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台湾における特許出願の補正・訂正

2022年10月27日

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■概要
台湾では、出願人と公益とのバランスおよび先願主義と将来取得する権利の安定性の両立のため、各国の特許制度と同じく特許出願の補正および権利付与後の訂正(日本における訂正審判に相当。)が認められている。台湾特許実務における特許出願の補正および訂正について説明するとともに留意事項を紹介する。
■詳細及び留意点

1.補正
1-1.補正時期
・出願してから1回目の審査意見通知(日本における拒絶理由通知に相当。)が発行されるまでの期間内における自発補正について(専利法(*)第43条第1項)

 特許主務官庁は、発明特許の審査の際、本法に別段の規定がある場合を除き、請求又は職権により、期限を指定して明細書、特許請求の範囲又は図面を補正するよう出願人に通知することができる。

(*)専利法は、日本における特許法、実用新案法、意匠法を併せたものに相当する。

・審査意見通知または最後の通知を受けた後、通知に対する回答期限内について(専利法第43条第3項および第4項(**)

 特許主務官庁が第46条第2項の規定に従い通知した後、出願人は通知された期間内にのみ補正を行うことができる。
 特許主務官庁は、前項の規定により通知した後、必要があると認めたとき、最終の通知書を送付することができる。最終の通知書を送付された場合、特許請求の範囲の補正につき、出願人は通知された期間内にのみ、次の各号について補正を行うことができる。
1.請求項の削除
2.特許請求の範囲の減縮
3.誤記の訂正
4.明瞭でない事項の釈明

(**) 専利法では項番号が明記されない(1つの段落が1つの項である)。

・再審査を請求した時点から審査意見通知を受けるまでの期間について(専利法第49条第1項)

 第46条第2項の規定により拒絶査定された出願は、再審査の際、依然として明細書、特許請求の範囲又は図面を補正することができる。

1-2.補正の制限
・誤訳の補正を除き、原出願時の請求項、明細書、図面(優先権証明書類を含まない)の範囲内であること(専利法第43条第2項)

 補正は、誤訳の補正を除き、出願の際の明細書、特許請求の範囲又は図面が開示した範囲を超えてはならない。

・誤訳の補正の場合は、出願の際の外国語書面の範囲内であること(専利法第44条)

 第25条第3項の規定により、外国語書面で明細書、特許請求の範囲及び図面を提出した場合、その外国語書面は補正してはならない。
 第25条第3項の規定により補正した中国語による翻訳文は、出願の際の外国語書面が開示した範囲を超えてはならない。
 前項に言う中国語による翻訳文について、その誤訳の訂正は、出願の際の外国語書面が開示した範囲を超えてはならない。

・最後の通知を受けた後、「請求項の削除」、「特許請求の範囲の減縮」、「誤記の訂正」、「明瞭でない事項の釈明」のみにおいて補正が可能である(専利法第第43条第4項)

 特許主務官庁は、前項の規定により通知した後、必要があると認めたとき、最終の通知書を送付することができる。最終の通知書を送付された場合、特許請求の範囲の補正につき、出願人は通知された期間内にのみ、次の各号について補正を行うことができる。
1.請求項の削除
2.特許請求の範囲の減縮
3.誤記の訂正
4.明瞭でない事項の釈明

1-3.補正に関する注意事項
・出願時に外国語による明細書、図面で先に出願し、指定期間内に外国語明細書の範囲を超えずに中国語版を補正したものについては、その後当該中国語版の補正があり、その補正が出願時の明細書、図面で開示された範囲を逸脱しているか否かを判断する場合には、その中国語版を認定の根拠としなければならない。

・出願人は、補正書の提出とともにその補正内容についての理由を述べなければならない。

・優先権証明書類に記載された事項は、出願時の明細書、特許請求の範囲または図面の一部に属さないので、補正が出願時の明細書、特許請求の範囲または図面で開示された範囲を超えているかを比較する根拠にはできない。

・補正時に発明の新たな効果、新たな用途、新たな実験データもしくは新たな実施例を追加し、または明細書、特許請求の範囲もしくは図面自体に対する補正でなく技術内容と関係のある補充資料を提出する場合は、それらを出願時の明細書、特許請求の範囲または図面に記載されたものして特許請求の範囲の補正の根拠としてはならず、また、補充資料は特許要件の審査の参考としてのみ用いることができる。

2.訂正
2-1.訂正時期
・特許権取得時から消滅時まで請求できる(専利審査基準第1編第20章「2.訂正の時期」、第1段落)

