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ブラジルにおける商標制度のまとめ-実体編

2022年05月19日

  • 中南米
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■概要
 ブラジルの商標制度は、ブラジル産業財産法(2013年3月18日に改正された1996年5月14日法律9.279号)、ブラジル商標規則(1997年5月15日施行、法律第131号)によって規定されている。
 本稿では、ブラジルにおける商標制度の手続面について紹介する。なお、この記事では、日本国特許庁のウェブサイトに掲載されたブラジル産業財産法の記載に倣い、日本でいう「商標」を「標章」、日本でいう「標章」を「標識」と表記する。
■詳細及び留意点

1. 標章制度の特徴
 ブラジルの標章制度の特徴として、証明標章の保護制度が挙げられるため、以下に紹介する。
 産業財産法第123条第2項に規定されるように、証明標章とは、ある製品またはサービスが、品質、特性、使用した原料および方法等に関し、一定の技術的基準または規格と合致していることを証明するために使用される標章である。
 産業財産法第128条第3項に規定されるように、証明標章の登録出願は、証明の対象とする製品またはサービスに直接の商業的または工業的利害関係を有していない法人に限り行うことができる。また、産業財産法第148条に規定されるように、証明標章の登録出願には、証明の対象とする製品またはサービスの特徴、および標章登録者が採用する管理措置を記載しなければならない。
 産業財産法第149条および第150条に規定されるように、証明標章の使用はライセンスを必要とせず、使用規約中に記載されている使用許可をもって足りる。使用規約の変更については、すべての変更条件を記載した適切な申請書を作成してブラジル産業財産庁に届け出なければならず、届け出がない場合はその変更は考慮されない。
 産業財産法第151条に規定されるように、証明標章の登録は、使用規約に規定したものとは異なる条件の下で標章が使用された場合には消滅する。また、産業財産法第154条に規定されるように、過去に使用され、かつ、その登録が消滅した証明標章は、その登録の消滅から5年が経過するまでは、第三者の名義で登録を受けることができない。
 なお、ブラジル産業財産庁のブランドマニュアルの2.2に記載されるように、認証マークを取得することは、製品またはサービスの品質を保証しなければならないサプライヤーの責任を免除するものではない。

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2. 登録できる標章
 産業財産法第122条に規定されるように、視覚的に認識することができる標識であって、識別性を有するものは、法的に禁止されていない限り、標章登録を受けることができる。例えば、ブラジル産業財産庁のブランドマニュアルの2.3に記載されているように、1または複数のローマ字や数字等で構成される文字標章、図面、画像、記号などで構成されるデザイン標章、文字標章とデザイン標章との混合標章、三次元的形状で構成される立体標章などが登録可能である。
 また、登録可能な標章の種類としては、産業財産法第123条第1項に規定されるように、ある製品またはサービスを、出所は異なるが、同一、類似または同種である別の製品またはサービスから識別するために使用される標章である製品標章またはサービスマークがある。加えて、産業財産法第123条第2項、第3項に規定されるように、前述した証明標章や、一定の団体の構成員によって提供される製品またはサービスを識別するために使用される標章である団体標章がある。

