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中国における意匠の優先権主張について

2013年05月17日

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■概要
(本記事は、2022/4/12に更新しています。)
 URL:https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/22946/

中国では、意匠出願の優先権主張は外国優先権主張に限られる(専利法第29条第1項)。外国基礎意匠出願の優先権を主張する場合、中国意匠出願と外国基礎意匠出願とが同一の物品に関するものであり、且つ、中国出願に係る意匠が外国基礎意匠出願に明瞭に示されているという2つの要件を満たさなければならない。
■詳細及び留意点

(1)優先権主張(中国語「要求优先权」)の手続き

優先権を主張する場合、専利法第29条第1項、第30条、専利法実施細則第31条、第32条、及びパリ条約における関連規定を満たす必要がある(審査指南第1部分第3章5.2)。具体的には以下の通りである。

 

(i)第1国出願日から6ヵ月以内に中国に出願しなければならない(専利法第29条第1項)。

 

(ii)優先権を主張する場合、出願人はその出願時に書面で声明をし、かつ中国出願の出願日から3ヵ月以内に基礎出願の出願書類の副本を提出しなければならない(専利法第30条)。

 

(iii)優先権を主張する場合、出願人が提出する基礎出願の出願書類の副本について、元の受理機構の証明を受けなければならない。特許・実用新案については、デジタルアクセスサービス(DAS)を利用し、中国特許庁(中国語「国家知识产权局」)と基礎出願の受理機構と締結した協議に従い、中国特許庁は電子交換などの方法を通じて当該受理機構から優先権証明書を取得できる場合、出願人が優先権証明書を提出したものとみなされるが、意匠出願については、現時点ではDASは利用できず、電子交換によって副本を省略することはできない(実施細則第31条第1項)。

 

(iv)優先権を主張する出願人が基礎出願の出願人と一致しない場合、中国出願に係る出願人が基礎出願の承継人であることを証するための証明資料(優先権譲渡証明書(中国語「优先权转让证明」)を提出しなければならない(詳細は「優先権主張の手続き(外国優先権)」参照)。

 

(v)出願人は1つの意匠出願において、複数の優先権を主張することもできる(実施細則第32条第1項)。

 

(vi)優先権を主張する中国出願の出願日から2ヶ月以内、または受理通知書を受取った日から15日以内(期限の遅いものを基準とする)に、出願費の納付と同時に優先権主張の費用を納付しなければならない(実施細則第95条、審査指南第1部分第1章6.2.4)。

 

(2)意匠の優先権主張成立の要件

(i)中国において意匠の優先権を主張する場合、中国意匠出願と外国基礎意匠出願とが同一の物品(中国語「产品」)に関するものであり、且つ、中国出願に係る意匠が外国基礎意匠出願に明瞭に示されているという2つの要件を満たさなければならない(審査指南第4部分第5章9.2)。

例えば、外国基礎意匠出願に斜視図、正面図、背面図、左側面図のみがあり、中国出願に平面図と右側面図を追加した場合、中国出願の正面図、背面図、左側面図及び斜視図が外国基礎意匠出願のものと同一であり、かつ平面図及び右側面図の形態が外国基礎意匠出願の斜視図に明瞭に表れているのであれば、優先権主張は成立する。

また、外国基礎意匠出願において意匠の簡単な説明(中国語「简要说明」)を備えていない場合でも、中国の専利法実施細則の規定に則して提出した簡単な説明が基礎出願書類における図面又は写真に示される範囲を超えていなければ、優先権の主張には影響しない(実施細則第31条第4項)。

 

(ii)外国基礎意匠出願が中国では認められていない部分意匠であったとしても、中国出願時に当該部分意匠の点線を実線に変更して全体意匠として出願する場合には、優先権を主張できる。

 

(iii)なお、中国出願と外国基礎意匠出願との意匠の物品名は完全に同一でなくてもよい。例えば、基礎出願が自動車用タイヤである場合、中国出願時に「タイヤ」としてもよい。また、外国基礎意匠出願の意匠がタイヤトレッドの部分意匠である場合、中国出願時に点線を実線に変更して全体意匠として出願することとなるので、これに合わせて「タイヤトレッド」という部分の名称を物品全体の名称「タイヤ」に変更することができる。

 

(iv)中国出願と外国基礎意匠出願との図面は、異なる製図方法により作成したものであってもよいが、表現する意匠は全く同一でなければならない。

 

【留意事項】

日本での部分意匠出願を優先権主張の基礎として中国へ出願する場合、中国では部分意匠制度がないので全体意匠として出願することが必要であり、部分意匠に表わされた点線部分については、これを削除する手法と実線に変更する手法が考えられる。

前者の場合、全体形状としては実線を維持して基礎出願意匠との同一性を保ったにもかかわらず、点線部分を削除することにより意匠としての同一性を失ったとされた審判例が存在するなど、案件により判断が異なりうるため、後者の点線を実線に変更する手法を採る方が安全であると思われる。その際には、基礎出願における実線部分を共通とし、点線部分にバリエーションを持たせた幾つかの意匠を類似意匠に係る多意匠一出願として出願し、部分意匠における実線部分を意匠的要部として主張することにより、部分意匠に近い効果を期待することができる。

■ソース
・中国専利法
・中国専利法実施細則
・中国専利審査指南
  第1部分第1章 専利発明出願の方式審査
  第1部分第3章 意匠専利出願の方式審査
  第4部分第5章 無効宣告手続における意匠の審査
■本文書の作成者
北京林達劉知識産権代理事務所
■協力
三協国際特許事務所 弁理士 川瀬 幹夫
特許庁総務部企画調査課 山中隆幸
一般財団法人比較法研究センター 不藤真麻
■本文書の作成時期

2013.01.24

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