アジア / 出願実務
中国における意匠の分割出願
2013年01月29日
■概要
(2022年10月4日訂正:本記事のソース「費用について」のURLが、リンク切れとなっていたため、修正いたしました。)
中国では、意匠出願が下記の分割できる時期にあれば、出願人は、自発的に又は拒絶理由通知に応答する際に、出願された意匠について分割出願を行うことができる。ただし、分割出願は親出願の図面に表された範囲を超えてはならない。
■詳細及び留意点
(1)分割出願(中国語「分案申请」)できる時期(実施細則第42条、審査指南第1章第1部分5.1.1、第1部分第3章9.4.1)
(i) 係属中の出願については、出願人は、いつでも分割出願を行うことができる。
(ii) 意匠権を付与する旨の通知の受領日から2ヵ月(登録手続き期間)以内であれば分割出願を行うことができる。ただし、上記登録手続き期間が満了した後、拒絶査定が確定された後、取り下げされた後(みなし取り下げの場合を含む)等には、分割出願をすることができない。
(iii) 拒絶査定を受けた出願については、不服審判請求の有無を問わず、拒絶査定の通知書を受領してから3ヶ月以内に分割出願を行うことができる。また、不服審判の係属中及び不服審判の審決に対する審決取消訴訟係属中においても、分割出願を行うことができる。
(2)分割出願は親出願(第1次に提出した出願)に基づき提出しなければならない(実施細則43条、審査指南第1部分第1章5.1.1、第1部分第3章9.4.1)。
(i) 分割出願の種類(特許/実用新案/意匠)は、親出願の種類と一致しなければならない。
(ii) 分割出願は親出願の優先権が享有できる。
(iii) 分割出願の出願人は親出願の出願人と一致しなければならない(同一でない場合は、出願人変更に関する証明資料を提出しなければならない)。
(iv) 分割出願人の発明者は親出願人の発明者の全員またはその中の一部でなければならない。
(v) 分割出願が認められた場合、分割出願の出願日は実際の提出日ではなく、親出願の出願日が援用される。
(3)意匠の分割出願において要求されるその他の事項(審査指南第1部分第3章9.4.2)
(i) 親出願に2以上の意匠が含まれる場合、そのうちの1または2以上の意匠について分割が可能であるが、親出願に表された事項の範囲を超えてはならない。
(ii) 親出願が物品の全体意匠である場合、その一部のみを分割出願することは認められない。例えば、二輪車に係る意匠出願で、部品の図面を提出していない場合、この二輪車の部品を分割出願することはできない。
ただし、親出願が物品の全体意匠に関するものであり、物品の全体図だけでなく、一部の部品そのものの図面も記載されていたような場合、その部品の意匠について分割出願することができる。また、親出願が部品の意匠に関するものであり、部品を示す図面だけでなく、更にその部品を用いた物品の全体図も記載されていた場合、その物品の全体意匠について分割出願することも可能である(いずれも、参考図として示されていた場合を含む)。いずれの場合も、親出願日に提出した図面に分割出願に係る意匠が明瞭に示されていることが要求される。具体的には、分割出願に係る意匠の創作の要点が6面に及ぶ場合には6面図の記載は必要であるが、分割出願に係る意匠の創作の要点がいくつかの面のみにある場合、かかる面の正投影図と少なくとも1枚の斜視図があればよく、同じ面や対称の面があれば、図面を省略することも可能である。
(iii) 親出願に2以上の意匠がある場合、組物意匠の要件を満たしていても、そのうちの1または複数について分割出願をすることができる。
(iv) 類似意匠群についての多意匠一出願に対し、審査官に非類似と指摘された場合、非類似と指摘された意匠について分割出願を行うことができる。
(4)分割出願に必要な書類(審査指南第1部分第1章5.1.1、第1部分第3章9.4.1)
- 分割出願の願書、意匠の図面又は写真、意匠の簡単な説明書など
- 親出願の出願書類の謄本
- 親出願における本分割出願と関連する他の書類の謄本
- 親出願の国際公開が外国語の場合、親出願の国際公開公報(中国語「国际公开文本」)の謄本
(5)分割出願の費用
分割出願の費用は、通常の新規出願の料金と同様である。
【留意事項】
- 分割出願は、補正の一態様と理解され、補正可能な時期と同時期に分割可能とされている。
- 類似意匠群を一出願で可能とする場合を除き、一意匠一出願を出願の単一性の原則としており、分割は一出願中に2以上の意匠が含まれている場合にのみ可能とされる例外的措置であり、日本と同様に厳しく運用されるものと思われる。
- 将来の分割を予定する出願は控えるべきではあろうが、万が一、分割を必要とする場合に備えて、念のため、特に物品の部品レベルでも詳細な図面を準備することが必要であろう。また、分割は参考図からも許されるので、権利図面だけでなく、参考図も詳細に表わしておくことにも留意すべきである。
- また、出願すべきA意匠とB意匠の類否判断がつかない場合には、念のため、とりあえず類似意匠として多意匠一出願で出願し、その後、庁の指示があれば、分割出願を行うことで対応するのが得策かと思われる。
■ソース
・中国専利実施細則・中国専利審査指南 第1部分第1章 発明専利出願の方式審査
第3章 意匠専利出願の方式審査
・費用について
https://www.cnipa.gov.cn/module/download/down.jsp?i_ID=155983&colID=1518
■本文書の作成者
北京林達劉知識産権代理事務所■協力
三協国際特許事務所 川瀬幹夫特許庁総務部企画調査課 山中隆幸
一般財団法人比較法研究センター 不藤真麻
■本文書の作成時期
2012.11.08