 特許及び実用新案の専利権者は公告を経て専利権を取得した後、専利権者は明細書、専利請求の範囲又は図面の訂正を申請することができる。ただし、出願人が専利出願の登録料を納付して証書を受領してから公告される前までに訂正を申請した場合、当該出願はまだ公告されていないが、専利権者が反覆して訂正申請の手続きを提出することを避けるため、暫く処理を見合わせ、公告後に訂正手続きを続行することとする。

・無効審判請求を受けたときの答弁、補充答弁または応答期間内に訂正が可能(専利法第74条第3項および第4項)

 無効審判請求の審理期間において、特許権者は答弁、補充答弁又は応答期間内のみ訂正請求することができる。ただし、特許権が訴訟事件に係属中の場合、これに限らない。
 特許主務官庁が必要と認めた時、無効審判請求人に意見陳述、又は特許権者に補充答弁を通知し、無効審判請求人又は特許権者は通知送達後1ヶ月以内にこれを行わなければならない。期日延期が認められた場合を除き、期限を過ぎて提出した場合には、参酌されない。

・無効審判係属中でも訂正が可能である(専利法第77条第1項)

 無効審判請求案件の審理期間において、訂正案がある場合、両者を併合審理及び併合審決しなければならない。

・民事または行政訴訟に係属中の場合(専利審査基準第1編第20章「2.訂正の時期」、第4段落)

 専利権者は、無効審判請求案件の審理期間において、答弁、補充答弁又は応答の通知期間においてのみ訂正を申請することができる。ただし、専利権が民事又は行政訴訟案件に係属中で、訂正の必要がある場合、無効審判請求案件の審理期間において訂正を申請することができ、前述した3つの期間の制限を受けない。

・実用新案に関する訂正時期は技術評価請求の受理中または訴訟の係属中のみ(専利審査基準第1編第20章「2.訂正の時期」、第2段落)

 実用新案権者は公告を経て実用新案権を取得した後、実用新案技術評価請求案件の受理中、又は訴訟案件の係属中のみ訂正を申請することができ、前述した期間ではない時に訂正を申請した場合、不受理としなければならない。

2-2.訂正の制限
・「請求項の削除」、「特許請求の範囲の減縮」、「誤記または誤訳の訂正」または「明瞭でない記載の釈明訂正」のみの訂正が可能(専利法第67条)

 発明特許権者は、次の各号のいずれかの事項についてのみ、特許明細書、特許請求の範囲又は図面の訂正を請求することができる。
1.請求項の削除
2.特許請求の範囲の減縮
3.誤記又は誤訳の訂正
4.明瞭でない記載の釈明
 訂正は、誤訳の訂正のほか、出願時の明細書、特許請求の範囲又は図面に開示されている範囲を超えてはならない。
 第25条第3項の規定により、外国語書面で明細書、特許請求の範囲及び図面を提出した場合、その誤訳の訂正は、出願時の外国語書面により開示されている範囲を超えてはならない。
 訂正は、公告時の特許請求の範囲を実質的に拡大又は変更してはならない。

・実施権者または質権者がある場合、請求項の削除および請求範囲の減縮には実施権者または質権者の同意が必要(専利法第69条第1項)

 発明特許権者は、実施権者又は質権者の同意を得なければ、特許権の放棄、又は第67条第1項第1号又は第2号の事項について訂正を請求することはできない。

・特許権が共有である場合、請求項の削除および請求範囲の減縮には共有者の同意が必要(専利法第69条第2項)

 発明特許権が共有である場合、全ての共有者の同意を得なければ、第67条第1項第1号又は第2号の事項について訂正を請求することはできない。

2-3.訂正に関する注意事項
・従来技術と区別するための、権利放棄(disclaimer)による限定の訂正は例外的に認められ、新規事項とは見なされない。

・「二段式の記載形式の請求項について段を分けない記載形式に変更する」、「段を分けない記載形式の請求項を二段式の記載形式に変更する」、「二段式にて記載された請求項の前言部分の一部の技術的特徴を特徴部分に記載する」または「二段式にて記載された請求項の特徴部分の一部の技術的特徴を前言部分に記載する」等の訂正方法は、不明瞭な記載の釈明に属し、特許請求の範囲の実質的な拡大や変更とは見なされない。

■ソース
・台湾専利法
https://chizai.tw/wp-content/uploads/2022/07/専利法(2022年7月1日施行)-j-.pdf
・台湾専利審査基準 第1編第20章
https://chizai.tw/wp-content/uploads/2022/05/第一篇第20章%E3%80%80訂正(2019.11.01施行).pdf
■本文書の作成者
日本国際知的財産保護協会
■協力
理律法律事務所
■本文書の作成時期

2022.08.05

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