アジア / 出願実務
韓国における商品・役務の類否判断について(前編)
2023年05月04日
■概要
韓国における審査基準のうち商標の商品・役務の類否判断に関する事項について、日本の審査基準と比較して留意すべき点を中心に紹介する。本稿では、前編・後編に分けて商品・役務の類否判断基準について、「商標審査基準」および判例とともに紹介する。前編では、標章の類否基準についての「商標審査基準」の記載個所、基本的な考え方、商品の類否について説明する。役務の類否について、商品役務間の類否については「韓国における商品・役務の類否判断について(後編)」(https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/34464/)をご覧ください。■詳細及び留意点
1.記載個所
標章の類否基準(韓国商標法第34条第1項第7号)については、「商標審査基準」の第5部第7章および第10部第2章に記載されている。その概要(目次)は以下のとおり。
第5部第7章:先登録商標と同一・類似の商標 1. 適用要件 2. 国際登録基礎商標権との類否判断 3. 判断時の留意事項 4. (以下、省略) 補充基準:商標の同一・類似 1. 商標の同一 2. 商標の類似 3. 各商標別類否判断基準 4. 指定商品の類否判断基準 第10部第2章:外国語商標の審査 1. 規定の趣旨 2. 外国語商標に対する審査原則 |
2.基本的な考え方
日本の類似商品・役務審査基準(「類似商品・役務審査基準とは」 1ページ目「2」に対応する商標審査基準(韓国)の記載は、以下のとおりである。
(1) 対応する事項が記載された審査基準の場所
・商標審査基準第5部第7章 補充基準4. 指定商品の類否判断基準
・類似商品審査基準(特許庁例規第123号、2022年1月1日施行)
(2) 異なる事項または留意点
韓国においても日本と同じく類似群コードを導入して施行している。
類似群コードは、原則として商品・役務を区分するコード(商品はG、役務はS)、韓国分類コード(商品53個類、役務12個類)、商品群コード(01、02等の連続番号)等、5桁で構成されている。ただし、類似群の細分化により1つの類似群を2つ以上に細分化した場合、枝番号2桁(01、02等の連続番号)を追加して7桁で構成することができる(類似商品審査基準第7条第1項)。
類似群コードは、指定商品間の類似範囲を判断するために、商品自体の属性および取引実情等を反映して、同一・類似の商品および役務別に分類しコードを付与したもので、商標審査時に類否判断の参考資料として活用される。
(3) 韓国と日本とが同じ類似群制度であっても異なるグルーピングが行われている理由
指定商品の同一類否に関する一般原則は、類似群コードを参考にするが、商品の属性である品質、形状、用途と生産部門、販売部門、需要者の範囲等、取引の実情等を考慮して一般取引の通念によって判断している(類似商品審査基準第10条)。
審査官は、必要な場合、チーム長、分類政策担当者および各審査課の分類専門官と協議体を構成して、商品の類否を判断することができる(類似商品審査基準第11条第6項)。
また、類似商品審査基準と異なって判断した審・判決例および商品審事例が蓄積されて、これを商標登録出願審査に反映する必要がある場合に、商標デザイン審査局長は、その商品の目録(「商品関連審判決例および審査事例反映目録」という)を定めて、この基準とは別途で運営することができ、審査官は同目録が定めた基準によって審査するようになる(類似商品審査基準第11条第7項)。
3.商品の類否について
日本の類似商品・役務審査基準(「類似商品・役務審査基準とは」2ページ目「(1) 商品の類否について」に対応する商標審査基準(韓国)の記載は、以下のとおりである。
(1) 対応する事項が記載された審査基準の場所
・ 商標審査基準第5部第7章 補充基準4. 指定商品の類否判断基準
・ 類似商品審査基準(特許庁例規第123号、2022年1月1日施行)
(2) 異なる事項または留意点
商品に関する類似群コードは、原則として商品・役務を区分するコード(商品はG)、韓国分類コード(商品53個類)、商品群コード(01、02等の連続番号)等の5桁で構成されている。ただし、類似群の細分化により1つの類似群を2つ以上に分離した場合、枝番号2桁(01、02等の連続番号)を追加して7桁で構成されている(類似商品審査基準第7条第1項)。
・例示1)類似群コードG1301
G:Goods、13:韓国分類第13類(石けんと洗剤)、01:韓国分類第13類の第1群(石けん類)
