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フィリピンにおける商標制度のまとめ-実体編
2022年04月28日
■概要
フィリピンの商標制度は、フィリピン知的財産法(2013年法律第10372号により改正された法律第8293号2013年3月4日施行2015年版)、フィリピン知的財産施行規則(特許・実用新案・意匠に関する施行規則2017年8月1日施行)、フィリピン商標規則(商標、サービスマーク、商号およびマーキングされた容器に関する規則2017年7月7日版)によって規定されている。本稿では、フィリピンにおける商標制度の特徴と実体面について、関連記事とともに紹介する。
■詳細及び留意点
1. 商標制度の特徴
フィリピンの商標制度の特徴として、商標権の維持に際して商標の実際の使用が要求される点が挙げられるため、以下に紹介する。
知的財産法第124条第2項、第145条、商標規則第204に規定されるように、すべての出願人または登録人は、商標の実際の使用の宣言(DAU)を、その旨の証拠を添えて、出願の提出日から3年以内、登録の第5周年日から1年以内、更新日から1年以内、各更新の第5周年日から1年以内の期間に提出しなければならない。このDAUを提出しない場合、出願は登録を拒絶され、登録商標は局長によって登録簿から抹消される。
なお、商標規則第205に規定されるように、出願の提出日から3年以内に提出することを要求されるDAUについては、出願人または登録人による請求時に、6月の延長期間を付与することができるが、当該請求が3年の期間の満了前になされ、かつ、所定の手数料が納付される場合に限る。商標の実際の使用は、延長された期間内に開始することができる。
また、商標規則第209に規定されるように、同一分類における一部の商品および/またはサービスの実際の使用は、商品およびサービスの分類全体についての使用を構成する。1の分類についての実際の使用は、関連分類についての使用とみなされる。商標規則第210に規定されるように、商標に使用されているラベル、フィリピンにおいて商品が販売されまたはサービスが提供されていることを明瞭に示すウェブサイトからダウンロードされたページ、実際に使用されているときの商標を付した商品または商品のマークが付与された容器およびサービスを提供される1または複数の事業所の写真などは、商標の実際の使用に係る証明として受理される。
また、商標規則第211に規定されるように、出願人または登録人は、認可されるときには、DAUの代わりに不使用に係る1または複数の理由および弁明を示す不使用の宣言(DNU)を提出することができる。DNUの提出は、出願人または登録人が、商品を市場に出すことまたはサービスを提供することに先立って別の政府機関によって課せられた要件のために商標を商業上使用することを禁止される場合、商標が異議申立または取消事件の対象となっている場合などに許可される。
関連記事:
「フィリピンにおける『商標の使用』と使用証拠」(2016.04.25)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/11057/
2. 登録できる商標
2-1. 登録できる商標
知的財産法第121条第1項に規定されるように、標章とは、企業の商品(商標)またはサ-ビス(サ-ビス・マ-ク)を識別することができる可視標識をいう。例えば、文字商標、図形商標、図形に文字が付された商標、3D商標、刻印または押印された商品の容器が商標登録され得る。
2-2. 登録できない商標
知的財産法第123条第1項において、登録を受けることができない標章として、以下の標章が規定されている。
(a)反道徳的、欺瞞的若しく中傷的な事柄;個人(存命中であるか故人となっているかを問わない)、団体、宗教もしくは国の象徴を傷付け、それらとの関連を誤認させるように示唆しもしくはそれらに侮辱もしくは汚名を与えるおそれがある事柄からなる標章
(b)フィリピン、フィリピンの政治上の分権地もしくは外国の国旗、紋章その他の記章またはそれらに類似したものからなる標章
(c)存命中の特定の個人の名称、肖像もしくは署名からなる標章(ただし、その者の承諾を得ている場合を除く)またはフィリピンの故大統領の名称、署名もしくは肖像からなる標章(ただし、未亡人がいる場合は、その存命中に限る。また、未亡人の書面による承諾を得ている場合を除く)
(d)他の権利者に帰属する登録された標章または先の出願日もしくは優先日を有する標章に同一であって、かつ、次の何れかに係る標章
(i)同一の商品またはサ-ビス
(ii)密接に関連する商品またはサ-ビス
(iii)欺瞞するかもしくは混同を生じさせるおそれがある程に類似している場合
(e)フィリピンにおいて登録されているか否かを問わず、フィリピンの権限のある当局により出願人以外の者の標章として国際的におよびフィリピンにおいて広く認識されていると認められた標章に同一であるかもしくは混同を生じさせる程に類似しているかまたはそのような標章の翻訳であり、かつ、同一または類似の商品またはサ-ビスに使用する標章。ただし、標章が広く認識されているか否かを決定するに当たっては、一般公衆の有する知識ではなく、関連する公衆の有する知識(当該標章の普及の結果として獲得されたフィリピンにおける知識を含む)を考慮する。
(f)(e)の規定に従って広く認識されていると認められ、かつ、登録が求められている商品またはサ-ビスと類似していない商品またはサ-ビスについてフィリピンにおいて登録されている標章に同一であるかもしくは混同を生じさせる程に類似しているかまたはそのような標章の翻訳である標章。ただし、当該類似していない商品またはサ-ビスについての当該標章の使用が、当該類似していない商品またはサ-ビスと当該登録された標章の権利者との間の関連性を示唆し、かつ、当該権利者の権利が当該使用により害されるおそれがある場合に限る。
(g)商品またはサ-ビスの特に性質、質、特性または原産地について公衆を誤認させるおそれがある標章
(h)指定する商品またはサ-ビスに特有の標識のみからなる標章
(i)日常の言語または誠実なかつ確立された商業上の慣行において商品またはサ-ビスを示すために通例または普通になっている標識または表示のみからなる標章
