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(中国)外国優先権を主張する権利の回復請求

2013年03月08日

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■概要
中国では、外国で出願したものと同じ主題の特許・実用新案、意匠について、出願人は、外国での最初の出願日から起算される所定期間内に中国で出願する場合、当該外国が中国と締結した協定又は共同で加盟している国際条約に準拠し、若しくは優先権を相互に認める原則に準拠して、優先権(外国優先権)を享受することができる。優先権主張は、専利法第29条、第30条、専利法実施細則第31条、及びパリ条約の関連規定に合致していなければならず、審査の結果、規定に合致していないと判断された場合には優先権を主張していないものとみなされる。ただし、優先権を主張していないとみなされた場合でも、所定の要件を満たせば、優先権を主張する権利の回復を請求することができる。
■詳細及び留意点

(1)パリ条約を利用した優先権主張(特許・実用新案、意匠)

(i)優先権主張(中国語「要求优先权」)をしたが、主張していないものと見なされる場合

(a) 優先権を主張する中国出願を規定された期間以内に行わなかった場合(審査指南第1部分第1章6.2.1.1)。

規定期間:

特許・実用新案:基礎出願の出願日から12ヶ月以内(*)

意     匠:基礎出願の出願日から6ヶ月以内(*)

 (*)基礎出願が2件以上ある場合、最も早い出願日から起算される。

(b) 中国特許庁(中国語「国家知识产权局」)への願書提出時に、その願書において優先権主張を声明しなかった場合(審査指南第1部分第1章6.2.1.2)。

(c) 願書において優先権主張を声明していたが、基礎出願の出願日、出願番号及び出願国の全ての情報を明記していないか、或いは誤って記載した場合。

 

ただし、基礎出願の出願日、出願番号及び受理官庁のうち、1項若しくは2項が正しく記載されており、且つ、中国特許庁への出願日から3ヵ月以内に、基礎出願の出願書類の謄本(以下は「優先権証明(中国語「优先权证明」)書」という。)を提出すれば、審査官より、基礎出願の出願日、出願番号などを明記していないことについて手続補正命令(中国語「手续补正通知」)が発行され、これを受けて補正することができる。補正しても規定事項に合致しない場合や、指定される期間内に手続補正通知書へ応答しない場合には、優先権を主張していないものとみなされる旨の通知書が発行される(審査指南第1部分第1章6.2.1.2.)。

(d) 優先権証明書を提出期限内に提出しない場合(審査指南第1部分第1章6.2.1.3)。

    • 提出期限:中国出願の出願日から3ヶ月以内
    • 複数の優先権を主張する場合、すべての優先権証明書を提出期限内に提出しなければならない。

(e) 優先権を主張する中国出願の出願人が、優先権証明書に記載されている出願人と完全に一致しなければ(優先権証書に記載されている出願人に中国出願のすべての出願人を含む状況を除く)、優先権譲渡証書類(中国語「优先权转让证明文件」)を提出する必要がある。所定の期間(優先権証明書と同様)内に優先権譲渡証明書類を提出しなければ、優先権を主張していないものとみなされる(審査指南第1部分第1章6.2.1.4)。

(f) 優先権主張の費用を期間以内に納付しなかった又は全額で納付しなかった場合(実施細則第95条、審査指南第1部分第1章6.2.4)。

納付期限:優先権を主張する中国出願の出願日から2ヶ月以内、または受理通知書を受取った日から15日以内(期限の遅いものを基準にする)。

 

(ii)優先権主張する権利の回復を請求できる場合は以下の通りである(実施細則第6条、専利審査指南第一部分第1章6.2.5)。

  • 指定期間以内に審査官に発行された手続補正書に応答していないために優先権を主張していないものとみなされた場合
  • 願書に優先権主張を声明する際、基礎出願を特定するための出願日、出願番号、出願国のうち少なくともいずれか1つが正しく記入されたが、規定された期間以内に優先権証明書または優先権譲渡証書を提出していない場合
  • 願書に優先権主張を声明する際、基礎出願を特定するための出願日、出願番号、出願国のうち少なくともいずれか1つが正しく記入されたが、期間以内に優先権主張の費用を納付していない、又は全額で納付していない場合
  • 分割出願であれば、親出願が優先権を主張した場合

 

 上記の場合、正当な理由があれば、優先権主張する権利を回復できる(回復請求手続きの詳細は、後述の(iv)優先権主張する権利の回復請求手続を参照)。

 

(iii)優先権を主張していないものとみなされ、優先権主張する権利を回復できない例

  • 優先権を主張する中国出願を規定された期間以内に提出しなかった場合
  • 出願時の願書において優先権の主張を声明しなかった場合
  • 出願時の願書に基礎出願の出願日、出願番号及び受理官庁の全ての情報を明記していないか、或いは誤って記載した場合

 

 上記の場合、正当な理由があっても、優先権主張する権利を回復できない。

 

(iv)優先権主張する権利の回復請求手続(実施細則第6条)

