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韓国での特許出願における拒絶理由通知に対する対応

2013年10月08日

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■概要
特許出願の審査過程で通知されることが多い拒絶理由を類型化すると、新規性・進歩性欠如、多項従属項違反、明確性違反(技術内容不明、技術用語不明等)等があげられる。拒絶理由通知を受けた場合、通知書の発送日から2ヶ月以内に意見書及び補正書を提出することができ、この期間は1ヶ月ずつ4回まで延長が可能である。
■詳細及び留意点

 【詳細】

 以下には、通知されることが多い拒絶理由について、その理由解消のために採りうる方法や意見書・補正書の作成・提出時の留意点を記載する。

 

(1)新規性・進歩性欠如の拒絶理由

 新規性・進歩性欠如の拒絶理由通知を受けた場合は、拒絶理由を細密に分析し、出願内容と引用文献とを対比をして対応を検討するのが望ましい。

 韓国特許庁における進歩性の判断は非常に厳しいので慎重な対応が必要となる。拒絶理由の中に拒絶対象の独立項と登録可能な従属項が共にある場合は、これらの項を結合して拒絶理由を解消することが多い。しかし、拒絶対象項と登録可能な項が互いに別のカテゴリー(例:片方は装置で片方は方法等)の請求項であれば結合することができないため、まず登録可能な項だけで補正書を提出して登録査定を受け、拒絶される可能性が高い項については分割出願し、それぞれ別で進行するのが望ましい。また、拒絶対象請求項の請求範囲を縮小補正する場合もあるが、このときには進歩性欠如の指摘を十分に克服することができるようにしなければならない。

 また、外国人が韓国に出願する場合、韓国代理人が発明者と直接対話をせず作成した明細書で拒絶理由通知書を受けたときには、出願に係る発明と引用文献との技術対比において、発明者が積極的に関与することが望ましい。

(2)多項従属項違反の場合

 韓国では多項従属項(韓国語「다중종속항」(多重従属項))を認めていない。しかし請求項の記載においては、一見すると多項従属項に問題がないようにみえるが、結果的に多項従属項になる場合がたびたびあるため、記載の際には十分注意を払う必要がある(本データベース内コンテンツ「韓国における特許出願の請求項の記載方式」参照)。

 

(3)明確性違反の場合

 拒絶理由が、「技術内容不明」、「技術用語不明」等、明確性違反を指摘するものである場合は、翻訳及び言語の違いに起因することも多い。これは補正で比較的簡単に解決することができるケースも多いが、翻訳や言語等の違いにより審査官が補正書や意見書の意図を正確に把握できないことに起因して意見の相違が生じることもままあるので、補正書提出の前に、審査官と電話面談等で審査官の意見を確認することが望ましい。

 例えば、従前は漢字用語をそのまま使用していたが、徐々に漢字を使用せず、ハングル化されているため、これに合わせなければならない。また、ハングル表現が適切でない場合もあるが、そのようなときには、括弧で漢字または英語を挿入するのがよい。

 なお、明確性違反を理由とする場合は、これを意見書・補正書等で解消した後に新規性及び進歩性欠如等の拒絶理由が通知される場合がある。即ち、一度目の拒絶理由通知前の段階では審査官は発明の内容を十分に把握できないために、適切な引用文献を探すことができないためである。

 

(4)「プログラム」に対する拒絶理由

 韓国では現在、「プログラム」自体は特許を受けることができない。よって、拒絶理由通知を受ければ、「プログラム」は「プログラムが記録された記録媒体」等に補正することが一案である。

 

(5)最後の拒絶理由を受けた場合

 審査官の拒絶理由通知書に対して意見書及び補正書を提出したが、提出した補正書によって最後の拒絶理由を受ける場合がある。この時は、誤記の訂正、請求範囲の減縮、不明瞭な部分の明確化等、補正できる範囲が極めて制限されるため、ここで適切な対応ができなければ拒絶査定を受けることになる。したがって最後の拒絶理由の内容が少しでも不明確な場合には、拒絶理由の内容や審査官の意志を正確に把握するよう、現地代理人に指示を出すことが望ましい。

 

(6)意見書・補正書案の確認

 韓国代理人により作成された意見書案や補正書案を出願人側において検討する場合、請求項の補正書案は発明者も確認することが望ましい。他方、ハングルで作成された意見書案や補正書案を英語又は日本語に翻訳するには、翻訳料金が発生するのであるから、特に、意見書案については、すべてを出願人側において翻訳して内容を検討するのではなく、発明の重要度、費用対効果、時間的ロス等を勘案して翻訳の要否を判断するのも一案である。

 

(7)拒絶理由通知への対応の期限

 拒絶理由通知を受けた場合、通知書の発送日から2ヶ月以内に意見書及び補正書を提出することができ、この期間は1ヶ月ずつ4回まで延長が可能である。

■ソース
・韓国特許法
・韓国特許法施行令
■本文書の作成者
崔達龍国際特許法律事務所
■協力
一般財団法人比較法研究センター 菊本千秋
■本文書の作成時期

2013.1.23

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