国別・地域別情報

ホーム 国別・地域別情報 アジア 出願実務 特許・実用新案 | 意匠 (中国)優先権主張の手続き(外国優先権)

アジア / 出願実務


(中国)優先権主張の手続き(外国優先権)

2013年03月15日

  • アジア
  • 出願実務
  • 特許・実用新案
  • 意匠

このコンテンツを印刷する

■概要
優先権を主張する場合、出願時の願書にその旨を声明しなければならない。また、出願日から3ヶ月以内に基礎出願の出願書類の謄本(以下、「優先権証明書」という。)を提出しなければならない。出願願書において声明をせず又は期限内に優先権証明書を提出しないときは、優先権を主張していないものとみなされる。
■詳細及び留意点

 中国では、外国で出願したものと同じ主題の特許・実用新案、意匠について、外国での最初の出願日から起算される所定期間内(特許/実用新案:12ヵ月、意匠:6ヵ月)に中国で出願する場合、当該外国が中国と締結した協定又は共同で加盟している国際条約に準拠し、若しくは優先権(中国語「优先权」)を相互に認める原則に準拠して、優先権(外国優先権)を享受することができる。ただし、優先権を主張する場合は、専利法第29条、第30条、専利法実施細則第31条、及びパリ条約の関連規定に合致した手続きを行う必要がある。

 

(1)パリ条約を利用した優先権主張(特許・実用新案、意匠)

(i)優先権を主張する旨の声明(専利法第30条、審査指南第1部分第1章6.2.1.2)

 優先権を主張する出願人は、出願時に提出する願書に、優先権を主張する旨を声明しなければならない。願書において声明していない場合には、優先権を主張していないものとみなされる。

 

(ii)出願願書への基礎出願の出願日等の明記(審査指南第1部分第1章6.2.1.2)

 優先権を主張する場合、出願人は優先権の基礎となる基礎出願の出願日、出願番号、元受理機構の名称を出願願書に明記しなければならない。

 基礎出願の出願日や出願番号、元受理機構の名称のうちの1項目若しくは2項目を明記していないか、或いは誤記がある場合、規定された期間以内に優先権証明書(中国語「优先权证明」)が提出されていれば、審査官は手続補正通知書(中国語「手续补正通知书」)を出さなければならない。複数の優先権を主張する場合も、同様である。

 

(iii)優先権証明書の提出(専利法第30条、実施細則第31条第1項、審査指南第1部分第1章6.2.1.3)

(a)   優先権証明書の提出方式

    • 紙媒体の提出

優先権証明書は優先権基礎となる基礎出願の元受理機構から発行されるものでなければならない。優先権証明書の様式は国際慣行に合致するものとし、少なくとも、元受理機構、出願人、出願日、出願番号を明記しなければならない。

複数の優先権を主張する場合、それぞれの優先権証明書を提出しなければならない。

    • デジタルアクセスサービス(DAS)による提出

中国特許庁(中国語「国家知识产权局」)と基礎出願の受理機構と締結した協議に従い、中国特許庁は電子交換などの方法を通じて、当該受理機構から優先権証明書を取得できる場合、出願人が優先権証明書を提出したものとみなす。

    • 共有声明

同じ優先権を主張する場合(例:特許・実用新案併願(同日出願)の場合)、中国特許庁に提出してある優先権証明書を再び提出する必要はなく、当該優先権証明書の書誌的事項の中国語訳文だけ提出してよいとされるが、優先権証明書の原本を保存してある出願の出願番号を明記しなければならない。

 

(b)   優先権証明書の提出時期

優先権証明書は本願の出願日から3ヶ月以内に提出しなければならない。期限内に提出しなかった場合には優先権主張をしていないものとみなされ、審査官は優先権を主張していないとみなす通知書を発行しなければならない。

 

(iv)出願人(審査指南第1部分第1章6.2.1.4)

  • 優先権を主張する出願人の氏名又は名称は、優先権証明書に記載した出願人の氏名又は名称と一致しなければならない(実施細則第31条第3項)。
  • 出願人が一致していない場合、中国出願日から3ヶ月以内に、基礎出願の出願人全員が署名又は捺印した優先権譲渡証明書(中国語「优先权转让证明」)を提出しなければならない。
  • 優先権譲渡証明書には、基礎出願の出願人全員が、共同でまたは別々に、署名又は捺印をする必要がある。

 

(v)費用(実施細則第95条、審査指南第1部分第1章6.2.4)

 優先権を主張する場合、出願費用とあわせて優先権主張の費用も納付しなければならない。納付期限は出願日から2ヶ月以内、または、受理通知書を受取った日から15日以内のいずれか遅い方を基準とする。期限内に一部納付しなかった又は全額納付しなかった場合、審査官は優先権を主張していないものとみなす通知書を発行しなければならない。

 

(2)PCTルートによる中国特許出願(特許・実用新案)

(i)優先権主張の声明(審査指南第3部分第1章5.2.1)

(a) 出願人が国際段階において既に一つ又は複数の優先権を主張し、かつ国内段階移行時に当該優先権主張が継続して有効である場合、専利法30条の規定に基づいて書面声明を提出したものとみなされる(実施細則第110条第1項)。

