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ASEAN特許審査協力(ASPEC)プログラム
2022年07月26日
■概要
(本記事は、2024/10/29に更新しています。)URL:https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/40118/
2009年6月15日に開始したASEAN特許審査協力(ASPEC)プログラムは、ASEAN加盟国の特許庁間で特許調査および審査の結果を共有することによって業務の効率化を図る制度であり、本プログラムの参加国は、ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイおよびベトナムの9か国である。
■詳細及び留意点
(1)ASPECプログラムの概要
ASEAN特許審査協力(ASEAN Patent Examination Cooperation;以下、「ASPEC」という。)プログラムは、ASEAN加盟国の特許庁間で特許調査および審査の結果を共有する制度であり、2009年6月15日に開始された。このプログラムの目的は、プログラム参加庁間で特許調査および審査の結果を共有することによって重複した業務の削減、特許調査および審査時間の短縮、特許審査の質の向上を図ることである。本稿作成時点(2022年3月)における本プログラムの参加国は、ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイおよびベトナムの9か国である。
特許調査および審査の結果を受領したASEAN加盟国の特許庁は、参考資料としてこれらの資料を考慮することができる。ただし、これらの結果を受け入れる義務があるわけではなく、その国の法律に従い、特許を付与するかどうかを決定する。
(2)ASPECプログラム申請の要件
ASPEC申請書が提出されたASEAN加盟国の特許庁(第2特許庁“second IP Office”)に行われた特許出願が、他のASEAN加盟国の特許庁(第1特許庁“first IP Office”)に行われた特許出願と「対応する特許出願」である必要がある。
第2特許庁における特許出願は、以下の場合に第1特許庁における特許出願と「対応する特許出願」とされる。すなわち、第1特許庁における特許出願がパリ条約の優先権により第2特許庁の特許出願とリンクする場合もしくはその逆の場合、第1特許庁および第2特許庁における両特許出願が他のパリ条約加盟国もしくは世界貿易機関に対して同一の優先権を有する場合、または第1特許庁および第2特許庁における両特許出願が同一のPCT出願の国内移行段階である場合に「対応する特許出願」であるとされる。
(3)手続
ASPECプログラムを申請するためには、第2特許庁に対してASPEC申請書を提出する必要がある。なお、ASPEC申請書は、第1特許庁に対して提出することは要求されない。
ASPEC申請書には、次の2つの書類を添付しなければならない。1つ目の書類は、第1特許庁に対する出願についての見解書または審査レポートのコピー(以下、「最小限資料」という。)である。2つ目の書類は、添付された最小限資料で言及されている特許請求の範囲のコピーであって、第1特許庁によって特許許可の判断がなされた少なくとも1つの請求項を含む特許請求の範囲のコピーである。出願人は、請求項の対応表を任意で添付することができる。また出願人は、第1特許庁の見解書が複数ある場合、見解書を複数添付することができる。
出願人は、ASPEC申請書において見解書を添付する場合、監視機関(aspec@ipos.gov.sg)とASPEC文書提出ガイドラインの4.1のリストに挙げられているそれぞれの担当者に対して、(i)第1特許庁における出願番号、(ii)第2特許庁および第2特許庁における出願番号、(iii)ASPECプログラムの申請日、(iv)見解書を添付する旨、(v)出願人の情報が記載されたEメールを送信しなければならない。
ASPEC申請にかかる上記書類の言語は、英語で作成する必要がある。このため、英語以外の言語で記載された最小限資料は、英語の翻訳文とともに添付しなければならない。ASPEC申請の手数料は、無料である。
(4)留意事項
2019年8月27日から、ASPEC Acceleration for Industry 4.0 Infrastructure and Manufacturing initiative (ASPEC-AIM)とPatent Cooperation Treaty ASPEC (PCT-ASPEC)という二つの制度が試験的に開始された。
ASPEC-AIMは、フィンテック、サイバーセキュリティ、ロボティクスなどの4次産業分野における特許出願に対してASPEC申請が行われた場合、当該特許出願が優先的に審査されて短期間でファーストオフィスアクションを受けることができる制度である。ASPEC-AIMを申請するためには、第1特許庁において所定の国際特許分類が示されている必要がある。またASPEC-AIMを申請する場合、ASPEC申請書において当該申請がASPEC-AIMのための申請であることを明記する必要がある。ASPEC-AIMは、2023年8月26日まで実施されることが予定されている。
PCT-ASEPCは、ASEANの国際調査機関(ISA)で発行された見解書や、国際予備審査機関(IPEA)で発行された国際予備審査報告をASPEC申請書に添付可能とする制度である。PCT-ASEPCを申請する場合、ASPEC申請書において当該申請がPCT-ASEPCのための申請であることを明記する必要がある。また出願人がPCT-ASEPCを申請する際に監視機関と担当者に送信する上述したEメールには、上記(iv)を記載する必要はなく、また上記(i)に代えてPCT出願の出願番号を記載する必要がある。なお、第2特許庁がASEANの国際調査機関や国際予備審査機関の場合でも、PCT-ASPECを申請することができる。また、ASPEC-AIMとPCT-ASPECは第2特許庁において同時に申請することができる。PCT-ASPECは、2022年8月26日まで実施されることが予定されている。
■ソース
・ASPEC文書提出ガイドライン(2022年6月リリース)https://www.aseanip.org/Services/ASEAN-Patent-Examination-Co-operation-ASPEC/What-is-ASPEC
・ジェトロ・バンコク事務所「ASPECに関する新たな取り組みについて」
https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Ipnews/asia/2019/sg/20190904_02.pdf
・特許行政年次報告書2019年度版297頁
https://www.jpo.go.jp/resources/report/nenji/2019/ebook/pageindices/index296.html#page=297
■本文書の作成者
日本国際知的財産保護協会■本文書の作成時期
2022.03.10