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台湾における商品・役務の類否判断について(後編)

2023年12月12日

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■概要
商標における商品・役務の類否判断に関する事項について、台湾の審査基準に基づいて、日本の実務者はどのように理解すべきかを前・後編に分けて解説する。
(前編:(https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/37840/))
■詳細及び留意点

(前編から続く)

4.役務間の類否について
(1) 役務間の類否判断における考え方

 役務間の類否判断も、商品の類否判断と同様、前述のとおり、基本的に「商品・役務分類及び相互検索参考資料」に開示されている同じ類似群(類似群コード前4桁が同一)に属するものと、相互検索すべき類似群に属するものであるか否か、をもって行われている。その具体的な判断原則については、台湾における役務の類否判断に関し、「誤認混同のおそれに関する審査基準」5.3.9には、「役務の性質、内容又は提供者などの要素に関する判断原則」が示されている。
 役務の性質、内容は、他人へ提供する労務または活動の類型により異なる。例えば、「タクシーによる輸送」と「バスによる輸送」はいずれも乗物による運輸役務を提供するほか、性質も同じであるため、類似関係を有すると認定される。
 役務の目的は、消費者の特定の需要を満たすことである。その需要の類似性、または代替性が高くなれば、それだけ役務間の類似程度も高くなる。例えば、「英語専門の塾」と「数学・理科専門の塾」、「民宿における宿泊施設の提供」と「ホテルにおける宿泊施設の提供」は、類似役務に該当する。
 さらに、通常、両役務が同一の業者によって提供される場合、類似関係があると認められる可能性は高い。例えば、「指圧マッサージ」と「サウナ」がその例である。

(2) 小売役務について
 台湾では、役務名として「小売(retail services or wholesale services)」のみを指定することは認められない。
 「商品・役務分類及び相互検索参考資料」では、「総合的小売」および「特定商品の小売」に分けて、それぞれ具体的に列挙して指定する必要がある、と明記されている。「総合的小売」の具体的な例としては、デパート、インターネットショッピング、スーパーマーケット等が挙げられる。
 台湾では、「小売」の代わりに、特定商品の小売を指定しなければならないので、総合的小売の「デパート」と、特定商品の小売としての「被服の小売」とが類似を構成するか否かは、審査基準に関連規定はないが、審査実務上、原則的に類似しないとされている。一般の社会通念および市場取引状況に基づき、役務の受取人(消費者)に、その商品が同一、または同一ではないが出所に関連があると誤認されやすい場合、例外的に類似関係を有すると認められる。一方、「特定商品の小売」と「特定商品」とが類似するか否かは、下記5.を参照願いたい。
 また、当該登録商標を使用していない商品に関し、不使用取消とされる可能性があるか否かについては、台湾商標法第63条第2項により、商標が登録された後に、正当な事由なくそれを使用せず、またはその使用を停止して既に3年を経過したとき、商標主務官庁は職権または請求により、その登録を取り消すことができる。即ち、特定商品を指定して登録を受けても、登録後3年以上の不使用という事実がある場合、当該商品における登録が取り消されるリスクがある。

(3) 役務名を指定する際の留意事項について
 実務上、よく日本の実務者が「電子出版物の提供」のような名称を第41類で指定するが、それは日本で認められる表記であって、台湾では認められない。台湾では、役務として「(第41類)電子出版物のオンライン閲覧(ダウンロードできない)」を指定するか、または商品として「(第9類)ダウンロードできる電子出版物」を指定する必要がある。
 商標登録出願の政府手数料は、役務の場合、第35類を除くその他の区分(第36類~第45類)は、区分ごとにNT$3,000であるが、第35類の「特定商品の小売・卸売り」を指定した場合、5個以内はNT$3,000で、5個を超えた場合、1個ごとに政府手数料NT$500の割増料金を納付する必要がある。第35類では、「特定商品の小売・卸売り」以外の役務を指定する場合、個数を問わず一律NT$3,000となる。

5.商品・役務間の類否について
(1) 商品・役務間の類否判断における考え方

 台湾における商品・役務間の類否判断に関しても、基本的に「商品・役務分類及び相互検索参考資料」に開示されている相互検索すべき類似群に属するものであるか否かをもって行われている。具体的な判断原則について、「誤認混同のおそれに関する審査基準」5.3.10には、①通常、商品の製造・販売と役務の提供が同一の事業者によって行われるか、②商品と役務の効能又は使用目的が一致するかどうか、③商品の販売場所と役務の提供場所が同一であるかどうか、および④商品と役務の消費者層の範囲が重なるかどうか、などの要素を総合的に考慮して判断する、と示されている。
 同審査基準では、以下の具体例が挙げられている。

