アジア / 出願実務
マレーシア商標出願における指定商品・役務の記載に関する留意事項
2022年07月14日
■概要
マレーシアにおける商標登録出願に際し、指定商品・指定役務はニース協定に基づく国際分類一覧等に従って記載する。マレーシアでは、2019年の法改正により、1出願において多区分の指定が可能となった。クラスヘディング(類見出し)による指定は、現在(2022年1月調べ)は認められていない。本稿では、1976年商標法については「旧法」とし、2019年商標法については「現行法」と記載し解説する。■詳細及び留意点
(1)指定商品・指定役務について
マレーシアにおいて商標登録出願を行う際、指定商品・指定役務は、商品・サービスの国際分類に関するニース協定に基づく分類一覧等に従う必要がある。
マレーシアにおいても、登録商標の権利範囲は指定商品・指定役務によって特定されるため、指定商品・指定役務の特定は非常に重要である。
また、商標の識別性の有無の判断も、指定商品・指定役務との関係で行われることから、指定商品・指定役務の特定の重要性は高い。
指定商品・役務の特定が曖昧であれば、出願した商標の登録可能性が正確に審査されず、広範すぎると同一または類似商標の存在を指摘される可能性も高まる。
(2)1出願多区分制
旧法下では、区分ごとに出願しなければならない1出願1区分制であったが、2019年の改正により現行法では、1出願で多区分にわたる商品・役務を指定することができる1出願多区分制が導入された(マレーシア商標法第18条)。多区分出願は、ニース協定等に基づく商品・役務の分類から2以上の商品・役務の類に関して行うことができる。そして、各類については、1区分出願と同様に、商品・役務の指定が当該類に適当であり、かつ、商品・役務の性質がニース協定等に基づく商品・役務の分類に従い明確に表示される方法で記載される必要がある(マレーシア商標規則11)。
このように、多区分出願が認められるようになった結果、旧法下においては1商標で多区分を指定したい場合2個目以降の区分については別途の商標登録出願が必要となり登録も複数生じていたが、現行法の1出願多区分制の下では登録も1つとなる。
(3)クラスヘディング
マレーシアでは、指定商品・指定役務を広範囲にわたって指定している場合、登録官は、当該商標の使用状況または使用予定に照らして正当であると認められない限り、当該商標出願を拒絶することができる(マレーシア商標規則11(4))。
クラスヘディングによる商品・役務の指定は、ニース国際分類にあるクラスヘディングをそのまま商品・役務として記載するものであるから、この規定に抵触すると解釈される。このような指定があった場合、登録官は拒絶理由通知を発する。
登録官は、願書の記載がニース協定等に基づく商品および役務の分類に記載されている商品・役務に該当しないと判断した場合は、出願人に対し、あらかじめ承認されていない商品・役務として出願することを要請する(2022年1月マレーシア知的財産局(MyIPO)の登録官に確認)。
クラスヘディングによる指定は、第6類や第7類のような出願数が比較的少ない区分においては例外的に認められることがあったが、MyIPOの登録官によると現在(2022年1月調べ)は、ニース分類のクラスヘディングによる出願は認められていない。
(4)留意事項
出願人は、クラスヘディングによる指定のみならず、“equipment, machinery, peripheral, media, system, perfumery, kits, accessories and the like”のような文言による商品・役務の指定は、(1)で述べた事項を考慮して、その必要性について検討するのが望ましい。また、‘particularly’や‘including’といった文言も、不必要に広範すぎるとみなされることがしばしばあるため、同様に必要性を検討すべきである。
部品等は、その部品等が使用される製品の分類に区分されるが、部品に汎用性がある場合、別途該当する分類で登録され得る。例えば、自動車は第12類であるが、エンジン部品、窓、車内装飾、ラジオ、ワイヤー、ランプ、プラグ等は第12類以外に区分される。法改正により、1出願多区分制が採用されたため、部品等を製品本体と異なる区分に指定して出願することが可能となった。MyIPOの登録官によると旧法の1出願1区分制の下では、部品等については“;parts and fittings included in (区分番号) of the aforesaid goods”のように記載することが実務上行われていた。1出願多区分制を採用する現在でも、部品等についても製品本体と同じ区分で指定して出願することも可能である。
■ソース
・マレーシア商標法(2019年)https://www.jpo.go.jp/system/laws/gaikoku/document/mokuji/malaysia-shouhyou.pdf
・マレーシア商標規則(2019年)
https://www.jpo.go.jp/system/laws/gaikoku/document/mokuji/malaysia-shouhyou_kisoku.pdf
■本文書の作成者
日本国際知的財産保護協会■本文書の作成時期
2022.03.01