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マレーシアにおける特許出願の補正の制限

2023年03月30日

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■概要
マレーシアの特許出願においては、マレーシア特許法(1983年)の規定に従い、出願人は特許付与の前および後に補正を行うことができる。しかしながら、2022年の特許法改正により、自発補正に関する特許法第26A条が削除され、代わりに、特許出願の補正に関する登録官の権限に関する特許法第79A条に補正に関する条文が加えられた。本記事では、2022年3月18日施行の改正特許法(以下「特許法」という。)に基づき補正の制限について解説する。
■詳細及び留意点

1.出願人による特許出願の補正(自発補正)
 2022年の特許法改正により、出願人による特許出願の補正に関する規定(特許法第26A条)は削除された。代わりに、特許出願の補正に関する登録官の権限に関する特許法第79A条に補正に関する条文が加えられた。
 改正後の特許法第79A条の規定は以下のとおりである(下線部改正部分)。

(1) 登録官(*)は、本法に基づいて制定される規則に従って特許所有者がする請求に基づき、誤記若しくは明白な錯誤を訂正する目的で、又は登録官が受け入れることができる他の理由で、その特許の明細書、クレーム又は図面を補正すること、又はその特許に関連する他の書類を補正することができる。
(1a) 第(1)項に基づく補正の請求が審査官による特許の再審査を必要とすると登録官が認めた場合、特許権者は、登録官の定める様式による再審査請求書を所定の期間内に所定の手数料の支払いとともに提出しなければならない。
(1b) (1a)に関わらず、出願人は自らの意思で、登録官が定める様式により、所定の手数料の支払いとともに特許の再審査を請求することができる。

(2) 登録官は、補正が補正前に開示されていた事項を超える事項を開示する効果を有する場合又はその特許の付与の時に与えられた保護を拡大する効果を有する場合は、本条に基づく補正を行ってはならない。
(3) 登録官は、以下の場合には、本条に基づく補正を行ってはならない。
(a) 裁判所において特許の有効性が争点となり得る手続が係属中である場合;又は
(b) 登録官に対し、第55a条に基づく異議申立手続が係属中である場合。

(4) (1)に基づくすべての請求には、所定の手数料が添付されなければならない。
(5) (4)に拘らず、特許所有者は、特許登録局が発行した書類における錯誤又は誤記を訂正するための請求に関しては、当該所有者がその錯誤又は誤記を発生させたか又は起こしたものである場合を除き、手数料を納付する義務を負わないものとする。

(*) 特許法第79A条でいう「登録官」については、特許法第8条(1)に「公社の総裁は、特許登録官とする。」と規定されており、日本国特許庁における特許庁長官に相当する。

 出願人は、特許の再審査を請求することができ(特許法第79A条(1b))、また、登録官は、登録官が受け入れることができる理由(裁量)により、明細書、クレーム又は図面の補正を受け入れることができる(特許法第79A条(1))。さらに、登録官は、誤記若しくは明白な錯誤を訂正する目的においても、明細書、クレーム又は図面の補正を認めることができる(特許法第79A条(1))。登録官がどのような場合に出願人による特許出願の補正(自発補正)を受け入れるのかについて確実なことはいえないが、マレーシア知的財産公社(MyIPO)の意図は、審査中の明細書(クレーム)をより明確なものとして提出させようとすることと考えられている(次の記事を参照)。

・マレーシアにおける2022年特許法改正の概要(前編)(2023.2.2)
URL:https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/27703/

 出願人は補正書を、登録官により指定された書式を使用して、規定の手数料の納付と共に提出しなければならない(特許規則46)。
 なお、補正は、原出願における開示範囲を超えてはならない(特許法第30条(3a))。
 
2.登録官の権限による登録特許の補正
 特許付与後の登録特許の補正(日本特許法での「訂正」に相当)は、特許法第79A条に定められている。出願人は補正書を、登録官により指定された書式にて、規定の手数料の納付と共に提出しなければならない(特許規則46A(1))。
 特許付与後の登録特許の補正については、時期的な制限がある。すなわち、裁判所において特許の有効性が争点となり得る手続が係属中である場合や、異議申立手続が係属中である場合は、補正をすることができない(特許法第79A条(3))。また、補正は、原出願における開示範囲を超えてはならない(特許法第30条(3a))。

■ソース
・マレーシア1983年特許法(2006年8月16日施行)(日本語)
https://www.jpo.go.jp/system/laws/gaikoku/document/mokuji/malaysia-tokkyo.pdf
※上記日本語版は、1986年特許改正法~2006年特許改正法に対応したものであるが、2022年特許改正法には対応していないため、次の2022年特許改正法を参照し、読み替えることが必要である。
・マレーシア特許改正法(2022年3月18日施行)(英語)
https://www.myipo.gov.my/wp-content/uploads/2022/03/02-PATENTS-AMENDMENT-ACT-2022.pdf
・マレーシア2011年特許規則(2011年2月15日施行)(日本語)
https://www.jpo.go.jp/system/laws/gaikoku/document/mokuji/malaysia-tokkyo_kisoku.pdf
※特許法と同様に、次の2022年特許改正規則を参照して、読み替える必要がある。
・マレーシア特許改正規則(2022年3月18日施行)(英語)
https://www.myipo.gov.my/wp-content/uploads/2022/03/PERATURAN-PERATURAN-PATEN-PINDAAN-2022.pdf
■本文書の作成者
日本国際知的財産保護協会
■協力
SKRINE(マレーシア法律事務所)
■本文書の作成時期

2022.12.23

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