アジア / 出願実務
(中国)専利出願時等の委任状の取扱い
2013年03月29日
■概要
中国大陸に常時居住地又は営業所のない外国人、外国企業又は外国のその他の組織が中国で専利(特許、実用新案、意匠)出願及びその他の専利事務手続きを取り扱う場合等には、法により設立された専利代理機構(パートナ形式又は有限責任公司形式)に委任しなければならない。■詳細及び留意点
(1)委任が必要な場合
(i)中国大陸に常時居住地又は営業所のない外国人、外国企業又は外国のその他組織(香港、マカオ、台湾地区の出願人も含む)が、中国で専利出願及びその他の専利事務手続きを行う場合、若しくは、先頭署名出願人として、中国大陸の出願人と共同で専利出願する場合及びその他の専利事務手続きを行う場合、中国大陸の専利代理機構(中国語「专利代理机构」)に委任しなければならない(専利法第19条第1項)。なお、中国大陸の個人または企業等は、国内での専利出願及びその他専利事務手続きを行う際に、専利代理機構に委任することができる(審査指南第1部分第1章6.1.1)。
上記専利代理機構とは、専利代理管理弁法に基づき設立されたパートナ形式又は有限責任公司形式の代理機構を指す。
(ii)方式審査において、上記の中国大陸に常時居住地又は営業所のない出願人が専利出願及びその他専利事務手続きを行うにあたって委任状を提出していないことが判明した場合、補正命令(中国語「补正通知书」)が出され、出願人が指定された期間内に応答しない場合には、その出願は取下げられたものとみなされる。出願人が指定された期間内に意見を陳述し或いは補正をしても専利法第19条第1項の規定に合致しない場合(例:出願人の中国語名称の記載が漏れている場合、中国語名称が正しくない場合、委任状の日付が出願日より後になっている場合等)にはその出願は拒絶される(審査指南第1部分第1章6.1.1)。
(2)委任状の提出時期等
- 通常、出願またはPCT出願の中国国内移行と同時に委任状(中国語「委托书」)を中国特許庁へ提出する。
- 出願時またはPCT出願の中国国内移行時に提出できない場合は、委任状が未提出である旨の補正命令が発せられるまで、いつでも自発的に補充することが可能である。
- また、中国特許庁から委任状が未提出である旨の補正命令を受領して2ヶ月以内であれば補充することができる(専利法第39条、審査指南第1部分第1章3.2、第5部分第7章1.2)。
- しかし、この補充期限を逃すと、当該専利出願は拒絶される(実施細則第15条、審査指南第1部分第1章6.1.2)。
- ただし、この補充期限に対しては、最長2ヶ月の期間延長を請求することができる(実施細則第6条4項、審査指南第5部分第7章4.1)。
(3)委任状へのサイン又は捺印(審査指南第1部分第1章6.1.2)
- 出願人が個人である場合、出願人は、委任状にサイン又は捺印しなければならない。
- 出願人が企業である場合、企業の公印を捺印するものとし、同時にその法定代表者のサイン又は捺印を付しても良い。
- 出願人が2名いる場合、出願人全員がサイン又は捺印しなければならない。
- 委任状に専利代理機構の公印を捺印しなければならない。
(4)包括委任状(審査指南第1部分第1章6.1.2)
- 出願人は専利代理機構に委任する場合、委任状の原本を中国特許庁に提出しなければならない。
- 出願人は専利出願等(無効審判請求を委任する場合は、別途委任状が必要である)に関する業務を包括的に専利代理機構に委任する場合、包括委任状を提出することができる。中国特許庁は、規定に合致する包括委任状を受取った後、包括委任状に番号を付け、専利代理機構に通知しなければならない。包括委任状を提出した場合、個々の出願に対し、包括委任状のコピーを提出すれば足りる(なお、中国では専利と商標は異なる機関で受理・審査されるため、専利と商標とは別個に包括委任状を提出する必要がある)。
【留意事項】
- 中国以外の外国国籍の出願人が中国特許庁に専利出願等の業務を行う場合、法により設立された中国の専利代理機構に委任しなければならず(専利法第19条)、外国国籍の出願人が代理人に委任せずに中国特許庁に直接出願した場合、その出願が拒絶されることに留意すべきである。
- 出願人が企業の場合、委任状に企業の公印を捺印しなければならないが、企業の法定代表者のサイン又は捺印は付さなくても良い。委任状に公印の捺印など形式的な不備がある場合、補正命令を受けてから2ヵ月以内に委任状を再提出することが可能である。委任状の形式要件に関しては、基本的には現地代理人に任せておくことで差支えないだろう。
■ソース
・中国専利法・中国専利法実施細則
・中国専利審査指南
第1部分第1章 発明専利出願の方式審査
第1部分第2章 実用新案専利出願の方式審査
第1部分第3章 意匠専利出願の方式審査
・専利管理代理弁法
■本文書の作成者
北京林達劉知識産権代理事務所■協力
三協国際特許事務所 中国専利代理人 梁熙艶特許庁総務部企画調査課 山中隆幸
一般財団法人比較法研究センター 不藤真麻
■本文書の作成時期
2012.12.26