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(中国)バイオ分野(生物化学、医薬、微生物など)に係る特許出願に関する特別規定

2013年09月13日

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■概要
バイオ分野の発明については、生物材料に係る発明のように記述による特定が難しい、また、実施するためには寄託試料を利用しなければならないなど、特殊な状況が多い。そこで、専利法、専利法実施細則及び専利審査指南では、バイオ分野の特許出願に関して、寄託や審査における特殊な取扱いに関する特別規定が定められている。具体的には、以下に説明するように、生物材料に係る特許出願に関する生物材料のサンプルの寄託、ヌクレオチド配列・アミノ酸配列の発明、遺伝資源に依存して完成した発明について、規定が用意されている。
■詳細及び留意点

【詳細】

生物材料の寄託手続き(中国寄託機関に依頼する場合)

生物材料の寄託手続き(中国寄託機関に依頼する場合)

注:中国典型培養物保蔵センター(CCTCC)へサンプルを提供する際、当該サンプルが冷凍便での送付が必要なものである場合(例:細胞系、植物ウイルスなど)は、外国出願人または代理人が、サンプル送付の郵便物番号、フライト、着陸する中国の空港及び日付などを送達前の2日以内に寄託機関に通知しなければならない。通常のサンプル(例:微生物菌種、プラスミド、バクテリオファージ等)については、外国出願人または代理人が、速達でサンプルを寄託機関に送付すれば良い。

 

 

(1)生物材料の寄託

(i)寄託手続が要求される生物材料(審査指南第2部分第10章9.2.1)

 生物材料に係る出願について、その生物材料が一般に入手できないものであり、かつ当該生物材料の説明が所属分野の技術者にその発明を実施させるには不十分である場合、当該生物材料を寄託しなければならない(実施細則第24条)。

 

(a) 「一般に入手できないもの」

 個人または機関が保有するもので、専利手続用寄託機関以外の機関へ寄託され、かつ公に配布しない生物材料、或いは、明細書で当該生物材料の作製方法が記述されているが、その分野の技術者が当該方法を繰り返しても当該生物材料を獲得することができないようなもの(例:再現できないスクリーニングや突然変異などの手段により新規に作製した微生物菌種)。

(b)   一般に入手できると認められ、寄託は要求されないもの

・ 一般に国内外の商業ルートで購入できる生物材料。ただし明細書において購入ルートを明記しなければならず、必要な場合(審査官が購入ルートに対して質疑がある場合等)には一般に当該生物材料が出願日前に購入できる証拠を提供しなければならない。

・ 各国の専利局又は国際特許機関(WIPO、EPO等)に認可された専利手続用寄託機関に寄託され、かつ中国で提出した専利出願の出願日までに専利公報で公開された、或いは専利権が付与された生物材料

・ 専利出願において使用しなければならない生物材料であって、出願日前に、専利文献以外で開示されていた場合には、明細書の中で文献の出所が明記されており、一般に当該生物材料を入手する経路が説明されており、かつ専利出願人が出願日(優先権主張の場合、優先日を指す)から起算する20年以内に一般に生物材料を配布することを保証する旨の証明が提供されているべきである。

 

(ii)出願人が行わなければならない手続き(実施細則第24条、審査指南第1部分第1章5.2.1、第2部分第9章9.2.1)

(a) 出願日前、又は遅くとも出願日(優先権がある場合には優先日を指す。以下同様。)に、当該生物材料のサンプル(中国語「生物材料样品」)を中国特許庁(中国語「国家知识产权局」)に認可された(ブタペスト条約において承認された)生物材料サンプル国際寄託機関(中国語「生物材料样品国际保藏单位」)に寄託する。ブタペスト条約において承認された中国国内の寄託機関は中国典型培養物保蔵センター(CCTCC)と中国普通微生物菌種保蔵管理センター(CGMCC)であり、通常、寄託請求書、生物材料の基本情報、生物材料のサンプルの提出が必要である。

(b) 特許出願願書と明細書には、当該生物材料サンプルの寄託機関の名称、住所、寄託日と寄託番号、及び当該生物材料の分類名称(ラテン語名称)を明記する。

出願時に明記されていない場合は、出願日より起算して4ヵ月以内に補正しなければならず、期限内に補正しなかった場合には、寄託されていないものとみなされ、生物材料サンプルが未寄託であるとみなす通知書(中国語「生物材料样品视为未保藏通知书」)が発行される。

(c) 出願書類において、生物材料の特徴に関する資料を提供する。

(d) 出願日より4ヶ月以内に、寄託機関が発行する寄託証明書と生存証明書を提出する。

方式審査において、出願日より4ヵ月以内に寄託証明書が提出されておらず、当該証明書を提出できない正当な理由の説明もなされていない場合、当該生物材料サンプルは寄託されていないものとみなされ、生物材料サンプルが未寄託であるとみなす通知書が発行される。

