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メキシコにおける特許の分割出願についての留意点

2023年11月09日

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■概要
従来のメキシコ産業財産法(以下「産業財産法」という。)には特許の分割出願に関する詳細な規定はなったが、2020年11月5日施行の改正産業財産法において新たな規定が設けられ、分割出願に係る発明の要件や分割出願することができる時期等について明文で定められた。改正法を中心に、分割出願の方式的要件、実体的要件等について紹介する。
■詳細及び留意点

1.分割出願についての基本的な要件
 2020年11月5日施行の改正産業財産法では、特許の分割出願について、その基本的な要件が第100条に定められている。

メキシコ産業財産法 第100条
自発的又は本庁の要請により分割出願を行う場合、出願人は以下の要件を充足しなければならない。
(1) 各出願に必要な、明細書、クレーム及び図面を提出する。ただし、原出願にすでに含まれている優先権主張に関する書類とその翻訳文、および、該当する場合は、権利の譲渡書ならびに代理人委任状は省略できる。
提出された図面及び明細書において、原出願で意図された発明を修正するような変更をしてはならない。
(2) 分割出願においては、追加の発明主題や最初に提出された範囲を超えた発明主題を含むことなく、原出願とは異なる発明をクレームしなければならない。
分割出願においてクレームされず、原出願にも分割出願にも含まれなくなった発明又はそのような一群の発明は、原出願又は当該分割出願において再びクレームすることはできない。
(3) 分割出願は、本法第111条に定める期間内、または自発的な分割の場合は本法第102条に定める期間内に提出しなければならない。
本法第113条の期間内において、本庁の意見で分割出願が適切であると認められるか、または出願人が要求するかのいずれかでない限り、分割出願に基づいて分割出願をすることはできない。
本法第105条に基づいて出願日とみなされる原出願日の利益は、分割出願が本条に定められた要件を充足しない場合には享受することができない。

※引用条文にいう「本庁」とは、「メキシコ産業財産庁」のことである。

 産業財産法第100条の分割要件を満たしていない場合は、産業財産法第105条の出願日の認定要件を満たして認められた原出願の出願日の利益を享受できないことになるので、注意が必要である。

2.分割出願の方式要件
 分割出願では、明細書、クレームおよび図面を提出する必要がある(産業財産法第100条(1))。ここで、明細書および図面において、原出願で意図された発明を修正するような変更をしてはならないことに留意しなければならない。
 原出願にすでに含まれている優先権主張に関する書類とその翻訳文、権利の譲渡書ならびに代理人委任状は省略できる(産業財産法第100条(1))。
 また、通常の出願において必要とされる要約(産業財産法第106条(6)(c))は、分割出願では必須ではないものと解される。

3.分割出願の時期的要件
3-1.自発的に提出される分割出願

 従来から、特許出願の手続中および特許の付与まで、いつでも自発的な分割出願を提出できたものの、その明文規定がなかったところ、改正により自発的な分割出願が可能であること、および提出期限が明確に規定された(産業財産法第100条(3)、第102条)。

メキシコ産業財産法 第102条
出願人は、本法第100条の規定に従い、必要に応じて、優先権主張して原出願日を各分割出願の出願日として、係属中の原出願を自発的に分割することができる。
前項の目的のために、原出願が不受理、拒絶、放棄又は取下の査定発行前、若しくは、特許協力条約に基づく国際出願の取下とみなされる前、までは原出願は係属中であるとみなす。
出願人は、特許査定又は登録査定を通知された場合でも、本法第110条に規定されている2月以内に原出願を自主的に分割することができる。

 出願人は、原出願が係属中は分割出願することができ、特許査定や登録処理が通知された場合でも、特許許可の通知から2か月以内であれば分割することができる。この2か月は、産業財産法第110条に規定されている、登録のために公報発行の料金および初年度の年金の支払証明を提出することができる期間である。

3-2.単一性欠如の拒絶に対する応答時に提出される分割出願
 改正前の産業財産法第44条には、出願が発明の単一性を満たしていない場合に、分割出願の通知が出願人になされる旨が規定されていたが、改正された産業財産法では、当該規定は第113条に規定されている。

メキシコ産業財産法 第113条
本法第111条記載の拒絶理由が、発明の単一性要件を満たさない場合、本庁はクレームの第1クレーム記載の発明のみを主発明とみなし、それから、本法で定められた他の要件の充足性を評価する。
この場合、本庁は出願人に主発明のクレームに限定することを要求し、必要があれば、本法第111条に記載の期限内に対応する分割出願を要求する。
分割出願は、本法に定められた要件に準拠している場合、当初の出願日及び必要な場合には適切な優先権主張日を保持する。

 産業財産法第111条に記載の期限とは、いわゆる拒絶理由通知の応答期限のことである。実体審査の結果、請求された特許の付与に対する拒絶理由が発見された場合、メキシコ産業財産庁は出願人に対して、2か月の期間内に応答することを要求することができる(産業財産法第111条)。

メキシコ産業財産法 第111条
実体審査の結果、請求された特許の付与に対する拒絶理由が発見された場合、本庁はその権限により、出願人に対して、2月の期間内に、応答すること、情報又は書類を提示することを要求することができ、必要な場合には、該当する補正箇所を示して補正することを要求することができる。(以下省略)

 また、産業財産法第113条に規定される単一性違反の拒絶理由通知を受けた場合にのみ、分割出願からさらに分割出願をすることが可能になった点に注意する必要がある(産業財産法第100条(3))。これは、分割出願を親出願とする分割は、自発的には行うことができなくなったことを意味し、分割出願の実務における大きな変更点の一つである。

4.分割出願のクレームに関する要件
 従来から、分割出願は、原出願にて開示された事項のみを含むものでなければならず、さらに、分割出願でクレームされる発明は親出願でクレームされる発明とは異なるものでなければならないとされていた。この点が改正法では明確にされ、分割出願においては、追加の発明主題や最初に提出された範囲を超えた発明主題を含むことなく、原出願とは異なる発明をクレームしなければならないとされた(産業財産法第100条(2))。

 さらに、分割出願のクレームに関する実務における留意点は、分割出願においてクレームされず、原出願にも分割出願にも含まれなくなった発明またはそのような一群の発明は、原出願または当該分割出願において再びクレームすることはできないと条文に明記されたことである(産業財産法第100条(2))。したがって、例えば、発明の単一性違反の拒絶理由通知を受けて分割出願を検討する際に、事業との関連で発明の保護を求める範囲が変動する可能性のある場合は、分割出願において必要なクレームを全て記載しておくことが望ましい。

5.分割出願の公開
 分割出願の公開は、方式審査が承認された後、出願日または場合によっては優先日から18か月の期間が経過した後に行われる(産業財産法第107条)。

6.分割出願と無効理由
 分割出願の結果、産業財産法第100条の規定に違反して行われた事項に対応するクレームを含む場合、特許は無効とされる(産業財産法第154条(4))。無効審判は、公報で特許が公示された日からいつでも請求することができる。

■ソース
・メキシコ産業財産法(2020年11月5日施行)(日本語)
https://www.jpo.go.jp/system/laws/gaikoku/document/mokuji/mexico-sangyou.pdf ・メキシコ産業財産法(2020年11月5日施行)(スペイン語)
https://www.wipo.int/wipolex/en/text/577612
■本文書の作成者
日本国際知的財産保護協会
■協力
Uhthoff, Gómez Vega & Uhthoff(メキシコ法律事務所)
■本文書の作成時期

2023.08.25

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