・例示2)類似群コード390802
G:Goods、39:韓国分類第39類(電気機械機具、電気通信機械機具、電子応用機械機具)、08:韓国分類第39類の第8群(電子応用機械機具)、02:種類番号(ソフトウェア)
指定商品の同一類否は、上記のような類似群コードを参考にするが、商品の属性である品質、形状、用途と生産部門、販売部門、需要者の範囲等、取引の実情等を考慮して一般取引の通念によって判断している(類似商品審査基準第10条)。
上記に関する大法院(最高裁)判例(1994年5月24日言渡し94フ425判決、1996年4月26日言渡し95フ1586判決等参照)によれば、「指定商品の同一・類否は、商品自体の属性である品質、形状、用途と生産部門、販売部門、需要者の範囲等、取引の実情等を考慮して一般取引の通念によって判断すべきものである。」と判決している。
(*) 大法院の判決は、次のサイト(韓国語)で「94후425」(「フ」を「후」に置き換えた番号)を入力すると参照できる。以下、同様である。なお、韓国では全ての判例が公開されていなため、一部の判例については検出できない場合がある。
http://glaw.scourt.go.kr/
参考:「韓国の判例の調べ方」(2017.07.06)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/precedent/13872/
(3) 韓国でのClass Headingの商品を指定することを認めるか否かに関する審査基準について
Class Heading(包括名称という)は、狭義の包括名称と広義の包括名称に分類している。商品の記載において包括名称は許容されないが、商品の名称と類区分に関する告示で認める狭義の包括名称と広義の包括名称は記載することができる(特許庁告示2021-25号 「商品の名称と類区分に関する告示」第5条参照)。包括名称の定義および例示は次のとおりである(商標審査基準第2部第4章1.1.3)。
区分 | 狭義の包括名称 | 広義の包括名称 |
定義 | 同一の商品類区分内で同一の類似群に属するいくつかの商品を含む | 同一または複数の商品類区分内で複数の類似群に属する商品を含む |
包括名称事例 (商品類、類似群コード) |
履物(第25類、G270101) | 衣類(第25類、N25005)*1 |
該当する商品 | 運動靴、防寒靴、ゴルフ靴等 | スポーツ衣類(G430301)、上着(G450101)、下着(G4503)等 |
*1:従来、広義の包括名称は別のコード(例 衣類:N20006,医療機器:N10003)を使用していたが、現在は「類似商品審査基準」を参考に「旧(包括コード)」と表記されている。このため、G~のコードを用いることを勧める。
商品の類否判断に対する判例(大法院1996年4月26日言渡し95フ859判決)等によれば、「商品区分表のような類別に属しているとして、すぐに同一または類似の商品であると断定はできず、指定商品の同一、類否は商品の属性である品質、形状、用途と生産部門、販売部門、取引の実状等を考慮して一般取引の通念により判断すべきである。」と判決している。
■大法院1996年4月26日言渡し95フ859判決
商標法第10条第1項および同法施行規則第6条第1項による商品類区分は、商標の登録事務の便宜のために区分したものであり、商品の類似範囲を定めたものではないため(商標法第10条第2項)、商品区分表の同じ類別に属しているとして、そのまま同一または類似の商品と断定することはできず、指定商品の同一、類否は商品の属性である品質、形状、用途と生産部門、販売部門、需要者の範囲等取引の実情等を考慮して一般取引の通念によって判断すべきものである(当院1994年11月25日言渡し94フ1435判決、1994年12月2日言渡し93フ1285判決等参照)。
記録と関係法規によれば、両商標の指定商品は全て商標法施行規則第6条第1項の商品類区分表上の第39類に属してはいるが、本願商標の指定商品である集積回路は、そのうち第8群の電子応用機械に属し、そのうちでも第3号である半導体素子に属する反面、引用商標の指定商品は、上の第39類第7群の電気通信機械装置に属するものとして電話機(第1目の電話機器)、模写電送機(第2目の有線通信機器)があり、電子複写機は第39類の第8群電子応用機械のうち第1目の電子応用機器に属するため商品類区分表上の細目が互いに異なるといえ、本願商標の指定商品である集積回路は、大きさが極めて小さく、これは各種の電気電子製品の核心部品ではあるが、電子複写機、模写電送機等のような完成