国別・地域別情報

ホーム 国別・地域別情報 アジア 出願実務 特許・実用新案 マレーシアにおける特許出願の審査手続

アジア / 出願実務


マレーシアにおける特許出願の審査手続

2023年02月21日

  • アジア
  • 出願実務
  • 特許・実用新案

このコンテンツを印刷する

■概要
マレーシアにおける特許出願では、出願日の確定、方式審査(予備審査)、実体審査の順に手続が進むが、実体審査を受けるには、実体審査請求の手続を行わなければならない。同一の発明につき、オーストラリア、英国、米国、日本もしくは韓国における特許権、または、欧州特許を既に取得している場合には、実体審査に代えて修正実体審査請求を行うこともできる。
■詳細及び留意点

1.出願日の確定
 マレーシアでは、特許出願後直ちに、出願日を確定するための要件について審査される。必要書類(2022年7月1日以降の出願は配列表含む)の提出や手数料の納付等の要件を充足していない場合には3か月以内に補正するように求められ、適正に補正された場合には補正した日が出願日であるとして取り扱われる。期間内に補正しなければ、当該出願は最初からなかったものとされる。

 なお、出願書類で言及されている図面が出願書類に含まれていない場合は、出願人は3か月以内に欠落している図面を提出するよう求められる。出願人が期間内に該当の図面を提出した場合は当該図面の受領日が出願日となり、期間内に該当の図面が提出されなかった場合には、出願書類受領の日が出願日となる(この場合、登録官は当該図面に言及しないので、当該図面が出願書類に含まれないまま権利化される)(マレーシア特許法第28条、特許規則25)。

2.方式審査(予備審査)
 出願日が確定された特許出願は、方式審査(予備審査)において、規則に定められる事項(願書の記載事項、様式等)が審査される。方式要件を充足していない場合は3か月以内に補正するように求められ、適正な補正が行われなければ、出願は拒絶される(同法第29条、同規則26)。

3.実体審査
3-1.実体審査

 方式要件を具備していると認められると、出願日から18か月以内に、所定の料金を納付し、登録官により定められたフォームにより実体審査請求が行われた特許出願に対して実体審査が行われ、新規性、進歩性、産業上の利用可能性等が審査される。期間内に実体審査請求を行わない場合、出願は取下げたものとみなされる。なお、2022年3月18日施行の規則改正により対応外国出願の審査結果等の提出は任意となった(同法第29条A、同規則27)。
 
 実体審査請求手数料は、オンライン(E-FILING)の場合は950マレーシアリンギット、オンラインによらない(MANUAL)場合は1,100マレーシアリンギットである。

 実体審査に要する時間は、通常、審査請求からおよそ1年から2年である。

3-2.修正実体審査
 出願人または前権利者において、同一の発明について米国、英国、日本、豪州、韓国で特許権、または、欧州特許を取得している場合、出願人は出願日から18か月以内に、所定の料金を納付し、登録官により定められたフォームにより、実体審査に代えて修正実体審査を請求することもできる。修正実体審査請求の際には、出願人または前権利者に付与された特許証の証明付き謄本や証明付き英語翻訳文(英語以外の言語の場合)を添付しなければならない(同法第29A条(2)、同規則27A条)。

 なお、審査請求手数料は、オンラインの場合は600マレーシアリンギット、オンラインによらない場合は640マレーシアリンギットである。

 修正実体審査の場合は、進歩性の要件充足性は通常審査されず、修正実体審査に要する期間は、審査請求からおよそ6か月から1年程度である。

3-3.審査請求の猶予
 出願人は、登録官により定められたフォームを用いて手数料とともに、修正実体審査請求の請求期間について、猶予を求めることができる。猶予期間の上限は、マレーシアでの出願日または国際出願日から5年である。この期間に修正実体審査請求を提出できない場合は、期間終了の3か月前に実体審査請求の申請をすることができる(同規則27B)。

 猶予が認められるためには修正実体審査請求を行うべき期間内に猶予を求める申請を行う必要があり、対応外国特許出願がまだ登録になっていないまたは対応外国特許出願の結果を利用できない場合にのみ猶予が認められる(同法第29A条(6A))。

