アジア / 出願実務
台湾における実用新案登録出願制度概要
2022年11月24日
■概要
実用新案(中国語「新型専利」)出願手続は、一般的に、方式審査、形式審査、許可処分、公告という順で進められる。なお、実体審査に代わりうるものとして技術評価書がある。■詳細及び留意点
図1 実用新案登録出願フロー
1.出願
実用新案登録出願の際の提出書類は、願書、明細書、実用新案登録請求の範囲、要約および図面である(専利法106条1項)。必要に応じて、委任状(代理人を通じて出願する場合)や優先権証明書なども提出する(専利法第11条、、第120条で準用する第28条)。明細書および図面が日本語や英語などの外国語で提出した場合、中国語による翻訳文を提出する(専利法第106条第3項)。
2.方式審査(中国語「程序審査」)
主に様式、申請手数料、原本であるかなどの確認が行われる(専利審査基準第1篇第一章1.1)。必要書類充足が確認されると、出願日が認定される(専利法第106条第2項~第4項)。
3.形式審査(中国語「形式審查」)
3-1.要件
物品の形状、構造または組合せに属するか、公序良俗または衛生を害するか、記載開示要件に違反するか、単一性を具備するか、請求の範囲または図面の開示内容などについて審査される(専利法第112条)。
3-2.補正および意見書
形式要件を具備しない場合、出願人に通知され(専利法第111条)、これに対し、出願内容を補正または意見書を提出することができる(専利法第120条で準用する第43条第3項、同法第46条第2項)。
3-3.処分
意見書または補正書を提出しても形式要件不備が解消されない場合は、実用新案権を付与しない旨の処分書が送達される(専利法第111条、同法第112条)。形式要件の不備が確認できない場合は実用新案権付与の処分がなされ、その旨の公告がなされる(専利法第113条)。
4.公告
実用新案権を付与する旨の処分書を送達した翌日から3か月以内に、証書料と初年度の年金を納付することで公告される(専利法第113条、専利法第120条で準用する第52条第1項)。公告日から実用新案権は付与され、存続期間は出願日当日から10年間である(専利法第114条)。
5.実用新案技術評価書
5-1.請求人
誰でも請求できる(専利法第115条第1項)。
5-2.請求時期
公告日から実用新案権が消滅するまでが原則であるが、登録後公告前に請求手続を行っても受理される。無効審決が出ても、無効審決が確定するまで権利は存続するため、無効審判に対する行政救済手続を行えなくなるまで、実用新案技術評価書の請求は可能である(専利審査基準 第4篇第3章2.2)
5-3.作成時期
通常9か月から1年程度であるが、実用新案技術報告の請求において、非権利者が業として当該実用新案を実施していることを明記し、出願人は関連証明文書(専利権者による商業上において実施した非専利権者に対する書面による通知、広告目録またはその他の商業上の実施の事実に関わる書面資料)添付ししている場合、6か月以内に実用新案技術報告が完成される(専利法第115条第5項、施行細則第43条、経済部台湾智慧財産局 専利Q&A「新型專利技術報告多久可以完成?」、專利各項申請案件處理時限表)。
5-4.審査内容
請求項が新規性(専利法第22条第1項第1号を準用する専利法第120条)、進歩性(專利法第22条第2項を準用する専利法第120条)、拡大先願による新規性喪失(専利法第23条を準用する第120条)、先願主義(専利法第31条を準用する専利法第120条)に規定する事情について実用新案技術報告書を作成する(専利法第115条第4項、専利審査基準第4篇第3章3.1)。
5-5.効果
技術評価書を提示して権利を行使する実用新案権者は、当該権利が取り消された場合、その行為に過失はなかったと推定される(専利法第117条)。
6.無効審判請求
6-1.請求人
誰でも請求できる(専利法第119条第1項)。
6-2.請求時期
無効審判の審理の基準は登録査定時である(専利法第119条第3項)。無効審判請求人による無効審判理由または証拠の補充提出は無効審判請求後3か月以内に行わなければならなす、期限を過ぎて提出したときは、参酌しない(専利法第120条で準用する第73条第4項)。
6-3.訂正
審理期間内の訂正案について、特許主務官庁が審査を経て訂正を許可すべきであると認めた場合、特許主務官庁は、訂正後の明細書、特許請求の範囲または図面の副本を無効審判請求者に送達しなければならない。ただし、請求項の削除のみの訂正はこれに限らない(専利法第120条で準用する第77条第2項)。
6-4.その他
特許の無効審判の規定を準用している(専利法第120条で準用する第72条~第82条)。
なお、詳細は「台湾における特許無効審判制度の概要」(https://www.globalipdb.inpit.go.jp/judgment/20104/)のコンテンツを参照されたい。
7.訴願
行政不服申立ては、行政処分の送達後の翌日または公告期間満了翌日から30日以内に提出しなければならない(訴願法第14条第1項)。
拒絶査定や無効審決が送達された日の翌日から30日以内に、行政不服申立の所轄官庁または行政処分をした機関(経済部の訴願審議委員会)にその旨を意思表示した場合も、30日以内に訴願書を補足することを条件に、法定期間内の訴願とみなされる(訴願法第57条)。
手続の詳細は「台湾における知的財産に関する特許庁の審判決定に対する行政不服審査手続の概要」(https://www.globalipdb.inpit.go.jp/judgment/20122/)のコンテンツを参照されたい。
8.留意事項
台湾の実用新案登録出願も、実体審査を行わず、考案に該当するなどの基礎的な要件のみを審査して登録を認め、実用新案技術評価書を権利行使前に入手する仕組みとなっている。第三者が自社技術を無断で実施している場合には、実用新案技術評価書は6か月以内に完成されるため、早期に対応する手段として実用新案制度は重宝すると思われる。
■ソース
・専利法https://law.moj.gov.tw/ENG/LawClass/LawAll.aspx?pcode=J0070007
・専利法施行細則
https://chizai.tw/wp-content/uploads/2022/05/專利法施行細則(2020年6月24改正)-j.pdf
・専利審査基準 第4篇 第3章
https://chizai.tw/wp-content/uploads/2022/05/第四篇%E3%80%80第3章%E3%80%80実用新案技術評価(2021年7月14日施行).pdf
・経済部台湾智慧財産局
〇専利Q&A「何謂新型專利技術報告?(実用新案技術報告書とは何ですか?)」
https://topic.tipo.gov.tw/patents-tw/cp-783-872363-81923-101.html
〇専利Q&A「新型專利技術報告多久可以完成?(実用新案技術報告書はいつ完成しますか?)」
https://topic.tipo.gov.tw/patents-tw/cp-783-872384-75266-101.html
〇專利各項申請案件處理時限表(専利出願案件の処理期限)
https://topic.tipo.gov.tw/patents-tw/cp-711-871531-ccfe4-101.html
・全國法規資料庫/訴願法
https://law.moj.gov.tw/ENG/LawClass/LawAll.aspx?pcode=A0030020
■本文書の作成者
日本国際知的財産保護協会■本文書の作成時期
2022.09.02