(j)商品またはサ-ビスの種類、質、量、意図されている目的、価格、原産地、商品の製造またはサ-ビスの提供の時期その他の特性を示すために商業上用いられる標識または表示のみからなる標章
(k)技術上の要因、商品自体の性質または商品の固有の価値に影響する要素により必要とされる形状からなる標章
(l)色のみからなる標章。ただし、形状により定義される場合はこの限りでない。
(m)公の秩序または善良の風俗に反する標章
なお、知的財産法第123条第2項に規定されるように、上記(j)、(k)、(l)に該当する標識または図案に関しては、フィリピンにおいて商業上使用された結果として登録を求める商品との関連において識別性を有するに至った場合、これを登録することを妨げない。
関連記事:
「フィリピンにおける商標の識別性に関する調査」(2021.09.02)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/20806/
「フィリピンにおける商標登録出願制度概要」(2019.07.25)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17571/
「フィリピンの商標等関連の法律、規則、審査基準等」(2019.04.09)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/16877/
「フィリピンにおける物品デザインの商標的保護とトレードドレス」(2018.08.07)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/15644/
「フィリピンにおける商標審査基準関連資料」(2016.02.09)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/10274/
3. 商標を登録するための要件
知的財産法第124条第1項に規定されるように、標章の登録出願は、フィリピン語または英語で記載しなければならず、かつ、商標の複製、ニ-ス分類の類に従って群にまとめられた登録を求める商品またはサ-ビスの名称およびその商品またはサ-ビスの各群が属するニ-ス分類の番号などを含まなければならない。
知的財産法第127条に規定されるように、出願が行われると、出願日を付与する要件として、出願に標章の登録を求めることの明示のまたはその趣旨の表示、出願人の特定、出願人または代表者がいる場合は代表者に連絡をするために十分な表示、登録を求める標章の複製、登録を求める商品またはサ-ビスの一覧表が記載されているか否かが審査される。この要件を満たし、かつ、所定の手数料が納付されている場合に、出願日が付与される。
出願日が付与されると、登録要件として、出願に係る標章が、知的財産法第123条に規定される上述した登録を受けることができない標章に該当しないか否かが審査される。
「フィリピンにおける商標登録出願制度概要」(2019.07.25)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17571/
「フィリピンの商標等関連の法律、規則、審査基準等」(2019.04.09)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/16877/
「フィリピンにおける商標審査基準関連資料」(2016.02.09)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/10274/
4. 商標権の存続期間
知的財産法第145条に規定されるように、登録証は、10年の間効力を有する。また、知的財産法第146条に規定されるように、登録証は、所定の手数料を付して願書を提出することにより、期間の満了の時に10年の期間について更新することができる。この更新のための願書は、登録され、もしくは更新された期間の満了前6月以内のいつでも提出することができ、または期間の満了後6月以内は所定の追加の手数料を納付することにより提出することができる。
関連記事:
「フィリピンにおける商標登録出願制度概要」(2019.07.25)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17571/
「フィリピンの商標等関連の法律、規則、審査基準等」(2019.04.09)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/16877/
「フィリピンにおける商標審査基準関連資料」(2016.02.09)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/10274/
■ソース
・フィリピン知的財産法(2013年法律第10372号により改正された法律第8293号2013年3月4日施行2015年版)https://www.jpo.go.jp/system/laws/gaikoku/document/mokuji/philippines-tizai.pdf(和訳)
https://drive.google.com/file/d/0B2or2OrWYpIfN3BnNVNILUFjUmM/view?ts=58057027(原文)
・フィリピン商標規則(商標、サービスマーク、商号およびマーキングされた容器に関する規則2017年7月7日版)
https://www.jpo.go.jp/system/laws/gaikoku/document/mokuji/philippines-shouhyou_kisoku.pdf(和訳)
https://drive.google.com/file/d/16NnR6JpLGXlKyokKXzWJraSlmt60P_54/view(原文)
・フィリピン知的財産庁「Trademark FAQs」
https://www.ipophil.gov.ph/help-and-support/trademark/
■本文書の作成者
HECHANOVA & CO. INC.■協力
日本国際知的財産保護協会■本文書の作成時期
2021.12.31