(a)期限:中国特許庁より「優先権を主張していないものとみなされる通知書」を受領した日から2ヶ月以内

(b)手続:権利回復請求書(場合によっては、正当な理由の証明資料を添付する必要がある)を提出して理由を説明するとともに、権利回復請求の費用を納付しなければならない。権利回復請求の費用は、専利出願費用基準一覧表が適用され、官庁手数料はCNY1,000である(専利出願費用基準(中国語「专利收费标准」))。同時に、優先権主張する権利を失った原因を解消するために、関係手続を行うべきである(例えば、期間以内に提出していない優先権証明書や優先権譲渡証書を補充提出する)。

 

(2)PCTルートによる中国出願(特許と実用新案)

(i)優先権を主張していないものと見なされる場合は以下の通りである(専利審査指南第三部分第1章5.2)。

(a)   出願人が国際段階において基礎出願の出願番号を明記しておらず、且つ、中国国内段階に移行する際に優先権主張する旨の声明もおこなっていない場合、審査官はまず手続補正を発行する。指定期間以内に手続補正通知書へ応答しない場合、又は応答しても規定事項に合致しない場合、当該優先権を主張していないものと見なされる。

(b)   PCT出願の国際調査報告書においてカテゴリーがPX、PYである引用文献があれば、審査官はWIPO国際事務局に優先権証明書の転送を請求する。WIPO国際事務局より優先権証明書を提出していないという通知を受取ると、出願人に優先権証明書の補充提出に係る手続補正通知書を発行する。指定期間内に優先権証明書を提出していない場合、優先権を主張していないものとみなされる通知書が発行される。

また、審査官は、優先権証明書に基づいて移行声明における優先権の内容を審査する際、基礎出願の出願日、出願番号、出願国のうちの1つまたは2つの内容と不一致であれば、手続補正通知書を発行する。応答しない場合、優先権を主張していないものとみなされる通知書が発行される。

(c)   PCT出願を中国国内段階へ移行する時の出願人が国際段階での出願人と不一致である場合、且つ国際段階で当該優先権を主張する権利を有する旨の声明を提出しなければ、譲渡、贈与などの方式で行なった権利転移に関する証明書類(原本又は公証を受けたコピー)を提出すべきである。提出しない場合、或いは提出した書類が規定事項に合致しない場合、手続補正通知書を発行する。応答しなかったら、優先権を主張していないものとみなされる。

(d)   優先権主張の費用を規定された期間以内に納付しなかった、又は全額納付しなかった場合

 

(ii)優先権主張する権利の回復を請求できる場合は以下の通りである(審査指南第3部分第1章5.2.5)。

  • 出願人が国際段階で基礎出願の出願番号を明記しておらず、中国国内段階に移行する際の移行声明にも基礎出願の出願番号を明記しなかった場合。
  • 優先権主張声明は規定事項に合致しているが、指定期間以内に優先権証明書、又は優先権譲渡証書を提出しなかった場合。
  • 優先権主張声明において、基礎出願の出願日、出願番号、出願国のうちの1つまたは2つが優先権証明書の記載と一致しなかった場合。
  • 優先権主張声明は規定事項に合致しているが、指定期間内に優先権主張の費用を納付しなかった、又は納付不足の場合。

 

(iii)優先権主張する権利を回復できない場合

上述(2)(ii)の場合を除き、優先権主張する権利の回復はできない。

 

(iv)優先権主張する権利の回復請求手続

上述(1)(iv)のパリ条約に基づく優先権主張の場合と同様である。

 

【留意事項】

2008年専利法第三次改正に伴う実施細則の改正によって、優先権を主張するための事務的記載に対する要求が緩和され、例えば、願書に基礎出願の出願日、出願番号、出願国に関する記載は、少なくとも1つが正しく記載してあれば、他の部分の記載ミスは後で補正できるようになった(実施細則第31条第2項)。

 また、提出すべき書類(例えば優先権証明書)、納付すべき費用(例えば優先権主張費用)、補正指令への応答が指定期間内に行われなかったこと等によって「優先権を主張していないものとみなされる旨の通知書」が発行された場合、優先権主張する権利を回復できるかが実務上非常に重要になるが、上述の通り、「優先権を主張していないものとみなされる旨の通知書」を受け取った日より2ヵ月以内であれば権利回復の請求ができる。

 権利回復を請求する場合、権利回復請求書を提出し、且つ、「理由」を説明しなければならないが、実務上、「代理人の外国出張により指定期間内に手続きができなかった」という理由でも通用するようである。しかし、この「理由」に関する運用については不明な部分もあるため、可能な限り、指定期間内に手続きを行うのが望ましい。

■ソース
・中国専利法
・中国専利法実施細則
・中国専利審査指南
  第1部分第1章 発明専利出願の方式審査
  第3部分第1章 国内段階に移行された国際出願の方式審査と事務処理
・専利出願費用基準
http://www.sipo.gov.cn/zlsqzn/sqq/zlfy/200905/t20090515_460473.html
■本文書の作成者
北京林達劉知識産権代理事務所
■協力
三協国際特許事務所 中国専利代理人 梁熙艶
特許庁総務部企画調査課 山中隆幸
一般財団法人比較法研究センター
■本文書の作成時期

2012.10.24

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