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3. 標章を登録するための要件
 産業財産法第124条には、標章として登録を受けることができない標識が列挙されている。本条で規定されている、標章として登録を受けることができない標識は、次の(I)~(XXIII)のいずれかに該当するものである。
(I)ブラジル、外国または国際的な盾、紋章、メダル、旗章、記章、公的な名声および記念碑、またはそれらの名称、図形もしくは模造。
(II)単独の文字、数字および日付。ただし、十分に識別的形状を具えているものを除く。
(III)語句、形象または図形その他の標識であって、道徳もしくは善良の風俗に反するか、または他人の名誉もしくは印象を害するか、または良心、信条、信仰の自由もしくは尊敬および崇拝に値する思想および感情を損なうもの。
(IV)公共の団体または機関の名称または頭字語(略語)であって、当該団体または機関それ自体によって登録申請がされていないもの。
(V)第三者に属する組織または企業の名称に係わる特徴的または識別的要素の複製または模造であって、その識別的標識との誤認または混同を生じさせるおそれがあるもの。
(VI)識別の対象とする製品またはサービスに関連する、一般的な、必然的な、共通の、通常の、もしくは単に説明的性格の標識、または製品もしくはサービスについて、その性質、原産国、重量、価格、品質および製品の生産もしくはサービス提供の時期に係わる特徴を示すために通常使用される標識。ただし、十分に識別的形状を具えているものを除く。
(VII)単に宣伝手段としてのみ用いられる標識または文言。
(VIII)色彩およびその名称。ただし、独特でかつ識別的方法により配置または結合されているものを除く。
(IX)地理的表示もしくは混同を生じさせるおそれがあるその模造、または地理的表示であると誤認させるおそれがある標識。
(X)標章の使用対象である製品またはサービスに関し、その原産地、出所、性質、品質または用途について、虚偽の表示となる標識。
(XI)何れかの種類または性質の基準を保証するために正規に使用される公の印章の複製または模造。
(XII)第154条の規定を損なうことなく、第三者が団体標章または証明標章として登録している標識の複製または模造。
(XIII)公のまたは公に認められた運動、芸術、文化、社会、政治、経済または技術に係る行事の名称、賞牌または表象、およびその模造であって、誤認を生じさせるおそれがあるもの。ただし、その行事を推進する管轄の機関または団体の許可を得ている場合を除く。
(XIV)連邦、州、連邦区、地方自治区、自治体または外国の権利書、債権、硬貨および紙幣の複製または模造。
(XV)第三者の個人名もしくはその署名、姓、父称の名および肖像。ただし、その所有者、相続人または承継人の同意を得ている場合を除く。
(XVI)著名な雅号または愛称、および個人または団体の芸術上の名称。ただし、その所有者、相続人または承継人の同意を得ている場合を除く。
(XVII)文学、芸術または科学の著作物、並びにその題名であって、著作権によって保護されており、かつ、混同または関連のおそれがあるもの。ただし、それに係わる著作者または権利所有者の承諾を得ている場合を除く。
(XVIII)識別対象とする製品またはサービスに関連する産業、科学または技術において使用されている技術用語。
(XIX)同一、類似または同種の製品またはサービスを識別もしくは証明するために第三者が登録している標章の全部または一部、更に付加があればそれを含めて複製もしくは模造したものであって、第三者の標章と混同または関連を生じさせるおそれがあるもの。
(XX)同一所有者が同一の製品またはサービスに関して有する二重標章。ただし、同じ種類の標章の場合は、識別することができる形状を具えているときを除く。
(XXI)製品もしくはその包装に係わる必然的な、共通のもしくは通常の形状、または、さらに、技術的効果の観点から不可欠な形状。
(XXII)第三者の名称で登録された意匠によって保護されている対象。
(XXIII)出願人が事業活動上当然に知っている筈の標章であり、かつ、ブラジル国内またはブラジルが条約を締結しているかもしくは相互主義の待遇を保証している国に本拠または住所を有する者の所有に係わるものの全部または一部を模造しまたは複製した標識。ただし、その標章が、前記第三者の標章との間で混同または関連を生じさせるおそれがある同一、類似または同種の製品またはサービスを識別するためのものに限る。

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4. 標章権の存続期間
 産業財産法第133条に規定されるように、標章登録は、登録の付与日から10年の期間効力を有するものとし、連続する同一の期間ずつ(10年単位で続けて)更新することができる。更新申請は、登録存続期間の最終年度中に、手数料の納付証明書を添付して行わなければならない。登録存続期間が満了するまでに更新申請をしなかった場合、標章所有者は、追加手数料を納付して、その後の6月内に当該申請をすることができる。

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■ソース
・ブラジル産業財産法(2013年3月18日に改正された1996年5月14日法律9.279号)
https://www.jpo.go.jp/system/laws/gaikoku/document/mokuji/brazil-sanzai.pdf(和訳)
http://www.planalto.gov.br/ccivil_03/leis/l9279.htm(原文)

・ブラジル商標規則(1997年5月15日施行、法律第131号)
https://www.jpo.go.jp/system/laws/gaikoku/brazil/trademark/chap1.html#law18(和訳)

・ブラジル産業財産庁のブランドマニュアル
http://manualdemarcas.inpi.gov.br/
■本文書の作成者
Dannemann SIEMSEN
■協力
日本国際知的財産保護協会
■本文書の作成時期
2022.01.06
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