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マレーシアにおける特許出願書類

2023年04月20日

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■概要
マレーシアでは、特許出願書類として、願書、明細書、クレーム、図面、要約書等が必要である。特許出願書類については、マレーシア特許法(以下「特許法」という。)第28条に定められているが、2022年3月18日に施行された改正法により、配列表の提出等の新たな規定が追加された。
■詳細及び留意点

〔詳細〕
 マレーシアにおいて特許出願を行う場合、出願人は、マレーシア知的財産公社に対し、特許出願書類として、願書、明細書(必要な場合は配列表を含む)、クレーム、図面、要約書を提出する必要がある(特許法第28条、マレーシア特許規則(以下「特許規則」という。)5、10、12~16)。また、併せて所定の手数料を納付しなければならない(特許法第24条、特許規則7)。

 出願人の氏名および住所、発明者の氏名および住所、明細書、クレームが含まれている要件を満たせば、登録官は出願書類受領の日を出願日として記録する(特許法第28条(1))。これらの要件を満たさないと判断したときは、登録官は訂正を要求する(特許法第28条(2))。出願人が訂正を行った場合にはその受領日を新たな出願日とし、行わなかった場合には出願は放棄されたものとして処理される(特許法第28条(3))。

 マレーシアの居住者でない外国人による出願の場合は、マレーシアの代理人を通じて出願手続を行う必要がある(特許法第86条(5))。出願に際し、願書および付属の陳述書その他の書類は、マレー語または英語で作成する必要がある(特許規則18(11))。

1.願書
 願書は所定のフォーマット(様式1)により作成する。願書の記載事項には、以下のようなものが含まれる。
・発明の名称
・出願人の氏名および住所
・代理人に関する事項
・優先権に関する事項(基礎となる出願の番号が不明な場合は、当該番号は出願日から3か月以内に通知すれば良い(特許規則21(2))。)
・出願人が発明者であるか否かの記載
・出願人と発明者が異なる場合は発明者の氏名および住所

2.明細書
 出願の明細書には、次の事項を記載する(特許規則12)。
・願書に記載されている発明の名称
・発明が関連する技術分野
・発明の理解、調査および審査に有用と考えられる技術的背景の表示
・クレームされた発明の明示(技術的背景に対し、有利な効果を述べる)
・各図の簡単な説明
・実施例
・発明の説明または本質から自明でない場合、産業上の利用可能性があることの説明
・配列を開示する場合は、配列表を含めなければならない(特許規則12A)。

3.クレーム
 クレームは、発明の技術的特徴を表現して発明を定義するものでなければならず、明確かつ簡潔であり、発明の説明により裏付けられていなければならない。また、クレームには図面を含んではならず、必要な場合を除いて発明の技術的特徴に関して明細書または図面の引用に依存してはならない(特許規則13)。
 なお、マレーシアではマルチマルチの従属クレーム(複数クレームを引用する多項従属クレームが、他の複数クレームを引用する多項従属クレームを引用すること)が認められている(特許規則14)。

4.図面
 図面は、発明の理解に必要な場合に要求されるため、クレームされた発明を正確に理解できるよう、明確に記載しなければならない。また、耐久性および十分な緻密性のある黒色で、一様な厚みで明確な線と筆法により、着色せずに作成する必要がある(特許規則15、18(10))。フローシート(フローチャート)やダイアグラムは、図面とみなされる(特許規則15(3))。

5.要約書
 要約書の作成に際しては、以下のような点に留意する(特許規則16)。
(1) 最初に発明の名称を記載する。明細書、クレーム、図面に含まれる開示事項の概要を記載する。発明が属する技術分野を記載し、技術的課題、当該発明による課題解決の骨子、当該発明の1もしくは複数の主な用途を明確に理解させるように作成する必要がある。
(2) 要約書には、明細書に開示されている発明の内容を簡潔に(通常は150語以内で)記載しなければならない。
(3) 適当と認められる場合は、出願に含まれる全ての化学式のうち、当該発明を最も良く特徴付けるものを記載する。
(4) 要約書には図面を含んではならない。ただし、出願人が提出した図面のうち、当該発明を最も良く説明するものは添付しなければならない。

6.その他の書類
 出願人と発明者が完全に一致しない場合、上記出願書類のほか、出願人が特許を受ける権利を有することを証明する書面の提出が求められる(特許規則10、様式22)。証拠資料の提出までは求められていない。
 優先権主張を伴う特許出願の場合、優先権証明書(基礎出願の認証された謄本)の提出も求められる(特許法第27条(2)、特許規則22)。詳細は、本データベース掲載「マレーシアにおける優先権主張を伴う特許出願」(https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/5717/)をご参照いただきたい。

〔留意事項〕
 方式審査において書類の不備が見つかった場合、出願人に対し、所定の期間内に当該認定に対する意見書の提出および/または当該出願の補正の機会が与えられ、その旨が通知される(特許法第29条(2))。ここでいう「所定の期間」とは、当該通知受領日から3か月である(特許規則26(2))。出願人が所定の期間内に意見書の提出、補正を行わなかった場合には、当該出願は拒絶され得る。

■ソース
・マレーシア1983年特許法(2006年8月16日施行)(日本語)
https://www.jpo.go.jp/system/laws/gaikoku/document/mokuji/malaysia-tokkyo.pdf ※上記日本語版は、1986年特許改正法~2006年特許改正法に対応したものであるが、2022年特許改正法には対応していないため、次の2022年特許改正法を参照し、読み替えることが必要である。
・マレーシア特許改正法(2022年3月18日施行)(英語)
https://www.myipo.gov.my/wp-content/uploads/2022/03/02-PATENTS-AMENDMENT-ACT-2022.pdf ・マレーシア2011年特許規則(2011年2月15日施行)(日本語)
https://www.jpo.go.jp/system/laws/gaikoku/document/mokuji/malaysia-tokkyo_kisoku.pdf ※特許法と同様に、次の2022年特許改正規則を参照して、読み替える必要がある。
・マレーシア特許改正規則(2022年3月18日施行)(英語)
https://www.myipo.gov.my/wp-content/uploads/2022/03/PERATURAN-PERATURAN-PATEN-PINDAAN-2022.pdf ・特許出願願書フォーマット(様式1)
https://www.myipo.gov.my/wp-content/uploads/2022/12/DIRECTIVE-OF-PATENTS-ACT-1983-AND-PATENTS-REGULATIONS-1986-PT03.2022-30062022-1.pdf ・特許を受ける権利を有することを証する書面のフォーマット(様式22)
https://www.myipo.gov.my/wp-content/uploads/2022/12/DIRECTIVE-OF-PATENTS-ACT-1983-AND-PATENTS-REGULATIONS-1986-PT03.2022-30062022-1.pdf
■本文書の作成者
日本国際知的財産保護協会
■協力
辻本法律特許事務所
■本文書の作成時期

2023.01.06

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