アジア / 出願実務
韓国における非アルファベット文字を含む商標の取り扱いについて(後編)
2023年01月19日
■概要
カタカナを含む商標は、日本ブランドであることを識別させる手段として有効であるため、韓国におけるカタカナを含む商標の取得ニーズは極めて高い。本稿では、カタカナなどの非アルファベット文字を含む商標の類否判断基準について、商標審査基準および判例とともに前編、後編に分けて紹介する。後編では、外国語マーク、非アルファベット文字およびカタカナの類否について、外国語商標、非アルファベット文字商標およびカタカナ商標の識別力について紹介する。韓国商標審査基準の記載個所、標章の類否判断に関する基本的な考え方、標章の類否判断における(外観、称呼、観念)の認定、外観、称呼、観念の類否については、「韓国における非アルファベット文字を含む商標の取り扱いについて(前編)」(https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/27579/)をご覧ください。■詳細及び留意点
韓国商標審査基準の記載個所、標章の類否判断に関する基本的な考え方、標章の類否判断における(外観、称呼、観念)の認定、外観、称呼、観念の類否については、「韓国における非アルファベット文字を含む商標の取り扱いについて(前編)」をご覧ください。
5.外国語マーク、非アルファベット文字およびカタカナの類否について
日本の商標審査基準(日本)の第3「十 第4条第1項第11号(先願に係る他人の登録商標)」に含まれている掲題類否について、韓国の商標審査基準は、以下のとおりである。
(1) 対応する事項が記載された審査基準の場所
商標審査基準(韓国)第10部 補則 第2章「2. 外国語商標に対する審査原則」として独立した基準がある。
2. 外国語商標に対する審査原則 2.1 外国語(外国文字単独で表記され、又はハングルと混用表記されている場合を含む。)からなる商標については、韓国語に音訳又は翻訳して、その音訳、翻訳した韓国語についても、商標法各条文に対するか該否を検討することを原則とする。 2. 2 外国語からなる商標が商標法各条文に該当するかどうかは、取引業界又は一般需要者がその音訳又は翻訳された意味で認識することができるかを基準として判断しなければならない。 2.3 2.1に規定する外国語の範囲は、一般的に、英語、ローマ字表記言語(フランス語、ドイツ語、スペイン語)、中国語(簡体字、簡化字)、日本語(ひらがな、カタカナ)等で表記される文字をいい、このような文字で構成された商標は、文字商標として取り扱って審査する。 2.4 2.3に規定する範囲外の外国語は、原則として、記号や図形商標と見る。ただし、一般消費者に広く知られており、その呼称又は観念が認識される場合は、文字商標として取り扱って審査することができる。 |
(2) 異なる事項または留意点
前記(1)審査基準の下線部に留意されたい。
(3) 判例
・大法院1992.10.23宣告92フ896判決
商標の類否を判断するにおいて商標の意味内容は一般需要者や取引者を基準にして彼らがその商標を見て直感的に悟ることができるものでなければならず、審査熟考したり、辞書を探してみて初めてその意味を知られるのは考慮対象になれない(当院1987.2.24.宣告86フ132判決;1989.9.29宣告88フ1410判決;1992.8.14宣告92フ520判決等参照)。
本願商標「CAMELLIA」は英単語である「CAMELLIA」とその音を日本語で表記した「カメリヤ」で構成されており、上の英単語の意味が辞書上の椿である点は原審が認めたところであるが、上の英単語は韓国社会でそれほど頻繁に使われていると見ることができないので、本願商標の指定商品である化粧品類の一般需要者や取引者が本願商標に対して直感的に上のとおりの意味を持っている単語と認識できないといえる。
それにもかかわらず、原審が本願商標の指定商品に対する一般需要者や取引者が本願商標について引用商標のような観念である「椿」として認識できると判断したことは、商標の類否に関する判断基準の法理を誤解した違法を犯したものとするので、この点に関する論旨は理由がある。したがって、他の上告理由についてさらに見直す必要はなく原審決を破棄し、事件を特許庁抗告審判所に差し戻し関与法官の意見が一致したので、主文のように判決する。