 

(iii)方式審査における寄託及び生存証明についての審査事項(審査指南第1部分第1章5.2.1)

(a) 寄託機関

 寄託機関は中国特許庁に認可された生物材料サンプル国際寄託機関でなければならない。それ以外の寄託機関に寄託していた場合、審査官により生物材料サンプルが未寄託であるとみなす通知書が発行される。

(b) 寄託日

 寄託日は出願日前又は遅くとも出願日当日でなければならない。寄託日が出願日当日よりも遅い場合、審査官により生物材料サンプルが未寄託であるとみなす通知書が発行される。

 但し、寄託証明書に明記された寄託日が、主張された優先権日以降であって出願日以前にある場合には、審査官により手続補正通知書が出され、出願人は、指定された期限内に優先権の主張を取下げるか、又は当該寄託証明書に係る生物材料の内容について優先権を主張しないことを表明するよう要求される。期限内に答弁しない場合、又は、補正しても規定事項に合致しない場合には、生物材料サンプルが未寄託であるとみなす通知書が審査官より発行される。

(c) 寄託・生存証明書と願書の一致

 寄託・生存証明書は、願書に書いてある項目と一致していなければならない。一致していない場合、審査官は補正通知書(中国語「补正通知书」)を出し、出願人に規定された期限内に補正するよう通知する。期限内に補正しなければ、生物材料サンプルが未寄託であるとみなす通知書が発行される。

 生物材料サンプルを寄託機関に提出している間にサンプルが死亡した場合は、生物材料サンプルの死亡が出願人の責任に起因していないことを証明し得る証拠を出願人が提供している場合を除いて当該生物材料サンプルは寄託されていないものとみなされ、生物材料サンプルが未寄託であるとみなす通知書が発行される。出願人が、サンプルの死亡が事故の責任に起因していないことを証明した場合、出願日より4ヶ月以内に、当初のサンプルと同一の新規サンプルを再寄託することができる。なお、その場合、当初の寄託提出日を寄託日として良い。

 

(iv)寄託の回復(審査指南第1部分第1章5.2.2)

 生物材料サンプルが未寄託であるとみなす通知書が発行された場合において、出願人に正当な理由がある場合は、専利法実施細則第6条第2項に基づき回復手続きを行うことができる。実務においては、出願人の出張、病気などのために期限内に特許出願における寄託関連手続きを行うことができない場合などに正当な理由があるとされている。その他、生物材料サンプルを寄託機関に提出していない又は存在していないことについての正当な理由は以下の通りである。

(a) 寄託機関が出願日より4ヵ月以内に寄託証明書又は生存証明書を提供しておらず、かつ、当該寄託機関が出願日より4ヵ月以内に寄託証明書又は生存証明書が提供できないことを証明する書類を発行している場合

(b) 生物材料サンプルを寄託機関に提出している間に生物材料サンプルが死亡し、出願人が生物材料サンプルの死亡が出願人の責任に起因していないことを証明できる証拠を提出している場合

 

(2)ヌクレオチド配列・アミノ酸配列

(i)作成に関する規定(審査指南第2部分第10章9.2.3)

 発明が10以上のヌクレオチドからなるヌクレオチド配列、或いは4以上のL-アミノ酸からなる蛋白質又はペプチドのアミノ酸配列に係わる場合、中国特許庁が公布した「ヌクレオチド及び/又はアミノ酸の配列表と配列表電子ファイルの基準」に基づいて作成した配列表を提出しなければならない。

 

(ii)提出書類(審査指南第1部分第1章4.2)

 ヌクレオチド又はアミノ酸配列に関わっている出願は、当該配列表を明細書の独立した部分とし、単独に頁番号を作成しなければならない。出願人は、当該配列表と一致する、コンピュータが読み取り可能な副本を出願時に提出しなければならない(例:当該配列表を記載した、コンピュータが読み取り可能なディスク又はフロッピーの提出)。提出されたディスク又はフロッピーに記載した配列表が明細書における配列表と一致していない場合、明細書の配列表によるものとする。

 

(3)遺伝資源

 発明創造が遺伝資源に依存して完成したものである場合、出願人は出願書類に当該遺伝資源の直接的由来と原始的由来を明示しなければならない。出願人が遺伝資源の原始的由来を明示できない場合、その理由を説明しなければならない(専利法第26条第5項)。

 

