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(中国)特許出願の単一性の審査について

2013年10月22日

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■概要
中国において、一つの全体的発明構想に属する二つ以上の発明/実用新案は、単一性を有していれば、一件の専利出願に含めることができる。特許の実体審査実務において、二つの独立請求項が単一性を有するか否かは、同一の又は対応する特別な技術的特徴の有無により判断され、「特別な技術的特徴」の認定においては、進歩性の判断基準が採用されている。
■詳細及び留意点

【詳細】

 中国において、一つの全体的発明構想に属する二つ以上の発明/実用新案は、単一性を有していれば、一件として専利出願でき(専利法第31条第1項)、特許の実体審査実務において、二つの独立請求項が単一性を有するか否かは、同一の又は対応する特別な技術的特徴の有無により判断される(審査指南第2部分第6章2.2.1)。なお、その判断は請求項の内容に基づいて行われるが、必要に応じて説明書や添付図面の内容も参照される。

 

(1)「特別な技術的特徴」の定義

 「特別な技術的特徴(中国語「特定技术特征」)」とは、各発明又は実用新案が全体として先行技術(中国語「现有技术」)に貢献する技術的特徴をいう(実施細則第34条)。

 また、審査指南では、実体審査における単一性審査に関する規定において、「特別な技術的特徴」は、先行技術と比較して、発明に新規性だけでなく進歩性(中国語「创造性」)も具備させる技術的特徴であるとされている(審査指南第2部分第6章2.1.2)。つまり、いわゆる「特別な技術的特徴」は、「公知のものでなく、自明でもないもの」といえる。

 

(2)単一性の審査方法(審査指南第2部分第6章2.2.2)

 審査指南において、実体審査における単一性審査については第2部分第6章2に規定されているが、実用新案は実体審査はなされないため、特許がこの規定の対象となる。ただし、実用新案についても、方式審査において、先行技術調査をしなくても明らかに判断できる単一性違反がある場合は、方式審査において指摘される。

 

(i)  一件の出願に二つ以上の発明が含まれる場合、先行技術の調査を行う前に、それらが明らかに単一性違反に該当するか否かが判断される。

・ それらの発明が同一の又は対応する技術的特徴を有しないか、またはその同一の又は対応する技術的特徴がいずれもその分野の慣用手段である場合、先行技術に対する貢献を明示する特別な技術的特徴を有する可能性がないため、明らかに単一性違反と判断される。

例:除草剤の発明と草刈り機の発明。

同一の又は対応する技術的特徴が、その分野における慣用手段である「シート状電池によりカプセル内視鏡の撮像部に給電する」ことのみにある発明同士)。

・ 単一性違反が明らかでない二つ以上の発明については、先行技術を調査した上で単一性を有するか否かが判断される。

 

(ii) 単一性違反が明らかでない場合、通常、以下の分析方法が採用される。

・ 一件目の発明の主題に関連する先行技術と比較して、先行技術に対する貢献を表す特別な技術的特徴を確定する。

・ 二件目の発明の中に、一つ又は複数の一件目の発明と同一又は対応する特別な技術的特徴が存在するかどうかを判断することにより、この二つの発明に技術上の相互関連があるかを確定する。

・ 各発明間に、一つ又は複数の同一又は対応する特別な技術的特徴が存在すれば、すなわち技術上の関連があるならば、一つの全体的発明思想に属しているとの結論が得られる。各発明間に技術上の関連が存在しなければ、一つの全体的発明思想に属しないとの結論が得られ、単一性を有しないと確定できる。

 

(iii)   前述の通り、審査指南上、「特別な技術的特徴」は、先行技術と比較して、発明に新規性・進歩性を具備させる技術的特徴であると規定されていることから、先行技術の調査により、ある技術的特徴が新規であるものの、発明に進歩性を持たせることができない(例:公知文献の組み合わせ、或いは一件の公知文献と技術常識の組み合わせから自明なものである)場合、この技術的特徴が先行技術に対して貢献をもたらすものではないと判断される。よって、進歩性判断は、「特別な技術的特徴」の判断に直接の影響を及ぼす。