品のうちその材料や価格、生産過程で占める比重が極めて少ないため、両商標の指定商品はその品質、形状、用途が明白に互いに異なるもので、また、集積回路は主に特定の専門的な集積回路生産業者で注文生産され、電子製品を生産する業者に直接供給されるとするというものであるのに対し、引用商標の指定商品は、集積回路の生産業者とはまた別の専門的な製造業社で生産され主に代理店や一般商店街、百貨店等で販売されているため、生産と販売方法が顕著に互いに異なるというものであり、集積回路は、電子製品生産業者や修理業者等の専門取扱者のみが購入するが、引用商標の指定商品は、一般消費者が広く購入して使用していて、両商品は、その消費者や需要者層が互いに異なるといえるところ、結局、両商標の指定商品は、その商品の品質、形状、用途および生産と販売方法、需要者や取引先等の取引の実情等に照らしてみても、一般取引の通念上同一または類似のものということはできないものである。
■大法院判例(大法院1993年5月11日言渡し92フ2106判決)
旧商標法第11条第1項および同法施行規則第10条第1項による商品区分は、商標の登録事務の便宜のために区分したものであり、商品の類似範囲を定めたものではないため(同法第11条第2項)、商品区分表の同じ類別に属しているとして、そのまま同一または類似の商品と断定することはできないものであり、指定商品が同一または類似のものかの当否は、商品の生産部門・販売部門・用途・主原材料・需要者の範囲・完成品と部品との関係・取引実態等を総合考慮して一般取引の通念によって判断すべきものであるところ(1987年8月25日言渡し86フ152判決; 1990年7月10日言渡し89フ2090判決; 1990年11月27日言渡し90フ977判決; 1991年3月27日言渡し90フ1178判決; 1991年5月28日言渡し91フ35判決; 1992年5月12日言渡し92フ1793判決等参照)、本願商標と引用商標の指定商品が全て商標法施行規則による商品区分表の第39類に属してはいるが、本願商標の指定商品は、衛星放送用機器として第39類の第7群電気通信機械機具のうち第4細目の放送用機器に属するのに対し、引用商標の指定商品は、直流発電機・白熱電球・乾電池・電流計・被覆電線・電子レンジ・電話機・産業用X線機械機具・真空管・電熱テープ等であって全て本願商標の指定商品と異なる商品群や商標細目に属するだけでなく、その商品の品質・形状・用途および取引の実情等に照らしてみても、二つの商標の指定商品が取引の通念上同一または類似のものであると断定することもできない。
役務の類否について、商品役務間の類否については「韓国における商品・役務の類否判断について(後編)」をご覧ください。
■ソース
・韓国の商標審査基準(日本語)https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/kr/ip/law/trademark2022.pdf ・韓国の商標審査基準(原文)
https://www.kipo.go.kr/ko/kpoContentView.do?menuCd=SCD0200155
・韓国の類似商品審査基準(特許庁例規第123号/2021年12月27日改正)
https://www.law.go.kr/행정규칙/유사상품심사기준/(123,20211227) ・日本の類似商品・役務審査基準〔国際分類第12-2023版対応〕
https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/guideline/trademark/ruiji_kijun/document/ruiji_kijun12-2023/info04.pdf ・商品の名称と類区分に関する告示(特許庁告示2021-25号/2021年12月27日改正)
https://www.law.go.kr/행정규칙/상품의명칭과류구분에관한고시/(2022-26,20221227) 全体リスト:
https://www.kipo.go.kr/ko/kpoBultnDetail.do?aprchId=BUT0000047&keyword=&menuCd=SCD0200639&ntatcSeq=19376&pageIndex=1&searchCondition=1&sysCd=SCD02 ・韓国の商標法施行規則
http://www.choipat.com/menu31.php?id=28
■本文書の作成者
崔達龍国際特許法律事務所■協力
日本国際知的財産保護協会■本文書の作成時期
2022.12.26