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インドネシアにおける特許出願の実体審査と特許庁からの指令書に対する応答期間

2023年01月05日

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■概要
インドネシアの特許出願における方式指令、拒絶理由通知に対する最初の応答期間は3か月であり、その後2か月の延長に加えて、さらに1か月の延長が可能である。期間の起算日は、方式審査は発送の日であるが、実体審査は通知の日である。実体審査結果の通知の送達に遅れが生じていることにより、出願人に与えられる準備期間が短くなることがあるが、審査官の裁量による期間延長が認められる。
■詳細及び留意点

 2016年8月26日施行された2016年特許に関する法律第13号(以下、特許法)は、実体審査や方式の期間について、以下のように規定している。
 
1.方式審査に対する応答期間
 2016年特許に関する法律第13号(以下、特許法)第34条は、出願日を確保するために必要な最低要件を規定している。その最低要件とは以下のとおりである。
(a) 出願年月日、発明者の氏名・住所・国籍、出願人の名称・住所、代理人の氏名・住所(第25条第1項)
(b) 発明の名称、明細書(外国語可)、特許請求の範囲、要約、存在する場合は図面(第25条第2項a~e号、第3項)
(c) 出願手数料納付の証明

 最低要件の明細書は外国語で記載されていてもよいが、インドネシア語に翻訳された明細書は出願日から30日以内に提出されなければならず(第34条第3項)、期間内に提出されない場合、出願は取下げられたものとみなされる(第34条第4項)。
 これ以外の方式要件は、委任状、発明者宣言書、譲渡書、微生物寄託証明書である。方式要件が満たされていない場合、大臣は出願人に対し書面をもって、通知発送の日から起算して3か月以内に方式要件を充たすように通知する(第35条第1項)。この応答期間は最大2か月間延長でき(第35条第2項)、さらに手数料の支払いにより1か月間延長できる(第35条第3項)。また、自然災害等、特別な事情のある場合はさらに6か月間の延長が可能である(第35条第5項、第6項)。延長期間内に要件が満たされない場合、出願が取下げられたとみなされる(第36条)。

2.審査請求期間
 特許出願の実体審査は実体審査請求を待って行われる。出願人は特許法第51条第1項に定めるとおり、手数料を納付し、実体審査を請求しなければならない。実体審査請求のできる期間は、出願日から36か月以内である(第51条第2項)。実体審査は、出願公開後6か月の異議申立期間(第48条第1項、第49条第1項)が経過した後着手される(第51条第5項)。

3.実体審査と応答期間
 実体審査官は、出願された発明の産業上利用性、新規性、進歩性、記載不備等を審査する(第54条)。審査官が特許出願された発明が登録要件を満たさないと報告した場合、大臣は出願人に対して書面によりその要件を満たすよう通知する(第62条第1項)。通知には、a)充足されるべき要件、b)実体審査において用いられる理由と引用文献が記載される(第62条第2項)。
 実体審査を受ける出願が優先権を伴う場合、大臣は出願人に対して、他国での審査結果に関する書類の提出を求めることができる(第55条)。その特許出願の発明が既に他国において特許が付与されている場合には、後述のとおり、審査官から出願人に対して、係属中の出願を対応国で登録された特許に一致させるような補正を提案することが多い。発明が単一性を満たさない場合、審査官は分割出願を行うよう提案することもできる。

 出願人は、通知書の日から3か月以内に意見書および/または補正書を提出しなければならない(第62条第3項)。その期間は、2か月延長でき(第62条第4項)、さらに手数料の納付を条件として1か月延長できる(第62条第5項)。また、自然災害等特別な事情のある場合はさらに6か月間の延長が可能である(第62条第7項、第8項)。
 期間内に応答しない場合、大臣は書面で出願人に対し2か月以内に出願は取下げられたとみなされる旨通知する(第62条第10項)。
 なお実情では、2回目の拒絶理由への応答期間は2か月のみである。2回目の拒絶理由通知の応答期間は、審査官の裁量により認められる場合がある。
 特許法第57条は、実体審査請求日または公開期間満了日のうち遅い方から30か月以内に登録または拒絶の査定をするように規定している。この期限が迫っている場合は、応答期間の延長が認められない。
 応答期間の起算日は、通知の送達日ではなく、通知の日である。現状として通知が起案されてから代理人等に送達するまで1か月程度要しているため、出願人が応答を準備するために与えられる時間は十分でないことがある。
 審査官が、2回目の通知への応答を審査しても、やはり特許出願は特許要件を満たさないと判断した場合、審査官は拒絶査定書を発行する。拒絶査定を不服とする場合、出願人は、拒絶査定書の日から3か月以内に、当該拒絶査定に対して審判請求をすることができる(第72条第1項、第2項)。一方、通知に対する応答により、拒絶理由が解消されたと認められる場合、特許査定書が送付され、その後の特許付与の段階へと移行する。

4.優先権を主張する特許出願および国際特許出願(PCTルート)の実体審査
 特許法第55条では、優先権を主張する特許出願について、他国の審査において先行技術調査または実体審査が行われている場合、または特許査定が下されている場合、他国の審査結果を参照することができる旨が定められている。ただし実務上、以下の国の官庁の審査結果は参照されない。
(a) ASEAN加盟国(シンガポールを除く)
(b) アフリカ諸国
(c) 東ヨーロッパ諸国(ロシアとEPO加盟国を除く)
(d) 台湾
 PCTルートの場合、審査官は、国際調査報告、見解書または国際予備審査報告を、発明の特許性を判断するための主たる参考資料として参照する。ただし、これらは審査官を拘束するものではなく、特許査定の可否は、あくまでインドネシア特許法に定められた不特許事由を考慮した審査官の判断に委ねられるのはいうまでもない。

【留意点】
 拒絶理由通知の発送に遅延が生じているため、出願人の応答準備期間が不十分になってしまうことがあるが、審査官は期間延長に柔軟に対応している。

■ソース
・インドネシア特許法(2016年特許に関する法律第13号)
https://dgip.go.id/unduhan/kompilasi-pp?kategori=paten ※2016年法(UU Nomor 13 Tahun 2016 tentang Paten)が2020年オムニバス法(UU No.11 Tahun 2020 tentang Cipta Kerja)の601-605頁において改正されているため、両方を参照する必要がある。
・インドネシア特許法(2016年)
https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/idn/ip/pdf/tokkyo_2016.pdf ※日本語であるが、2016年時点のものである。
■本文書の作成者
日本国際知的財産保護協会
■本文書の作成時期

2022.09.29

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