アジア / 出願実務 | アーカイブ
韓国で保護される商標の類型
2013年10月29日
■概要
(本記事は、2018/8/14に更新しています。)URL:https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/15652/
商標法上の商標は、その用途や構成により分類することができる。前者では、製品の製造及び販売等に使用する商品商標、役務(韓国語「서비스업」(サービス業))のための役務商標、団体標章、業務標章、証明標章に分類でき、後者では、記号商標、文字商標、図形商標、立体商標、色彩商標及びこれらの結合商標、その他にホログラム商標、動作商標、視覚的に認識することができない音商標、におい商標等に分類できる。以下、分類された各商標について説明する。
■詳細及び留意点
【詳細】
韓国商標法によって保護される商標を、用途の面と構成の面から整理する。
(1)用途による分類
(ⅰ)商品商標(韓国語「상표(商標)」)
商標とは、商品を生産・加工または販売することを業として営む者が自分の業務に係わる商品を他人の商品と識別されるようにするために使用する標章をいう(商標法第2条第1項第1号)。商品類区分において第1類から第34類までの商品を指定する標章がこれに該当する。韓国語で「商標」というときは、いわゆる商品商標をいい、役務商標は含まない。
(ⅱ)役務商標(韓国語「서비스표(サービス標)」)
役務商標とは、役務を提供する者が自分の役務を他人の役務と識別するために使用する標章をいい、日本とは異なり商標とは区別して定義されている(商標法第2条第1項第2号)。商品類区分において第35類から第45類までの役務を指定する標章がこれに該当する。
(ⅲ)団体標章(韓国語「단체표장」)
団体標章とは、商品を生産・製造・加工または販売すること等を業として営む者や役務を提供する者が共同で設立した法人が直接使用するか、その監督下にある所属団体員に自己の営業に関する商品または役務に使用させるための標章をいう(商標法第2条第1項第3号)。
(ⅳ)業務標章(韓国語「업무표장」)
業務標章とは、営利を目的としない業務を営む者がその業務を表象するために使用する標章をいう(商標法第2条第1項第5号)。
(ⅴ)証明標章(韓国語「증명표장」)
証明標章とは、商品や役務の品質、原産地、生産方法やその他の特性の証明を業としてする者が、商品の生産・製造・加工または販売を業としてする者の商品や役務を提供する者の役務が、定められた品質、原産地、生産方法やその他の特性を満たすことを証明するのに使用させるための標章をいう(商標法第2条第1項第4号)。ただし、自己の営業に関する商品や役務に使用しようとする場合には、証明標章の登録を受けることはできない(商標法第3条の3第1項)。
また、商品の品質、原産地、生産方法やその他の特性の証明を業とする者が、商品の生産・製造又は加工する者の商品が、定められた地理的特性を充足することを証明する目的で使用させるために、地理的表示からなる証明標章(韓国語「지리적표시증명표장(地理的表示証明標章)」を登録することができる(商標法第2条第1項第4号の2)。
(vi)地理的表示(韓国語「지리적표시」)
地理的表示は、商品の特定品質・名声又はその他の特性が本質的に特定地域に由来する場合に、その地域で生産・製造又は加工された商品であることを示す表示をいう(商標法第2条第1項第3号の2)。
地理的表示を使用することができる商品を生産・製造又は加工することを業として営む者のみで構成された法人が直接使用するか、その監督下にいる所属団体員に自己の営業に関する商品に使用させる場合は、地理的団体標章として登録を受けることができる(商標法第2条第1項第3号の4)。
(2)構成による分類
(ⅰ)記号商標・文字商標・図形商標
文字や符号などを図案化した記号商標、人間の言語を視覚的に記号化した文字商標、(文字・符号ではない)点・線・面によって成った図形商標、又はこれらを結合したものやこれらに色彩を結合した商標は登録対象になる。
(ⅱ)立体商標
立体商標とは、立体的形状または立体的形状に記号・文字・図形・色彩が結合された商標をいう。ただし、商標登録を受けようとする商品またはその商品の包装の機能を確保するのに不可欠な立体的形状のみからなる商標は、登録を受けることができない(商標法第7条第1項第13号)。
(ⅲ)色彩商標
色彩商標は、単一の色彩または複数の色彩の組合せのみからなる商標をいう。商標法によれば、商標の構成要素に「他のものと結合しない色彩または色彩の組合せ」も登録対象としている。すなわち、純粋な色彩のみからなる商標も登録対象になる(商標法第2条第1項第1号イ)。
(ⅳ)ホログラム商標及び動作商標
ホログラム商標は、二つ以上のレーザー光が互いに出会って起きる光の干渉効果を利用して、写真用フィルムと類似の表面に3次元イメージを記録したものからなる商標をいう。
また、動作商標は、一定の時間の経過によって変化する一連の絵や動的イメージなどを記録したものであって、これらも登録対象になる。
動作商標の例:
以下の例は、いずれも韓国特許情報院のウェブサイト(http://eng.kipris.or.kr/)で検索できる。種類(特許、意匠、デザイン、商標等)から商標を選択し、検索枠に登録番号を入力する。韓国の商標登録番号は2桁の数字と7桁の数字をハイフンで結ぶ構成となっており、検索枠へ入力する登録番号は、ハイフンを外した数字を入力する。ハイフン右側の数字が7桁より少ない場合は、ハイフン左側の2桁の数字を入力した後、7桁になるようにゼロを入力してから、ハイフン右側の数字を入力する。下記の登録番号45-33524と40-768868号の場合、前者は45を入力してから、ゼロを2つ追加した0033524を、後者は40を入力してから、ゼロを1つ追加した0768868を入力すれば、表示される。
登録:45-33542号(2011.1.17) SONYの文字と模様が変化する
登録権者:ソニー株式会社
商品類:第9類、第28類、第35類、第37類、第38類、第41類、第42類
登録:40-779284(2009.2.12) 文字が動く
登録権者:久光製薬株式会社
商品類:第5類
(ⅴ)音商標及びにおい商標
韓米FTAの合意事項により、2012年3月15日付で導入され、音やにおいなど非視覚的標章であっても、記号・文字・図形その他の視覚的な方法で事実的に表現が可能なものは商標として登録対象になる(商標法第2条第1項第1号ウ)。ただし、指定商品の品質・効能・機能等を直接的に現すものは登録を受けることができない。
【留意事項】
上記で説明した標章(商標)は登録対象になることはできるが、当然ながら通常の登録要件を満たさないと登録を受けることはできない。商標の類否判断は審査官によって判断に差が生じうることは否めないため、十分な分析・検討を行った上で出願することが望ましい。特に結合商標の場合は、要部観察のみならず、分離観察、全体観察をした上で出願戦略を練る必要がある(よくある拒絶理由及び対応例に関しては、本データベース内コンテンツ「韓国での商標出願における拒絶理由通知に対する対応」参照)。
また、特許庁が、出願人の使用意思がないと判断する場合や出願人が指定役務に対する業務をすることが法令上制限されていると考えられる場合には、使用意思を確認することもあり得るので、使用意思がないものの出願は控えるべきである(使用意思確認制度については、本データベース内コンテンツ「韓国における商標の使用意思確認制度」参照)。
■ソース
・韓国商標法・韓国商標法施行規則
・商標審査基準
http://law.go.kr/LSW/admRulLsInfoP.do?admRulSeq=2000000082242
■本文書の作成者
崔達龍国際特許法律事務所■協力
一般財団法人比較法研究センター 菊本千秋■本文書の作成時期
2013.2.7