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(台湾)複数の訳語に対応する語が誤訳の原因となる事例(誤訳事項の公告後訂正について)

2012年07月31日

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■概要
例えば、電気分野におけるconverterについて「轉換器」や「換流器」、coupleについて「連接」や「耦接」、thermal dissipation について「熱耗」や「熱消散量」のような複数の訳語が考えられるが、このような語については前後の文脈から最も適切な語を選ぶ必要がある。また、「AC-DC」や「MOSFET」のような各国でそのまま通用すると考えられる技術略語については無理に訳さない方が良いこともあり得る。関連する訳語について調整する必要がある場合は、特許が公告された後の訂正は要件が厳しいため、特許が公告される前に補正することが重要である。
■詳細及び留意点

特許査定を受けた後に、特許権者は台湾特許庁に対して、特許明細書の内容に誤訳・誤記があるか否かについては、特許出願者が出願日に提出した英語の明細書を参考にすることができると主張し、さらに明細書の中の「轉換器」等の用語は明らかな誤記であるとして訂正請求をした。これに対して台湾特許庁は、公告後の段階でいう誤記とは、外部文書(原文の明細書も含む)に頼らず、中国語明細書の全体の内容及び脈絡のみであり、これは明らかに間違いであると発覚できる場合に限られており、当該中国語明細書に照らしあわせた場合、本件に関連する名詞の翻訳は明らかな間違いであるとはいえないとして、訂正を認めなかった。

 

 特許権者はこのような台湾特許庁の決定を不服として台北高等行政裁判所へ訴えを提起したが、台北高等行政裁判所も、翻訳用語の変更は、台湾専利法第64条第1項第2号に規定された公告後の誤記誤訳の訂正にあたらず、当該訂正を許可すべきではないと、台湾特許庁の決定を支持した。

 

参考(台北高等行政法院の判決理由より抜粋):

(二)本件原告於94年10月28日提出之更正本與其原核准公告之專利說明書相較,共計有多達40處之更正(詳細更正內容如附件原處分書說明第二、(二)至二、之記載)。依原告94年10月28日申復理由書記載,其係依專利法第64條第1項第3款之規定主張說明書之文字包含有翻譯錯誤及漏譯等問題而申請更正,原告另於95年3 月31日申復理由書主張有關專利名稱、翻譯名詞及原說明書第13頁至第17頁之更正修正為依專利法第64條第1項第2 款之誤記事項之訂正等語。但查,本件原告將專利名稱由「建構成由複數個形式之牆上轉換器直流供電之鋰離子/鋰聚合物電池充電器」更正為「建構以多型式牆上轉接器DC供電之鋰電子/ 鋰聚合物電池充電器」)、將翻譯名詞converter由「轉換器」更正「換流器」、couple由「連接」更正為「耦接」、thermal dissipation 由「熱耗」更正為「熱消散量」、「交流至直流」更正為「AC-DC」、「金屬半導體場效電晶體」更正為「MOSFET」及原說明書第13頁14行至第17頁第7 行之更正,雖主張對應其英文明書,應屬誤記事項之訂正,但依前專利審基準第二篇第六章2.3.2 已指明所謂誤記事項,指不必依賴外部文件即可直接由明書或圖式的整體容及上下文,立即察覺有明顯錯誤的容,不須多加思考即知應予訂正及如何訂正而回復原意,本件依原公告本有關上開專利名稱、翻譯名詞及原明書第13頁第14行至第17頁第7 行系爭案實施方式之容,並無明顯的錯誤,則原告主張依相對於原專利說明書所依據之英文說明書而認該等更正應屬前揭專利法第64 條 第1 項第2 款規定誤記事項之更正,核屬無據。

(日本語訳「(二)本件原告が民国94年10月28日に提出した補正書及びその元の本件公告の明細書を比較すると、補正箇所は合計40に達する(補正内容の詳細は原処分書の説明第二(二)から二に記載されている)。原告は民国94年10月28日の意見書において、専利法第64条第1項第3号の規定に基づき明細書中の文章に誤訳及び翻訳漏れが含まれている等の問題があり補正を求めたと主張しており、また原告は民国95年3月31日の意見書において発明の名称、翻訳名詞及び原明細書の第13頁から第17頁の補正は専利法第64条第1項第2号の誤訳訂正による等と主張している。しかし、これについては、本件原告は発明の名称の『建構成由複數個形式之牆上轉換器直流供電之鋰離子/鋰聚合物電池充電器(複数個の)』を『建構以多型式牆上轉接器DC供電之鋰電子/ 鋰聚合物電池充電器』に補正し、converterという翻訳名詞の「轉換器」を「換流器」に補正し、coupleの「連接」を「耦接」に補正し、thermal dissipationの「熱耗」を「熱消散量」に補正し、「交流至直流」を「AC-DC」に補正し、「金屬半導體場效電晶體」を「MOSFET」に補正し、原明細書の第13頁第14行から第17頁第7行を補正しようとしていることについて、これは英語の明細書に対応し,誤記事項訂正に該当すると主張しているが、前記審査基準の第二編第六章2.3.2で誤記事項とは、他の文書によることなく直接明細書又は図面全体の内容及び文脈から明らかな誤記があるとすぐ分かり、それ以上の考えを必要とせず、訂正すべきまたはどのように訂正すること元の意味になるのかがすぐに分かるものを言うとしており、本件公告本による本件発明の名称、翻訳名称及び原明細書の第13頁第14頁から第17頁第7行の係争特許の実施方式の内容には明らかな錯誤はなく、原特許明細書の元となった英語の明細書によりこれらの補正が前記専利法第64条第1項第2号の規定の誤記事項訂正に該当するとの原告の主張は根拠がない。」

 

【留意事項】

 技術用語は一対一で対応していないことも多く、ある技術用語について複数の訳語が考えられる場合には特に注意して訳語を選ぶことが重要である。

 

 また、特許が公告された後の訂正は、特許が公告される前の訂正より要件が厳しく、明細書の原文に対する誤訳のみを理由として、台湾専利法第64条第1項第2号をもって訂正審判を請求すべきではない。そのため、不利な認定を受けないよう、特許が公告される前に翻訳用語について最終確認することが重要である。

■ソース
台北高等行政法院判決2007年12月20日付民国96年度訴字第138号
■本文書の作成者
特許庁総務部企画調査課 古田敦浩
聖島国際特許法律事務所 
一般財団法人比較法研究センター 木下孝彦
■本文書の作成時期
2012.07.23
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