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中国における特許出願の新規性喪失の例外について

2022年11月10日

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■概要
中国では、先願主義を採用しており、新規性の判断は出願日(または優先日)を基準とする。出願日(優先日)前に開示された発明は、たとえ出願人自身による開示であっても、原則として新規性は喪失する。しかし、この原則は科学技術の促進にマイナスの影響があるため、国際慣例に鑑み、一定の猶予期間に限って、定められた行為についてのみ、新規性喪失の例外が認められている。
■詳細及び留意点

1.新規性喪失の例外適用の猶予期間および適用対象
 出願日(優先権主張の場合、優先日を指す)から遡って6か月以内の下記行為の何れかに該当する場合には、新規性を喪失しないとされる。
(1) 国家において緊急事態または非常事態が発生し、公共の利益のために初めて公開した場合。
(2) 中国政府が主催または認める国際展覧会で初めて展示された場合。
(3) 規定の学術会議、または技術会議上で初めて発表された場合。
(4) 他人が出願人の同意を得ずに、その内容を漏洩した場合。
(専利法第24条、専利法実施細則(以下、「細則」とする)第11条)

 中国政府が主催した国際展覧会とは、国務院や各中央部門、各中央委員会が主催したまたは国務院の認可によってその他の機関または地方の政府が開催する国際展覧会を指し、中国政府が認める国際展覧会とは、国際博覧会条約に定められた、博覧会国際事務局に登録したあるいはそれに認められた国際展覧会を指す。
 既定の学術会議または技術会議とは、国務院の関係主管部門または全国的な学術団体が組織開催する学術会議または技術会議を指すとされているが、新規性喪失の例外に該当する学術会議または技術会議のリストは公表されていない。
(細則第30条)。

2.関連手続き

2-1. 中国政府が主催したまたは認める国際展覧会における初めての展示、または既定の学術会議または技術会議での初めての発表の場合
 出願される発明、実用新案、意匠について新規性喪失の例外を受けたい場合は、出願人は、出願時にその旨を声明し、かつ出願日から2か月以内に、国際展覧会、学術会議または技術会議の主催者が発行した証明資料を提出しなければならない。
 証明資料は、主催部門、単位(団体)の公印が押印された証明書でなければならない。また、証明資料には、開催時期、場所、展覧会や会議の名称および当該発明が展示または発表された日時・形式・内容を明記しなければならない。
(細則第30条、専利審査指南第1部分第1章6.3.1および6.3.2)

2-2. 他人が出願人の同意を得ずに、その内容を漏洩した場合
 出願する発明、実用新案、意匠について、出願日以前の6か月以内に、第三者が出願人の同意を得ずにその内容を漏らし、それを出願日前に出願人が知っていた場合で新規性喪失の例外適用を望む場合は、出願人は専利出願時に願書で声明し、出願日から2か月以内に証明資料を提出しなければならない。
 出願人が、第三者による漏洩の事実を出願日以降に知った場合は、事情を知ってから2か月以内に、新規性を喪失しない猶予期間を要求する声明を提出し、証明資料を添付しなければならない。
 審査官は必要であると判断した際に、指定された期間内に証明資料を提出するよう、出願人に要求することができる。
(専利審査指南第1部分第1章6.3.3)

3.留意事項
 中国では新規性喪失の例外に該当するケースは、日本と比べてかなり制限されている。日本基礎出願の優先権主張を伴って中国へ出願する場合、日本法では新規性喪失の例外に該当するにしても、必ずしも中国法で新規性喪失の例外に該当すると限らない。中国で出願することを考えているが、出願前にどうしても発表等しなくてはならない事情がある場合は、そのような発表が中国において新規性喪失の例外に該当するか否かについて、まず、現地代理人等に確かめた方が良いと考えられる。しかし、中国では新規性喪失の例外に該当する学術会議又は技術会議のリストが公表されていないため、現地代理人に確かめても、結論が出ない場合がある。このような状況に鑑み、将来中国出願の予定のある発明については、できるだけ新規性喪失の例外適用を考えず、開示は極力控えるべきである。

■ソース
・中華人民共和国専利法(日本語訳)
https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/cn/ip/law/pdf/regulation/20210601_jp.pdf
・中華人民共和国専利法実施細則(日本語訳)
https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/cn/ip/law/pdf/admin/20100201.pdf
・専利審査指南2010(日本語訳)
https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/cn/ip/law/pdf/section/20100201.pdf
■本文書の作成者
日本国際知的財産保護協会
■本文書の作成時期

2022.08.16

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