 

(3)「対応する技術的特徴」の定義

(i)  「対応する技術的特徴」の定義について、審査指南において明確な記載はなく、事例のみ記載されている。

実務においては、2つの技術的特徴が、異なる発明を相互に協働させて、関連する課題を解決させることができ、明らかな対応関係を有する場合(例:送信機と受信機、プラグとソケット等)のほか、2つの技術的特徴が同じような特性を有し、相互に代替可能であり、同様の課題を解決でき、先行技術に対する貢献も同様である場合(例:後述の例)にも、通常、「対応する技術的特徴」であると判断される。

 

(ii) 二つの発明特定事項が「対応する技術的特徴」に該当することを証明するには、明細書の記載による裏付けが必要である。

例(審査指南第2部分第6章2.2.2.2【例9】):

請求項1:重量%でNi=2.0~5.0、Cr=15~19、Mo=1~2及び残量Feを主成分として含有し、板厚が0.5mm~2.0mmであり、伸び率が0.2%である場合の降伏強度が50kg/mm2以上である高強度耐食性ステンレス板。

請求項2:重量%でNi=2.0~5.0、Cr=15~19、Mo=1~2及び残量Feを主成分として含有する高強度耐食性ステンレス板の製造方法であって、

(1)2.0mm~5.0mmの板厚となるように熱間圧延する工程、

(2)熱間圧延されたスラブを800℃~1000℃の温度で焼鈍する工程、

(3)0.5mm~2.0mmの板厚となるように冷間圧延する工程、

(4)1120℃~1200℃の温度で2~5分間焼鈍する工程、

を含む高強度耐食性ステンレス板の製造方法。

 上記の例において、審査官は公知文献を調査した上で、先行技術と比較して、0.2%である場合の降伏強度が50kg/mm2以上であるステンレス板は、新規性及び進歩性を有すると判断している。

 物の発明である請求項1の特別な技術的特徴は、「伸び率が0.2%である場合の降伏強度が50kg/mm2以上である」というものである。方法の発明である請求項2のプロセスは正に、このような降伏強度を有するステンレス板を製造するための加工処理であって、これは請求項2の文言には反映されていないが、明細書からは明らかである。よって、このプロセスは、請求項1の強度の特徴に対応する特別な技術的特徴であるといえ、請求項1と請求項2は単一性の要件を満たしていると判断される。

 

【留意事項】

 中国においては、「特別な技術的特徴」の認定について進歩性の判断基準が採用されており、この基準は、日本における基準よりも厳しいものと思われる。そのため、日本で単一性要件を満たすクレームであっても、中国においても必ずしも単一性要件を満たすということではないということに留意すべきである。

 また、同一ではなく、「対応する技術的特徴」の場合、単一性違反と疑われないように、明細書にこれらの技術的特徴がどのような対応関係を有するか(例えば上述の例のような製法プロセスと特性との対応関係など)について詳細に記載しておくことが望ましい。

■ソース
・中国専利法
・中国専利法実施細則
・中国専利審査指南 第2部分第6章 単一性と分割出願
・発明の特別な技術的特徴を変更する補正及び発明の単一性の要件に関する調査研究
http://www.jpo.go.jp/shiryou/toushin/chousa/pdf/zaisanken/2011_03.pdf ・単一性判断——"対応する特別な技術的特徴"の認定
http://www.sipo.gov.cn/ztzl/ywzt/zlfswjdpx/200908/t20090813_472411.html
■本文書の作成者
北京林達劉知識産権代理事務所
■協力
特許庁総務部企画調査課 山中隆幸
一般財団法人比較法研究センター 不藤真麻
■本文書の作成時期

2013.01.22

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