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韓国での組物の意匠の保護
2013年06月14日
■概要
(本記事は、2018/10/23に更新しています。)URL:https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/16025/
意匠は、原則として1意匠1出願主義を取っているため2つ以上の物品を1出願によって登録を受けることはできない。しかし、この原則を貫くと、2つ以上の物品が組物として同時に使用される物品に関する保護をすることができなくなる。このような理由から多数の物品が統一的で、統合的な美観を新たに創出する意匠は、組物(韓国語「一組の物品」)の意匠として保護している。
■詳細及び留意点
【詳細】
(1) 組物(韓国語「한벌의물품(一組の物品)」としての意匠登録が認められる場合
2つ以上の物品が組物として同時に使用される場合、当該組物の意匠が一組全体として統一性があるときには1意匠として意匠登録を受けることができる(意匠法第12条第1項、意匠審基準第15条)。
(ⅰ)各構成物品の形状・模様・色彩又はこれらの結合が同一の表現方法で表現されて、組物全体として統一性があると認められるもの
(ⅱ)各構成物品が相互集合して一つの統一された形状・模様等を表現することによって、組物全体として統一性があると認められるもの
(ⅲ)各構成物品の形状・模様・色彩又はこれらの結合によって観念的に関連がある印象を与えることによって、組物全体として統一性があると認められるもの
組物の意匠として出願することができる物品は、具体的には下記のもの(意匠法施行規則の別表5で定めている)に限られる(意匠法施行規則第9条第1項)。
1. 一組の女性用韓服セット
2. 一組の男性用韓服セット
3. 一組の女性用下着セット
4. 一組の装身具セット
5. 一組のカフスボタン及びネクタイピンセット
6. 一組の喫煙用具セット
7. 一組の寝装セット
8. 一組のコーヒーセット
9. 一組の花采用セット
10. 一組の御膳セット
11. 一組の茶器セット
12. 一組の調味料容器セット
13. 一組の飯椀と汁椀セット
14. 一組の酒器セット
15. 一組のナイフ、フォーク及びスプーンセット
16. 一組のさじ及び箸セット
17. 一組の祭器セット
18. 一組の洗面化粧台セット
19. 一組の机と本立てセット
20. 一組の居間用家具セット
21. 一組のテーブルセット
22. 一組の事務用家具セット
23. 一組の応接セット
24. 一組のテーブルと椅子セット
25. 一組の台所家具セット
26. 一組の書道用具セット
27. 一組の筆記具セット
28. 一組のオーディオセット
29. 一組の個人用コンピューターセット
30. 一組のテレビ受像機と台セット
31. 一組の門扉と門柱セット
32. 一組のトイレ掃除用具セット
33. 一組の洗面用具セット
34. 一組の電気歯ブラシセット
35. 一組のキャンプ用食器セット
36. 一組の自動車用床マットセット
37. 一組の野外用テーブル及び椅子セット
38. 一組の自動車用シートカバーセット
39. 一組の便器用付属品セット
40. 一組のゴルフクラブセット
41. 一組のドラムセット
42. 一組の事務用具セット
43. 一組の自動車用ペダルセット
44. 一組の車用オーディオ器機セット
45. 一組のスピーカーボックスセット
46. 一組の専門運動服セット
47. 一組の手の爪・足の爪美容器具セット
48. 一組のかばんセット
49. 一組の財布及びベルトセット
50. 一組の化粧用ブラシセット
51. 一組の櫛セット
52. 一組の理髪器具セット
53. 一組の髭剃り用具セット
54. 一組の授乳用品セット
55. 一組の出産準備物セット
56. 一組のカーテン及びブラインドセット
57. 一組のトロフィー・賞牌セット
58. 一組の額縁セット
59. 一組の整理用収納箱セット
60. 一組のアイスボックスセット
61. 一組の台所用密閉容器セット
62. 一組のワイングラスセット
63. 一組の台所用包丁セット
64. 一組の台所用玉じゃくし及びフライ返しセット
65. 一組の男性用経衣セット
66. 一組の女性用経衣セット
67. 一組の寝室用家具セット
68. 一組の家具用取っ手セット
69. 一組の運動用アレイ及びバーベルセット
70. 一組のゲーム機セット
71. 一組の製図用具セット
72. 一組のスィッチ及びコンセントセット
73. 一組の園芸用具セット
74. 一組の手動工具セット
75. 一組のドライバーセット
76. 一組の腕時計セット
77. 一組の絆創膏セット
78. 一組のカッピング器セット
79. 一組のフライパンセット
80. 一組の船舶用操舵室家具セット
81. 一組の船舶用寝室家具セット
82. 一組の船舶用休憩室家具セット
83. 一組の船舶用船員食堂家具セット
84. 一組の自動車用ダッシュボードパネルセット
85. 一組のレジャー自動車の寝室用家具セット
86. 一組の台所用作付け(built-in) 物品セット
(2)構成物品に関する要件
組物の意匠として登録を受けるためには、構成物品について次の要件を満たす必要がある。すなわち、組物の構成物品は、(1)に記載した施行規則で定めた一組の物品セットのように、組物を構成する物品中で2つ以上を備えなければならず(同種の物品が2つ以上でもよい)、構成物品以外の物品が含まれる場合には、組物として定められた物品と同時に使用されるのが商取引慣行上当業界で認められることができる場合には正当な組物とみる(意匠審査基準第15条)
(3)出願書類
組物の意匠図面は、各構成物品の図面のみで組物の意匠を充分に表現することができる場合には、構成物品ごとに一組(正投象図法(韓国語「정투상도법(正投象図法)」)である場合は6面図及び斜視図)の図面を提出し、各構成物品が相互集合して一つの統一された形状・模様又は観念を表現する場合には、構成物品が組み合わされた状態の一組の図面と各構成物品についての一組の図面を提出しなければならない。
例えば、コップとコースター(コップ受け)のように、一組の構成物品が各々セットである場合は、コップとコースター(コップ受け)を各々一組の図面を作成する。しかし、コップ2つがまるで一つのコップのように相互結合した形態になっている場合には、この結合した状態の図面一組も追加で提出しなければならない。
また、各構成物品の一つの意匠は、図面や3Dモデリング図面で表現することができる。ただし、一つの意匠を図面と3Dモデリング図面を混合して表現してはならず、図面又は3Dモデリング図面のうち一つに統一して表現しなければならない。
(4)組物意匠の効果
組物の意匠権は組物全体について成立するので、登録した組物の意匠と同一又は類似の他人の組物の意匠に対して権利行使ができるが、構成物品ごとに意匠権が成立しているわけではないので、構成物品の一つの意匠と同一又は類似する他人の意匠に対して権利行使することはできない。
【留意事項】
(1) 組物の意匠は、全体として1意匠権のみが発生し、それぞれの構成物品に関する意匠権は発生しないため、それぞれの構成物品意匠に関する意匠権を確保するためには、各構成物品の意匠も別途に出願しなければならない。
(2) 上記組物に該当するかどうかを必ず確認して出願しなければならない。
■ソース
・韓国意匠法・韓国意匠法施行規則
・意匠審査基準
・部分意匠及び組物意匠の出願要領(崔達龍国際特許法律事務所ウェブサイト)
■本文書の作成者
崔達龍国際特許法律事務所■協力
一般財団法人比較法研究センター 菊本千秋■本文書の作成時期
2013.01.21