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ベトナム語または英語以外の言語を含む商標

2022年03月22日

  • アジア
  • 出願実務
  • 商標

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■概要
ベトナムでは、ベトナム語または英語以外の言語のみからなる商標は、周知性を証明しない限り登録が認められない。
■詳細及び留意点

(1)ベトナム語または英語以外の言語のみからなる商標
 ベトナムでは、広く使用されて標章として認められている標識を除き、通常使用されない言語の単語や文字は識別性を欠くと評価される(ベトナム知的財産法第74条(2)(a))。そして、ベトナム語および英語以外の言語は「通常使用されない言語」であると考えられるから、日本語で使われる文字(漢字、カタカタ、ひらがなのこと。以下同じ。)のみから構成される商標は、ベトナム国内において周知性があることを証明できない限り、登録が認められない。実際、現在のベトナム知的財産法が施行された2006年7月1日以降の出願において、日本語で使われる文字のみからなる商標登録事例は確認されていない。なお、現在のベトナム知的財産法では、通常使用されない言語の単語および文字はセカンダリーミーニングが認められない限り識別力を欠く旨が規定されているが、改正前はそのような規定は存在しておらず、同日より前の出願には、図1のような日本語で使われる文字のみからなる商標が登録されている。

図1:2006年7月1日より前の登録例

 現在の知的財産法施行前は図1のような商標の登録が認められていたものの、現在は前記のとおり、明文規定により日本語で使われる文字のみから構成される商標はベトナム国内における周知性を証明できない限り登録は認められないので注意を要する。
 もっとも、日本語で使われる文字にベトナム文字やアルファベットを併記した商標は、ベトナム文字やアルファベットの存在により商標全体として識別性を有すると判断されれば、登録は認められ得る(ただし、留意事項の欄に記載するように実際の権利範囲は狭いので、注意が必要である)。
 また、例えば、日本語で使われる文字のみで構成される商標であっても、その日本語で使われる文字をローマ字表記すれば、アルファベットで構成される商標になるので、識別性を有すると判断され得る。
 そのため、まずは、英語あるいはベトナム語で表記した商標の登録を行い、それに加えて日本語で使われる文字で構成される商標について周知性の立証が難しい場合には、アルファベット併記等を行ったものを登録するという対応が考えられる。
 2006年7月1日以降では登録例は見当たらないが、同日より前の出願において、日本語で使われる文字のみからなる商標登録とアルファベットによる商標登録が併存する事例には図2のようなものがある。

図2:2006年7月1日より前の日本語とアルファベット併存登録例

(2)周知性の判断
 周知性を判断するために斟酌される事情としては、次のようなものがある(ベトナム知的財産法第75条)。
・商標を知っている関係消費者の数(証拠資料の例:アンケート結果)
・商標を付した商品やサービスの流通の領域範囲(証拠資料の例:商品パンフレット)
・商標を付した商品やサービスの販売数量や販売金額(証拠資料の例:販売伝票、帳簿)
・商標の使用期間(証拠資料の例:商品パンフレット)
・商標に保護を付与し、また、周知と認めている国の数(証拠資料の例:認定をうけた判決の写し)
・商標を譲渡した場合の価値、ライセンス料(証拠資料の例:弁理士による鑑定書(見解書))

 ベトナムにおいて、科学技術省通達01/2007/TT-BKHCNを改正する通達16/2016/TT-BKHCN(以下「2016通達」)が2018年1月15日付けで発効した。科学技術省通達01/2007/TT-BKHCNは、ベトナムの知的財産法の施行に関する詳細を定める政府決議103/2006/NĐ-CPよりも下位の法規範文書に該当し、細則を定めている。科学技術省通達01/2007/TT-BKHCNは2010年、2011年、2013年と3回改正されており、2016通達は4回目の改正である。上記4回目の改正により、商標侵害事件の決定、または他人の商標登録出願に対する拒絶査定により、周知性の認められた商標(ベトナム知的財産法74.2(i))については、ベトナム国家知的財産庁の周知商標リストに記録するとともに、知的財産権の設定や保護に関する業務について参照することが明確に定められた(2016通達で改正された42.4)。

 また、周知性立証資料としては、以下の資料が例示されている(2016通達で改正された42.3)。
・商標の使用の範囲、規模、範囲および継続性に関する情報
・商標の起源、履歴、および継続的な使用期間の説明
・商標が著名商標として登録または認定されている国の数
・商標が付いている商品および役務の一覧表
・商標が流通している地域、商品または役務の売上高
・商標を付した商品および役務の生産量、消費量
・商標の資産価値、使用権または商標権譲渡の価格、および商標の投資価値
・国内および国際的な展示会への参加を含む、商標の広告およびマーケティングのための投資および経費の額
・侵害事件および紛争並びに裁判所または管轄当局の判決および決定
・商品や役務の購入、販売、使用、広告、マーケティングを通じて商標を知っている消費者の調査データ
・国内および国際機関、マスメディアにより行われる商標知名度のランキングや評価
・商標が獲得した賞や顕彰
・知的財産評価機関の評価結果

関連記事:
「ベトナムにおける商標規則の改正」(2020.04.21)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/18513/

「ベトナムにおける商標の識別性に関する調査」(2021.9.7)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/20828/

(3)実務手続
 出願商標にベトナム語または英語以外の言語を含む場合、願書には、それらの単語や文字に、音訳または英語による翻訳文を添付する必要がある(ベトナム知的財産法105条(2))。
 また、周知性を証明するために、(2)に記載したような周知性立証資料を添付して提出する。

(4)留意事項
 日本語で使われる文字の部分については原則として識別性が認められないことから、日本語で使われる文字のみからなる商標の登録可能性は低いといえる。また、ベトナム文字やアルファベットと日本語で使われる文字からなる商標も、日本語で使われる文字の部分については周知性が認められない限り識別性を欠くと評価されるため、他社が日本語で使われる文字の部分のみが同一でその他の部分が異なる商標を使用したとしても、原則として自社の商標の類似範囲に含まれないと評価される。このような現状を前提にすれば、ベトナムにおいては、日本語で使われる文字の部分には周知性が認められない限り、仮に登録が認められても保護は及ばないとの認識の下に、使用する商標や出願する商標を検討することが望ましい。

■ソース
ベトナム知的財産法
科学技術省通達01/2007/TT-BKHCNを改正する通達 16/2016/TT-BKHCN
https://wipolex-res.wipo.int/edocs/lexdocs/laws/en/vn/vn122en.pdf
■本文書の作成者
阿部・井窪・片山法律事務所
■協力
日本国際知的財産保護協会
■本文書の作成時期
2021.10.28
■関連キーワード
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