ただし、国際段階において回復された優先権が国際条約加盟時に保留された項目に該当すると中国特許庁が判断した場合(例えば、国際出願日がその優先日から12ヶ月以降、14ヶ月以内にある場合)、相応する優先権の主張は中国において効力を生じず、優先権を主張していない旨の通知書が審査官により発行される。

 

(b) 出願人は、移行声明に先の出願の出願日、出願番号及び元の受理機構名称を的確に明記しなければならない。また、下記※の場合を除き、明記される内容は国際公開公報のフロントページの記載と一致しなければならない。

※国際事務局がかつて中国特許庁に伝送した「優先権主張取り下げ通知書」(様式PCT/IB/317)又は「優先権を主張していないとみなされる通知書」(様式PCT/IB/318)に関連している優先権主張は、既に効力を喪失したものであるため、移行時の声明に記載してはならない。

 

(c) 出願人が国際段階において基礎出願の出願番号を提供していない場合、移行時の声明にこれを明記しなければならない。

 

(d) 出願人は、国際段階において提出した優先権の書面声明のうち、ある事項に記載ミスがあると判断した場合、国内段階移行手続を取ると同時に、或いは移行日から2ヶ月以内に訂正請求を提出してよい。

 

(ii)優先権証明書の提出(実施細則第110第3項、審査指南第3部分第1章5.2.2)

  • 特許協力条約の規定に基づき出願人が既に受理官庁に対して優先権証明書を提出していたか、若しくは受理官庁に優先権証明書の作成を申請していた場合、出願人は優先権証明書の提供は要求されない(当該優先権証明書は、中国特許庁がWIPO国際事務局に対して請求する)。
  • なお、例えば、国際調査報告書における関連書類の欄に、「PX」、「PY」書類などがあるか、若しくは国際調査機関の審査官が検索したが見つからず、中国特許庁の実体審査の担当審査官が追加検索において「PX」、「PY」などの書類を見つけた場合等、優先権証明書を精査する必要があると判断した場合には、中国特許庁の審査官は、WIPO国際事務局に対して当該出願の優先権証明書の伝送を請求しなければならない。
  • WIPO国際事務局が、中国特許庁に対して出願人が国際段階において規定に基づいて優先権証明書を提出していないことを通知した場合、審査官は手続補正通知書を発行し、出願人に指定期間内に提出するよう、通知しなければならない。

 

(iii)優先権を享受する証明の提供(審査指南第3部分第1章5.2.3.2)

  • 審査官は国際出願の出願人が出願日の時点で先の出願の優先権を主張する権利を有するか否かをチェックするが、先の出願が中国以外の国で提出されたものである場合において以下の何れか一つに該当すれば、出願人が優先権主張の権利を有することを認めなければならない。

(a) 中国出願の出願人が、基礎出願の出願人と同一人である場合

(b) 中国出願の出願人が、基礎出願の出願人のうちの一人である場合

(c) 中国出願の出願人が、基礎出願の出願人から譲渡、贈与又はその他の方式によって形成された権利移転によって、優先権を享有する場合

  • 上記(c)の場合、出願人が国際段階において要求に合致した優先権享受声明を行った場合を除き、出願人は相応する証明書類を提出しなければならない。譲渡人は、証明書類に署名又は捺印をしなければならない。証明書類は原本、或いは公証されたコピーでなければならない。
  • 基礎出願が中国で提出された場合、優先権を主張する出願の出願人は基礎出願の出願人と完全に一致するか、若しくは基礎出願の出願全員が、優先権を主張する出願の出願人に優先権を譲渡していなければならない。

 

(iv)優先権主張料(実施細則第110条第2項、審査指南第3部分第1章5.2.4)

 優先権を主張している場合、出願人は移行日から2ヶ月以内に優先権主張料を納付しなければならない。期間内に納付しない場合または納付不足の場合、優先権を主張していないものとみなされる。

 

【留意事項】

 優先権主張は事務手続きが多いが、中国出願の出願人と優先権を主張する基礎出願の出願人とは完全に一致していないケースも珍しくなく、中国出願の出願人が基礎出願の出願人とまったく別人である場合は、優先権譲渡証明書を要する。

 一方、中国出願の出願人と基礎出願の出願人が一部一致する場合、すなわち、基礎出願の出願人に新たな出願人が追加されている場合や、基礎出願の出願人が一部減った形で中国出願をしている場合であるが、前者の場合、譲渡証明書は必要であるが、後者の場合は不要、という運用が実務上の慣行になっているようである。ただし、明確な基準が示されておらず、実務上の慣行であるので当該運用は通知なく変更される可能性もあり、注意を要する。

■ソース
・中国専利法
・中国専利法実施細則
・中国専利審査指南
  第1部分第1章 発明専利出願の方式審査
  第3部分第1章 国内段階に移行された国際出願の方式審査と事務処理
■本文書の作成者
北京林達劉知識産権代理事務所
■協力
三協国際特許事務所 中国専利代理人 梁熙艶
特許庁総務部企画調査課 山中隆幸
■本文書の作成時期

2012.10.24

■関連キーワード