6.外国語商標、非アルファベット文字商標およびカタカナ商標の識別力について
掲題について日本および韓国の商標審査基準には明確な規定はないが、韓国の商標審査基準には、第4部 第3章 性質表示商標 1.適用要件 1.1.2、2.1.3、2.3および3.1に以下の規定が事例とともに掲載されている。下線部に留意されたい。
1. 適用要件 1.1 ‘該当商品の性質を直接的に表示’する標章であること 1.1.2 外国語辞書や専門用語辞典等に性質表示の意味で記載されているか、又はインターネット等において性質表示として広く使用されている場合には、原則として、これに該当するものと見る。 |
《専門家基準による性質表示に該当する事例》
No. | 商標 (指定商品) |
判断内容 | 関連判例 |
1 | PNEUMOSHIELD(人体用肺炎ワクチン) | “PNEUMO”は‘肺炎’、“SHIELD”は”保護、盾”を意味するので、主な取引者である医師、薬師 を基準として、”肺炎予防ワクチン”と用途・効能を直感し得る。 | 大法院2000フ2170 |
2.1.3 性質表示標章であるかは、商標登録可否の決定をする時に、当該商品取引界の実情を重視して判断しなければならない。過去の判例、審決例、審査例、外国における登録等は、考慮対象とはなり得るが、これに拘束されない。 |
2.3 性質表示を英語、漢字等の外国語で表示した場合にも、これに該当するものと見、国内一般需要者が容易に認識し得る英単語と極めて類似していて、二つの単語が同一又は類似な意味を持っている単語であるという程度にさして困難なく認識することができる場合にも、これに該当するものと見る。 |
《外国語による性質表示に該当する事例》
No. | 商標 (指定商品) |
判断内容 | 関連判例 |
1 | HABITAT FOR HUMANITY (貧困者のための 住宅建設修理業) |
“HABITAT” が一般人に広く知られていないが、客観的意味がそのような意味であるため、取引社会においては直接的な性質表示と見るべきものである。 | 大法院97フ3296 |
2 | maquillée (美容室業) |
“マキエ(maquillée)”は、フランス語で‘化粧す る’ を意味し、美容業界において‘メイクアップ、ウェディング化粧業’として使用している以上、効能・用途表示等に該当する。 | 特許法院2011ホ10474 |
《容易に認識し得る英単語と極めて類似な場合の例》
No. | 指定商品 | 商標 | 指定商品 | 商標 |
1 | クレジットカード業 | EasiCard (EASYCARDの変形) |
自動車 | AUTOMATIQUE (AUTOMATICの変形) |
3.1 本号に該当する商標であって、同時に商品の産地、品質、効能等を誤認、混同させおそれがあるか、又は需要者を欺瞞するおそれがあるときには、法第34条第1項第12号を併せて適用する。 |
《性質表示と品質誤認に該当する事例》
No. | 商標 (指定商品) |
判断内容 | 関連判例 |
1 | COLOR CON (コンクリート・アスファルト) |
‘有彩色コンクリート’の意味を直感するため性質表示に該当し、‘無彩色コンクリート’ に使用されたり、‘アスファルト’に使用する場合、商品自体を誤認させるおそれがある。 | 大法院2007フ555 |
■ソース
・韓国の商標審査基準(日本語)https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/kr/ip/law/trademark2021.pdf
・韓国の商標審査基準(原文)
https://www.kipo.go.kr/ko/kpoContentView.do?menuCd=SCD0200155
・日本の商標審査基準
https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/guideline/trademark/kijun/document/index/20_4-1-11.pdf
・標章の類否に関する商標判例要旨集(2000-2011)
https://www.korea.kr/common/download.do?tblKey=EDN&fileId=205436
■本文書の作成者
崔達龍国際特許法律事務所■協力
日本国際知的財産保護協会■本文書の作成時期
2022.08.31