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韓国意匠出願における拒絶理由通知に対する対応

2013年08月27日

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■概要
韓国特許庁に意匠出願して拒絶理由通知を受ける場合、工業上利用することができる意匠に該当しない(意匠法第5条第1項本文)、引用意匠と同一類似(意匠法第5条第1項第1号、第2号及び第3号)、創作容易(意匠法第5条第2項)等を指摘する内容が多い。拒絶理由通知を受けた場合、通知書の発送日から2ヶ月以内に意見書及び補正書を提出することができ、この期間は1ヶ月ずつ2回まで延長が可能である。
■詳細及び留意点

【詳細】

 以下には、意匠出願時に受ける拒絶理由で多いものと、その理由解消のために採りうる方法や意見書・補正書の作成・提出時の留意点を説明する。

 

(1)工業上利用することができる意匠に該当しない場合(意匠法第5条第1項本文)

 図面の記載不備の場合、意匠を具体的に把握することができないため、「工業上利用することができる意匠に該当しない」という拒絶理由通知を受ける場合が多い。図面に対しては、日本に比べて韓国は非常に厳しく審査する傾向があるので特に注意が必要である。

(ⅰ)図面が正投影図法(韓国語「정투상도법(正投象図法)」)によって図示されていない、または図面が互いに一致しないという拒絶理由を受ける場合がある。図面が適切に図示されていない、または一致しない図面は、適切に修正して補正すればよい。しかし、拒絶理由を理解することができない時には、審査官と電話相談等で拒絶理由を明確に把握した後に補正することが重要である。

(ⅱ)出願時に斜視図を提出しなかった場合には、斜視図がないという拒絶理由を受けることになる。韓国では正投影図法で図面を提出する場合、斜視図は必須図面であるので、必ず提出しなければならない。

(ⅲ)「6面図に図示された陰影線を削除しなければならない」という拒絶理由を受ける場合がある。韓国では斜視図を除く6面図では、陰影線が許容されないため、削除しなければならない。

(ⅳ)提出された図面によって意匠を具体的に把握するのが難しい場合には、「意匠説明欄に物品の用途及び使用方法等を記載すべし」という旨の拒絶理由を受ける。このときは、物品の用途及び使用方法を簡略に記載して提出することで解消しうる。また、日本への基礎出願で物品の用途及び使用方法等を記載していたら、これを翻訳して提出すればよい(図面の書き方の詳細は、本データベース内コンテンツ「韓国における意匠出願時の図面作成要領」参照)

 

(2)引用意匠と同一類似(意匠法第5条第1項第1号、第2号及び第3号)

 出願意匠が引用意匠と同一または類似するという理由で拒絶理由通知を受ける場合がある。このときは、物品及び形態の同一類似を要素として検討することになる。意見書提出時に参考資料として、類似の判例や日本等の外国で登録された事例等を提出して対応する場合が多い。

 類否判断については、「意匠の類似の有無は意匠を構成する要素を全体的に対比観察して、その各意匠が見る人に互いに相異した審美感を感じさせるものであるか否かを考えて判断しなければならず、この場合、その具体的な判断基準としては、見る人の注意を最も引きやすい部分を要部として把握し、その各要部を対比観察するとき、一般需要者が感じる美感に差が生ずることができるかの観点からその類似性の有無を決定しなければならない。」とする最高裁判決がある(最高裁判所1990.5.8 宣告89후2014 判決)。

 

(3)創作容易性(意匠法第5条第2項)

 出願意匠が「広く知られた周知形状にすぎない」という旨の拒絶理由通知を受ける場合がある。このような場合には、通常、当該意匠の創作過程の説明と共に、物品自体の形状についての説明と、物品の用途及び機能についての説明を行って拒絶理由を解消するよう努める。

 最高裁判所の判例は、「意匠法第5条第2項で国内で広く知られた形状・模様・色彩またはこれらの結合から当業者が容易に創作することができるものは意匠登録を受けることができないように規定した趣旨」は、「周知の形状や模様をほとんどそのまま利用したり、転用して物品に表現したり、これらを物品に利用または転用することにおいて、当業者であれば誰でもその意匠がその物品に合うようにするために加えることができる程度の変化にすぎないものは意匠登録を受けることができない」ことにあると判示している(最高裁判所2001. 4. 10. 宣告 98후591 判決)。言い換えると、当業者がそれと同じ形状や模様の意匠を容易に創作することができると考えることが難しく、また特別な美感的価値を持っているとみられる場合には、登録を受けることが可能ということである。

