アジア / 出願実務
台湾意匠における立体図
2013年03月15日
■概要
台湾における意匠出願の際は、立体図と六面図の組合せ、或いは二つ以上の立体図により、出願意匠の六面を特定する。立体図は製図方法に従って作成したものを提出する。■詳細及び留意点
(1)立体図(中国語「立體圖」)の役割
意匠は物品の全部又は一部についての形状、模様、色彩又はその結合で、視覚を通じて訴える創作物と定義され(専利法第121条)、物品と形態で特定される。
意匠の形態は、物品を正面、背面、平面、底面、右側面、左側面の各面を明示して特定する。立体図は隣接する三面を表すため、一面のみを表した面図では表現できない空間の立体感を表すことができる利点がある。台湾では、図1のように各面を表した六面図と立体図で(専利法施行細則第53条第2項)、又は、図2のように2つの立体図で出願意匠を特定する。
一方、紙、封筒、ラベル、壁紙又は布生地などの平面的な物品の意匠の場合は、立体図を省略して正面図や背面図などの図面のみで、出願意匠の形態を特定することが許される。
(2)立体図の製図方法
(i)製図方法
立体図は、{さんじげん くうか透視図法、等角投影図法又は斜投影図法などで作成される(専利審査基準第3篇第1章1.5図面の説明及び図面)。
(ⅱ)透視投影
図3のように観察者と物体の間に投影面を設け、観察者の物体の各点に対する視線と投影面が交わって構成された図形を立体図とするもの。観察者が見るものと同じであり、透視図という。
(ⅲ)等角投影図法
図4のように物体を元の場所から前投影面を平行にし((a)参照)、平面投影面と直交する軸に沿って角度αで回転させ((b)参照)、側投影面と直交する軸に沿って角度βで回転させると((c)参照)、(d)のような正投影図となる。当該投影図の三面の角度が同一であることを等角投影という。
(ⅳ)斜投影
主要面を決め、投影面を平行にし、平行投影軸と投影面が90度にならないように作成する。一般的に等斜図と半斜図に分けられる(図5参照)。前者の幅:高さ:奥行きの比率は1:1:1、後者は1:1:0.5である。傾角は45度の場合が多い。この製図方法は実際の物体の様子と多少異なって見える傾向があり、台湾では、円柱型等の簡単な幾何形状などでなければ、等角投影或いは透視投影で製図することが望ましいとされる。
- (3)写真或いはコンピュータグラフィックス(CG)
図面に代えて、写真(図6)又はコンピュータグラフィックス(CG)(図7)を提出できる。輪郭線を明瞭に表現し、背景色は白色などの単純色を使用する。意匠の表面に濃淡のある陰がある場合、ぼやけたりすることを避ける。カラーの写真やCGによる場合、細部まで明確に専利公報にて表示できるよう、グレースケール(Gray scale)のクォリティーに注意する。
【留意事項】
立体図は、平面的な物品の意匠でない限り、台湾意匠出願においては必須の書類である。立体図と六面図の各図面との間で不一致があれば登録されないので、立体図の作成は製図方法に従い、細部においても図面間で不一致が生じないよう、注意する必要がある。
■ソース
・専利審査基準 第3篇意匠実体審査 第1章図面http://www.tipo.gov.tw/ch/MultiMedia_FileDownload.ashx?guid=761af718-1fbc-4d6d-a8d4-92e4bae2bb4b.doc ・意匠図説及び図面製図方法の手引き(中国語「新式樣専利圖説圖面説明及圖面製作須知」)。
http://www.tipo.gov.tw/ch/multimedia_filedownload.ashx?guid=0d9194d8-404a-4045-93be-bafb5e8e271b 図1:台湾専利公報、証書番号:D105709。意匠に係る物品:携帯電話;轉引自台湾特許庁意匠図面說明及び図面製図方法の手引き第9ページから抜粋。
図2:台湾専利公報から抜粋、証書番号:575318。意匠に係る物品:音楽プレーヤー;台湾特許庁意匠図面說明及び製図方法の手引き第10ページから抜粋。
図3:陳朝光,王明庸,黄泰翔,1986 年9 月1 日,《図學(下)》,第489 頁。台湾特許庁意匠図面說明及び製図方法の手引き第19ページから抜粋。
図4:陳朝光,王明庸,黄泰翔,1986 年9 月1 日,《図學(下)》,第461 頁。台湾特許庁意匠図面說明及び製図方法の手引き第18ページから抜粋。
図5:台湾特許庁意匠図面說明及び製図方法の手引き第19ページ。
図6:台湾専利公報、証書番号:450781。意匠に係る物品:電池;。台湾特許庁意匠図面說明及び製図方法の手引き第14ページから抜粋。
図7:台湾専利公報、証書番号: D114209,意匠に係る物品:蛇口(五)。台湾特許庁意匠図面說明及び製図方法の手引き第15ページから抜粋。
■本文書の作成者
聖島国際特許法律事務所(作成:2012年11月26日)特許庁総務部企画調査課 根本雅成(改訂:2013年7月8日)
■協力
一般財団法人比較法研究センター 木下孝彦■本文書の作成時期
2013.07.08