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韓国における意匠登録出願の公開制度について
2013年02月22日
■概要
(本記事は、2018/10/25に更新しています。)URL:https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/16035/
意匠登録出願は設定登録後に公開されるが(意匠法第39条3項)、設定登録前でも出願人が公開申請をすれば、公開される(意匠法(韓国語「デザイン保護法」)第23条の2)。公開申請により公開されれば、自身の意匠登録出願と同一又は類似した意匠を業として実施した者に対して、警告をすることができ、追って意匠登録されれば、補償金の支払いを請求することができる(意匠法第23条の3)。しかし、公開されることによる不利益もあるので、不利益を考慮して申請するか否かを判断する必要がある。
■詳細及び留意点
韓国では、意匠登録出願は、出願人の申請により出願公開をすることができ、公開された出願意匠が侵害された場合、登録後に補償金を請求できる。以下に、意匠登録出願の公開制度について紹介する。
(1) 申請人
出願公開を申請することができる者は、出願人である。共同出願人の場合には、共有者全員が請求しなければならない。
(2) 公開申請対象となる出願
出願公開申請は、特許庁に係属中である出願に対してすることができ、複数意匠登録出願された意匠に対する公開申請は、その出願に含まれている全ての意匠に対して申請しなければならない(意匠法(韓国語(韓国語「디자인보호법(デザイン保護法)」)第23条の2第2項)。
(3) 公開申請できる時期
出願公開申請は、最初の意匠登録可否決定の謄本が送達される前までにする必要がある。送達後は、することはできない(意匠法第23条の2第3項)。
(4) 公開の方法
意匠登録出願の公開申請があった場合には、公開意匠公報(韓国語「디자인공보(デザイン公報)」に記載して公開する(意匠法第23条の2第2項)。
(5) 公開の効果
- 出願公開があった後には、意匠登録出願人は、公開された意匠登録出願と同一又は類似した意匠を業として実施した者に対して、書面をもって警告することができる(意匠法第23条の3第1項)。
- 意匠登録出願人は、公開された意匠登録出願と同一又は類似した意匠を業として実施した者に対して、警告を受けたり出願公開された意匠であることを知ったときから意匠権の設定登録時までの期間について、当該登録意匠又はこれと類似した意匠の実施に対して通常受けることができる金額に相当する補償金の支払いを請求することができる(意匠法第23条の3第2項)。
- 出願公開後、意匠設定登録前に出願人でない者が業として出願された意匠を実施していると認められる場合には、意匠登録出願人は、優先審査を申請することができる(意匠法第25条の4)。また、出願公開をすれば、拡大された先願の地位が確保され、同一又は類似した後願の登録を防ぐことができる(意匠法第5条第3項)。
(6) 出願公開申請の取下げ
出願公開申請を取り下げようとする場合は、公開申請書を提出した日から10日以内に取下書(韓国語「취하서」)を提出しなければならない(意匠法施行規則第6条の2第2項)。
【留意事項】
意匠登録出願人は公開申請をすれば公開され、公開された出願意匠が侵害された場合、登録後に補償金を請求できるが、出願公開によって意匠登録出願の存在を知った第三者に情報提供の機会を与え(公開しなくても第三者による情報提供は可能)、登録が困難になることもある。
また、意匠登録出願は、公開されない場合には、審査で拒絶査定(韓国語「거절결정(拒絶決定)」)を受けた場合、再出願をして登録可能となることもあるが、出願公開申請をして公開された後に拒絶査定を受けた場合は、再出願による登録が不可能となるので注意が必要である。即ち、公開せずに拒絶査定を受けた場合、その出願は初めからなかったものとされるため、再出願が可能である。(意匠法第16条)しかし、公開申請をし、公開された後に審査で拒絶査定を受けた場合は、公開による公知となるため登録を受けることができなくなる。
このように、公開申請に際しては、公開のメリット・デメリットをよく考慮して申請をするかしないかを判断する必要がある。
■ソース
韓国意匠法韓国意匠法施行規則
■本文書の作成者
崔達龍国際特許法律事務所■協力
一般財団法人比較法研究センター 菊本千秋特許庁総務部企画調査課 山中隆幸
■本文書の作成時期
2012.10.24