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韓国における特許出願の請求項の記載方式

2013年03月01日

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■概要
韓国は多項制を採択しているが、請求項の記載方式は日本のものと違う点があり、特に、マルチのマルチクレームの法的扱いが大きく異なるため、注意が必要である。
■詳細及び留意点

 請求項の記載方式については、韓国特許法施行令第5条(実用新案法施行令3条)及び補正書書式に定めがある。以下には、日本の出願人が韓国に出願するにおいて留意すべき事項について記載する。

 

(1) 特許請求の範囲の作成時、独立項と従属項を区分し、従属項には、独立項又はほかの従属項を限定したり付加して具体化することができる(韓国特許法施行令第5条第1項)。

 

(2) 請求項は発明の性質によって適正な数で記載しなければならない。即ち、一つの請求項にカテゴリーが異なる2以上の発明を記載したり、同一の請求項を重複して記載したりすることは規定に違反する(韓国特許法施行令第5条第2項)。

 

(3) 従属項を記載する時には、独立項または他の従属項の中から1または2以上の項を引用しなければならず、引用される項の番号を記載しなければならない(韓国特許法施行令第5条4項)。

 

(4) 2以上の項を引用する請求項は引用される項の番号を択一的に記載しなければならない(韓国特許法施行令第5条5項)。

 

法令違反となる書き方の例:

  • 請求項1、請求項2において・・・
  • 請求項1及び請求項2又は請求項3のいずれか1項において・・・

 

  法令違反とならない書き方の例:

 上記はいずれも択一的な形式によって記載されていないため違反となる。法令違反とならないためには、

  • 請求項1又は請求項2において・・・
  • 請求項1乃至請求項3のいずれか1項において・・・
  • 請求項1、請求項2又は請求項3において・・・

のように記載する必要がある。

 

(5) 2以上の項を引用する請求項で、その請求項に引用された項は、再び2以上の項を引用する方式を使用してはならない(韓国特許法施行令第5条6項前半部)。つまり、マルチのマルチクレームは認められていない。

 

法令違反となる書き方の例:

【請求項1】装置A。

【請求項2】請求項1において、・・・である装置A。

【請求項3】請求項2において、・・・である装置A。

【請求項4】請求項1又は請求項2において、・・・である装置A。

【請求項5】請求項3又は請求項4において、・・・である装置A。

 

 上記の書き方では、請求項5が違反である。請求項5は、請求項3又は請求項4を引用しているところ、請求項4が多重従属項であるため違反となる。

 

(6) 2以上の項を引用した請求項で、その請求項に引用された項が再び一つの項を引用した後、その一つの項が結果的に2以上の項を引用する方式も違反となる(韓国特許法施行令第5条6項後半部)。

 

法令違反となる書き方の例:

【請求項1】装置A。

【請求項2】請求項1において、・・・である装置A。

【請求項3】請求項1又は請求項2において、・・・である装置A。

【請求項4】請求項3において、・・・である装置A。

【請求項5】請求項1又は請求項4において、・・・である装置A。

 

 上記の場合、請求項5が違反である。請求項5は請求項1又は請求項4を引用しているところ、請求項4は一つの項(請求項3)を引用しているが、請求項3は二つの項(請求項1、請求項2)を引用している。したがって、請求項5は、請求項1と請求項4という2以上の項を引用しており、請求項5に引用された請求項4が再び請求項3を引用した後、請求項3が結果的に2以上の項を引用するため違反である。

 

(7)引用される請求項は引用する請求項より先に記載しなければならない(韓国特許法施行令第5条7項)。

 

(8)請求項を補正する場合、最初の出願明細書の請求項の番号を変更しない(特許法施行規則書式第9号)。即ち、削除したとしても、削除する請求項番号に「削除」という表示をして請求項の番号を残しておく。また、訂正する場合にも、「訂正」という表示をする。

 

(9)請求項を新設する場合は、請求項の最後の番号の次に新設する項をつくり、「新設」と表示する。

 

【留意事項】

(1) 上記説明の(8)と(9)を除き、違反した場合には、拒絶理由通知を受けることになる。特に、上記説明中の(5)と(6)による違反事例が最も多いため、留意する必要がある。

 

(2) 日本特許出願明細書を基礎として韓国に出願する場合には、請求項の記載方式に合っているかを点検する必要がある。出願時に違反事項を訂正できなかった場合には、審査請求時に必ず補正をすることが望ましい。

■ソース
・韓国特許法施行令
・韓国特許法施行規則
■本文書の作成者
崔達龍国際特許法律事務所
■協力
特許業務法人 深見特許事務所
特許庁総務部企画調査課 山中隆幸
一般財団法人比較法研究センター 菊本千秋
■本文書の作成時期

2012.11.28

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