① 第9類の「コンピュータハードウエア;コンピュータソフトウエア」商品と第42類の「コンピュータプログラミング;コンピュータデータ処理」役務は、類似関係を有する。
 商品と役務の間には、効能上、相互補完関係が存在し、また、同じ情報技術分野に属すものであるので、性質・消費者層および販売ルートなどの要素において共通・関連しているので、類似関係を有すると認める。

② 第25類の「被服」商品と第35類の「被服の小売」役務は、類似関係を有する。
 役務の目的が、特定商品の販売を提供する場合、両者は類似関係を有すると認められている。
 「被服の小売」の目的は、「被服」の販売を提供することで、また、通常、商品の販売場所と役務の提供場所が同一であるほか、消費者層も同様であるため、類似関係を有すると認める。

 台湾では、「『特定商品の小売り及び卸売り』および『当該特定商品』間の類似検索関係の参考表(「特定商品零售批發服務」與該「特定商品」間類似檢索關係參考表)」という参考資料があり、そこには、「一般社会通念及び取引の状況に照らして、役務又は商品の出所が同一である、または同一ではないが関連性があると誤認を生じやすい場合は、類似関係を有する、という一般的な原則が定められている。「被服」と「被服の小売」のほか、例えば、「飲料」と「コーヒー飲料の小売」、「薬剤」と「人用薬品の小売」も類似関係を有すると認められている。
 一方、同審査基準では、「総合的小売」(デパート、インターネットショッピングなど)と、「特定商品」の間に類似関係を有するか否かについて、明確な規定がない。知的財産及び商業裁判所110年行商更(一)字第4号行政判決では、「インターネットショッピング」と「電気製品」とが非類似と認められた。その理由は、前者がインターネットを販売ルートとして、商品の小売を行い、ウェブサイトを通じて商品情報を提供し、インターネット上で注文を受けた後、顧客に商品を届ける、という一体性がある役務であり、これは後者の特定商品と性質が異なり、また、前者は取り扱う商品の範囲がかなり広く具体的に限定されず、消費者が、両者の出所が同一である、または同一ではないが関連性があると誤認することが予想できないからである、とされた。

■ソース
・台湾商標法
https://chizai.tw/wp-content/uploads/2023/06/商標法(2016年12月15日施行)-.pdf
・誤認混同のおそれに関する審査基準(混淆誤認之虞審查基準)
https://topic.tipo.gov.tw/trademarks-tw/dl-280016-cfbd6f2d0de04a86b65a061645abc68d.html(中国語)
https://chizai.tw/wp-content/uploads/2022/12/商標誤認混同のおそれ審査基準(2021年10月27日発効).pdf(日本語)
・商品・役務分類及び相互検索参考資料(商品及服務分類暨相互檢索参考資料)
https://topic.tipo.gov.tw/trademarks-tw/lp-653-201-1-20.html
・商標登録出願の方式審査基準(商標註冊申請案件程序審查基準)
https://topic.tipo.gov.tw/trademarks-tw/cp-517-860269-77cd7-201.html
・商品と特定商品の小売・卸売りの個数計算原則及び例示(商品及特定商品零售服務個數計算原則及例示)
https://topic.tipo.gov.tw/trademarks-tw/dl-261094-e93dc92b8e674ca5894f489e40786aed.html
・「特定商品の小売り及び卸売」及び「当該特定商品」間の類似檢索關係の參考表(「特定商品零售批發服務」與該「特定商品」間類似檢索關係參考表)
https://topic.tipo.gov.tw/trademarks-tw/dl-261090-6f956f1c0417461fa9dd8854b18bef8f.html
・知的財産及び商業裁判所110年行商更(一)字第4号行政判決(智慧財產及商業法院110年度行商更(一)字第4號行政判決)
https://topic.tipo.gov.tw/trademarks-tw/cp-563-903919-15027-201.html
■本文書の作成者
理律法律事務所
■協力
日本国際知的財産保護協会
■本文書の作成時期

2023.09.07

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