 

(4)類似意匠と関連した拒絶理由(意匠法第7条第1項)

 出願された意匠が、自己の登録意匠(または出願意匠)にのみ類似する場合には、「登録意匠(または出願意匠)を基本意匠とする類似意匠に補正すべし」という旨の拒絶理由通知を受けることになる。このときは、審査官が指摘するように類似意匠に補正すれば拒絶理由は解消する(本データベース内コンテンツ「韓国における類似意匠制度について」参照)。

 

(5)意匠無審査対象物品と関連した拒絶理由(意匠法第9条第6項)

 意匠無審査対象物品を意匠審査登録出願した場合、または意匠審査対象物品を意匠無審査登録出願した場合には、拒絶理由通知を受けることになる。このときは、該当物品に応じて意匠無審査登録出願または意匠審査登録出願に補正すれば拒絶理由は解消し得る(本データベース内コンテンツ「韓国における意匠の無審査登録制度」参照)。

 

(6)一意匠一出願違反(意匠法第11条第1項)

 「1出願に2以上の形状、模様、色彩またはその結合を表現したものと認められる」という内容の拒絶理由通知を受ける場合がある。この拒絶理由は、例えば、部分意匠における蓄電池のプラス極とマイナス極、はさみの指が入る両部分等、図面上、互いに分離している2つ以上の部分が表されている場合に出されることが挙げられる。

この場合、全体としての意匠創作上の一体性、すなわち形態的一体性、または機能的一体性を主張することにより拒絶理由を解消する場合が多い。

 

(7)物品の名称が不適切という拒絶理由(意匠法第11条第2項)

 意匠の対象となる物品の名称が不適切であると拒絶理由通知を受ける場合がある。このときは、意匠法施行規則の別表4で例示された物品名を参考にして適した物品に補正することで拒絶理由は解消し得る(審査官から適切な標示の例示が行われる場合も多い)。なお、部分意匠の場合は、全体の一般名称を記載する。

 

(8)一部物品が拒絶理由に該当する場合

 複数意匠登録出願で複数の意匠物品のうち、いずれか一つの物品が拒絶理由に該当するとして拒絶理由通知を受けた場合は、拒絶理由を受けた物品について分割するか削除する必要がある。そうしないと、登録可能な物品を含む全体が拒絶されてしまうので注意が必要である(本データベース内コンテンツ「韓国における複数意匠登録出願制度について」参照)。

 

(9)無審査登録出願の場合

 無審査登録出願であっても、出願後の方式審査では一部実体審査も行うために拒絶理由通知を受ける場合がある。例えば、他人の著名な商標や著作物等を含む意匠、または国内で広く知られた形状・模様・色彩またはこれらの結合によって容易に創作することができる意匠は、登録を受けることができない(本データベース内コンテンツ「韓国における意匠の無審査登録制度」参照)。

 

(10) 拒絶理由通知への対応の期限

 拒絶理由通知を受けた場合、通知書の発送日から2ヶ月以内に意見書及び補正書を提出することができ、この期間は1ヶ月ずつ2回まで延長が可能である。

 

【留意事項】

 審査官の拒絶理由を検討中に、拒絶理由の中に不明確な部分があった場合は、現地代理人に審査官と電話面接をする等して拒絶理由の内容を明確にするよう指示し、拒絶理由の内容を把握してから補正することが望ましい。

■ソース
・韓国意匠法
・韓国意匠法施行規則
・最高裁判所1990.5.8 宣告89후2014 判決
http://glaw.scourt.go.kr/jbsonw/jbsonc08r01.do?docID=351281482728C0FCE0438C013982C0FC&courtName=???&caseNum=89?2014&pageid
■本文書の作成者
崔達龍国際特許法律事務所
■協力
一般財団法人比較法研究センター 菊本千秋
■本文書の作成時期

2013.1.23

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