4.登録官による不利益通知(adverse report)(拒絶理由通知)への対応
 実体審査・修正実体審査において、実体要件を具備しないと審査官が判断した場合、その旨の報告書が出願人に送付され、当該発行日から3か月以内に意見書または補正書を提出する機会が与えられる。実体要件不備を解消できない場合、当該出願は拒絶され得る。(同法第30条(3)、同規則27C(5)、27D(5))。なお、審査期間中に審査官が発行する不利益通知の回数についての規定はない。

 なお、不利益通知への対応期間については、1度だけ延長が認められる(同法第30条(4))。延長の期間は6か月を超えてはならない(同規則第53(2))。

 期間延長を求める場合は登録官により定められたフォームを用いて手数料とともに申請しなければならない(同規則53(1))。申請手数料は、基本費用がオンラインの場合260マレーシアリンギット、オンラインによらない場合は290マレーシアリンギット、加算費用が1か月あたりオンラインの場合70マレーシアリンギット、オンラインによらない場合は80マレーシアリンギットである。

出願人は、明らかな誤記を訂正するため、または明細書、請求の範囲および要約書を実質的に訂正するために、明細書の補正を請求することができる(同法第79条1B)。補正請求する場合は、登録官により定められたフォームを用いて手数料とともに申請しなければならない(同規則46A)。

5.留意事項
 分割出願を行う場合、さらなる実体審査または修正実体審査の請求(分割出願の実体審査または修正実体審査の請求)は当該分割出願時に行う必要がある(同規則27(2)、27A(2))。審査請求が行われない場合は、分割出願は取り下げられたものとみなされる。(同規則27(2A)、27A(2A))。なお、分割出願は実体審査・修正実体審査の審査報告書の発行日から3か月以内に行わなければならない(同法第26B条、同規則19A)。

■ソース
マレーシア特許法(日本語)
https://www.jpo.go.jp/system/laws/gaikoku/document/mokuji/malaysia-tokkyo.pdf マレーシア特許規則(日本語)
https://www.jpo.go.jp/system/laws/gaikoku/document/mokuji/malaysia-tokkyo_kisoku.pdf Patents Act 1983(Incorporating all amendments up to 16 August 2006)
https://www.myipo.gov.my/wp-content/uploads/2016/09/PATENT-ACT-1983-ACT-291.pdf PATENTS (AMENDMENT) ACT 2022
https://drive.google.com/file/d/1RH6UYtOisWLFU7x0H3zs7qZYfpXjZGMc/view PATENTS REGULATIONS 1986 (Incorporated the changes made up to 15 February 2011)
https://www.myipo.gov.my/wp-content/uploads/2016/09/PATENT-REGULATIONS-1986.pdf PATENTS (AMENDMENT) REGULATIONS 2022
https://www.myipo.gov.my/wp-content/uploads/2022/03/PERATURAN-PERATURAN-PATEN-PINDAAN-2022.pdf INTELLECTUAL PROPERTY CORPORATION OF MALAYSIA PATENT REGISTRATION OFFICE NOTICE 1/2022
https://www.myipo.gov.my/wp-content/uploads/2022/03/NOTIS-KUAT-KUASA-AKTA-PATEN-PINDAAN-2022.pdf 料金
https://www.myipo.gov.my/en/part-i-patent-form-fees/ 実体審査請求のフォーマット(様式5)
https://www.myipo.gov.my/wp-content/uploads/2016/09/PF5.pdf 修正実体審査請求のフォーマット(様式5A)
https://www.myipo.gov.my/wp-content/uploads/2016/09/PF5A.pdf 実体審査請求猶予の申請フォーマット(様式5B)
https://www.myipo.gov.my/wp-content/uploads/2016/09/PF5B.pdf 期間延長のフォーマット(様式21)
https://www.myipo.gov.my/wp-content/uploads/2016/09/PF21.pdf 補正請求のフォーマット(様式16)
https://drive.google.com/file/d/1tbQ7ooKCLcBur-wWBsab2Tp5BWXBamOo/view 特許出願手続のフローチャート(MyIPOウェブサイト)
https://www.myipo.gov.my/en/patent-application-process-flowchart/?lang=en
■本文書の作成者
日本国際知的財産保護協会
■協力
Henry Goh & Co Sdn Bhd
■本文書の作成時期

2022.11.04

■関連キーワード