アジア / 出願実務 | アーカイブ
台湾における実用新案登録出願制度概要
2012年07月31日
■概要
(本記事は、2022/11/24に更新しています。)URL:https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/27141/
実用新案(中国語「新型専利」)出願手続は、一般的に、方式審査、形式審査、許可処分、公告という順で進められる。なお、実体審査に代わりうるものとして技術評価書がある。
■詳細及び留意点
(1)出願
特許出願の際の提出書類は、願書、明細書、図面である(専利法106条1項)。必要に応じて、委任状(代理人を通じて出願する場合)や優先権証明書なども提出する。明細書及び図面が日本語や英語などの外国語で提出した場合、中国語による翻訳文を提出する(専利法第106条第3項)。
(2)方式審査(中国語「程序審査」)
主に様式、申請手数料、原本であるかなどの確認が行われる(専利法施行細則第2条第2項、同細則第4条、同細則第14条~同細則第20条など)。必要書類充足が確認されると、出願日が認定される(専利法第106条第2項~第4項)。
(3)形式審査(中国語「形式審查」)
(ⅰ)要件
物品の形状、構造又は装置に属するか、公序良俗又は衛生を害するか、記載開示要件に違反するか、単一性を具備するかなどについて審査される(専利法第97条第1項)。
(ⅱ)補正及び意見書
形式要件を具備しない場合、その旨の通知がなされ(専利法第111条)、これに対し、出願内容を補正又は意見書を提出することができる(専利法第120条で準用する第43条第3項及び第46条第2項)。
(ⅲ)処分
意見書又は補正書を提出しても形式要件不備が解消されない場合は、実用新案権を付与しない旨の処分書が送達される(専利法第111条、同法第112条)。形式要件の不備が確認できない場合は実用新案権付与の処分がなされ、その旨の公告がなされる(専利法第113条)。
(4)公告
実用新案権を付与する旨の処分書を送達した翌日から3ヶ月以内に、証書料と初年度の年金を納付することで公告される(専利法第113条)。公告日から実用新案権は付与され、存続期間は出願日当日から10年間である(専利法第114条)。
(5)実用新案技術評価書
(ⅰ)請求人
誰でも請求できる(専利法第115条第1項)。
(ⅱ)請求時期
公告日から実用新案権が消滅するまでが原則であるが、登録後公告前に請求手続を行っても受理される。無効審決が出ても、無効審決が確定するまで権利は存続するため、無効審判に対する行政救済手続を行えなくなるまで、実用新案技術評価書の請求は可能である(「実用新案技術評価書」Q&A(中国語「『新型專利技術報告』答客問」)第4問回答の1及び2)。
(ⅲ)優先審査
非権利者が業として当該実用新案を実施している場合、出願人は優先審査を請求することができ、優先審査の結果は6ヶ月以内に出されることになっている(専利法第115条第4項、施行細則第43条)。
(ⅳ)審査内容
新規性(専利法第22条第1項)、進歩性(專利法第22条第2項)、先願主義(専利法第31条)である(専利法第115条第4項)。
(ⅴ)効果
技術評価書を提示して権利を行使する実用新案権者は、当該権利が取り消された場合、その行為に過失はなかったと推定される(専利法第117条)。
【留意事項】
台湾の実用新案登録出願も、実体審査を行わず、考案に該当するなどの基礎的な要件のみを審査して登録を認め、実用新案技術評価書を権利行使前に入手する仕組みとなっている。実用新案技術評価書の審査において優先審査が用意されているので、第三者が自社技術を無断で実施している場合に、早期に対応する手段として実用新案制度は重宝すると思われる。
■ソース
・専利法・専利
・専利審査基準
・台湾特許庁ウェブサイト
・処理期限
http://www.tipo.gov.tw/ch/AllInOne_Show.aspx?path=818&guid=d0896463-61d2-4ed0-ad0d-0454d7ef27ca&lang=zh-tw ・行政救済手続き
http://www.tipo.gov.tw/ch/MultiMedia_FileDownload.ashx?guid=f32f847a-928f-4b15-845c-2a2339c40dd7.pdf ・「実用新案技術評価書」Q&A
http://www.tipo.gov.tw/ch/MultiMedia_FileDownload.ashx?guid=89be38b6-83d6-473b-9198-456ecb6d0a98
■本文書の作成者
聖島国際特許法律事務所(作成:2012年7月27日)特許庁総務部企画調査課 根本雅成(改訂:2013年6月11日)
■協力
一般財団法人比較法研究センター 木下孝彦■本文書の作成時期
2012.07.27