab=class_headings&dateInForce=20230101
■本文書の作成者
日本国際知的財産保護協会
■協力
TNY Legal Co., Ltd.
■本文書の作成時期

2023.11.15

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