(i)定義

・ 専利法にいう「遺伝資源」とは、人間、動物、植物又は微生物に由来し、遺伝機能単位を含有し、かつ実際的な又は潜在的な価値を有する材料をいう。また、専利法にいう「発明創造が遺伝資源に依存して完成した」とは、発明創造が遺伝資源の遺伝機能を利用して完成したことをいう(実施細則第26条)。

・  専利法にいう「遺伝資源の直接的由来」とは、遺伝資源を獲得するための直接的ルートを指す。出願人が遺伝資源の直接的由来を明記する時、当該遺伝資源の獲得時期・場所・方法・提供者などの情報を提供しなければならない。また、専利法にいう「遺伝資源の原始的由来」とは、遺伝資源が属する生物体の原生的環境における採集地を指す。遺伝資源が属する生物体が自然育成のものである場合の原生的環境は、当該生物体の自然育成環境を指す。遺伝資源が属する生物体が植栽された或いは馴養されたものである場合の原生的環境は、当該生物体の特定の性状或いは特徴を形成した環境を指す。なお、出願人が遺伝資源の原始的由来を明記する際、当該遺伝資源が属する生物体の採集時期・場所・採集者などの情報を提供しなければならない(審査指南第2部分第10章9.5.1)。

 

(ii)開示事項に関する具体的な要求

・  遺伝資源に依存して完成した発明創造を発明専利出願する場合、出願人は願書においてその旨を説明し、かつ中国特許庁の指定用紙を埋めなければならない(実施細則第26条)。

・  遺伝資源の直接的由来は寄託機関や種子バンク(生殖質バンク)、遺伝子バンクなどの機関から取得したもので、当該機関が原始的由来を知っておりかつ提供できる場合、出願人は当該遺伝資源の原始的由来の情報を提供しなければならない。原始的由来について明記できないと主張する出願人は、その理由を陳述し、必要な場合は関連する証拠を提供するものとする。例えば、「当該種子バンクに当該遺伝資源の原始的由来についての記載がない」、「当該種子バンクは当該遺伝資源の原始的由来を提供できない」と申告すると共に、当該種子バンクから発行されるその旨の証明書を提出する(審査指南第2部分第10章9.5.2)。

 

【留意事項】

(1)実務上、特許出願に際して寄託が必要となる場合、優先権の基礎となる日本出願の出願日の前に日本で国内寄託のみをして、日本出願後、中国での出願日の前に国際寄託に移管する取扱い方がよく見られる。しかし、中国では、ブダペスト条約により承認された国際寄託機関による国際寄託しか認めておらず(日本での国内寄託は認められない)、上記のように取り扱う場合、生物材料の寄託日はその国際寄託の寄託日(又は国際寄託への移管日)となり、国内寄託の寄託日は認めらない(審査指南第2部分第10章9.2.1)。そして、国際寄託の寄託日又は国際寄託への移管日が出願日(優先権がある場合には、優先日をいう)より遅い場合、専利法実施細則第24条の規定に合致しないため生物材料は寄託されなかったものとみなされ、中国出願は優先権を放棄するか、国際寄託を放棄するよう要求される。一方、国際寄託を放棄すると、実施可能要件違反になりかねない。したがって、日本出願の優先権を主張して中国出願する予定がある場合、日本出願日より前に国際寄託をしておくべきである。

 (2)中国におけるバイオ分野に係る特許出願において特に留意すべきは、出願しようとする発明が遺伝資源に依存している場合である。専利法第5条において「法律と行政法規の規定に違反して遺伝資源を獲得し、または利用し、当該遺伝資源に依存して完成した発明に対しては特許を付与しない。」と規定されており、これは無効理由にもなるとされている(実施細則第65条)。したがって、遺伝資源に依存した発明について出願する場合は、その遺伝資源の獲得や利用が法律と行政法規の規定に違反していないか確認すると共に、その獲得ルート(獲得した時点、場所、方法等)を明示できるように準備しておくことが重要である。

■ソース
・中国専利法
・中国専利法実施細則
・中国専利審査指南 
 第1部分第1章 発明専利出願の方式審査
 第2部分第10章 化学分野の発明専利出願の審査に関する若干の規定
・ヌクレオチド及び/又はアミノ酸の配列表と配列表電子ファイルの基準
・中国典型培養物保蔵センター(CCTCC)ウェブサイト
http://www.cctcc.org/bioshow.php?newsid=11 ・中国普通微生物菌種保蔵管理センター(CGMCC)ウェブサイト
http://www.cgmcc.net/index.php/Index/patent1
■本文書の作成者
北京林達劉知識産権代理事務所
■協力
三協国際特許事務所 弁理士 宇佐美綾
一般財団法人比較法研究センター
■本文書の作成時期
2013.02.04
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